#43 北へ
俺とソラは王都で回復薬と食材、その他諸々の準備を進めていた。
フリルの着替えも買っておかないといけない。ミルクは着せ替え機能があるし、俺はスーツの変えが売ってないから、まぁいいか。
せめて上着だけでも買っておこう。丈の長いコートが売っているしな。
「パパ~! フリルの服、何で同じのばかり買うんですか? もっと色々欲しいです~!」
いや、すぐに破けるからワンピースでいいよ。セール中の赤ワンピースを大量に購入した事に腹を立てているフリルだが、今はそのワガママを聞いてやるほど余裕はない。
どうやらソラも準備が整った様子だ。
すると俺達の前に第二皇子ルーファスさんが姿を現した。ルーファスさんはいつもの落ち着いた雰囲気で、
「良かった。捜していたんですよ。」
「ルーファス皇子、捜していたとは?」
「はい、道化師と黒いローブの男の件ですが……どうやら北の大地を目指しているようです。」
ミルクは俺の肩の上から飛び立つとタブレットを取り出して調べ物を始める。
「北の大地、ですか?」
「はい。その北の大地【ラピスラズリ】に魔物の群れも確認されています。ラピスラズリは基本的に人が足を踏み入れるような場所ではないのですが……」
するとミルクが話に割り込んでくる。スク水の妖精は羽をパタつかせながらルーファスさんに、
「それはその先に、所謂魔界があるから、ですか?ルーファス皇子?」
ルーファスは少し驚いた表情で、
「確かに、あの地の先は魔界。魔族の住む国へと繋がっています。今は人魔不可侵協定により安全は保障されていますが……魔女が復活するとなれば話は別です。」
「魔女……? ルーファス皇子、魔女って?」
ルーファスさんは魔女について話してくれた。その内容は、不可侵協定が結ばれる前、魔界で暴走した魔女がこの国にまでその魔の手を伸ばした事件の事だ。魔女という存在、それは魔界、そしてこちら側、人間界とでも言っておこうか。その両方から忌み嫌われる存在だった。
それは元、人で魔に堕ちた者だからだ。
魔女は魔界、そして人間界の双方へ災厄を振り撒きながらその魔力を増幅させた。
そんな時、立ち上がったのが魔界の王ルシュガル=ザンダリオンと当時のグラン=カナン王国国王、オーバー=クロスレイだった。彼等の活躍で魔女は封印され世界に平和が訪れた。
そしてその後、ルシュガルの申し出で人魔不可侵協定が結ばれる事となった。
魔界の影響を受ける人間をこれ以上出さない為の賢明な判断だった。
しかし、その魔女が復活しようとしている。ソラの話でも、ルーファスさんの話を聞いても、どうやらその魔女とやらは存在するらしい。
それに北の大地、ラピスラズリの先に魔界があると聞いて動かないわけにはいかない。
「ミルク。」
「はいっ! 勿論です! ミアを助けに行きましょう! 何を企んでいるか知りませんがあの道化師やネロの好きにはさせませんよっ!」
「すまないな、いつも。」
「僕も着いて行きますよ? 正義の味方として、見過ごす訳にはいかないのでね。それに、フリルちゃんと一緒に旅もしてみたいですし。」
ソラはフリルに笑いかける。白い歯がキラリと光るとフリルはビクッと身体を震わせた。
「……あ、あの……」
「ハハッ、まだまだ人見知りさんみたいだね。」
「時間が解決するだろ。ソラ、悪いな付き合わせてさ。」
「いえ、ミアレアちゃんを拐われたままには出来ませんし、当然ですよ先輩!」
そんな俺達を見てルーファスさんは、
「話はまとまったようですね。シロさん、それに、ソラ、さん? ですか。王国第二皇子として正式に貴方達へ任命したい。
これより魔物の活性化の元凶であろう魔女の討伐、及びミアレアさんの救出をお願いしたい。
特に、ミアレアさんの救出を最優先で。」
「わかりました。元よりそのつもりでしたけど。でも、ミアの救出を優先していいんですか?」
「状況にもよりますが……魔女は強力な力を持っているので、我々軍が到着出来るまではミアレアさんの救出に専念してほしいのです。」
「わかりました。まずは道化師とネロを追って北へ進むことにします。ルーファス皇子、軍の動員はお任せしますね。」
「勿論、すぐに追いかけます。ぼくも前線に出て闘うつもりですから。そうだ、ガラントも連れて行く事にしましょうか。馬鹿な弟ですけど、槍の腕は確かなんで。
それでは、お互い御武運を。生きて帰ったら一度食事にでも招待させてください、白の勇者様。」
ルーファスさんはそう言って足早に城の方に去っていった。
「シロさまシロさま! 北の大地ラピスラズリへ向かうには山を越えないといけません! まずはアパタイト雪原を抜け、ターコイズ雪山を越えて、その先の地がラピスラズリです!」
「おっけい、それじゃ行こうか。ソラ、流石に自転車はキツいだろ。俺の軽バンに乗れよ。」
「車、便利ですね。大人ってやっぱ凄い! 僕も早く免許取りたいですよ! 先輩、よろしくお願いします! ミルクちゃんとフリルちゃんも!」
「はいっ! よろしくですっ! ラテもいるしミルクとしては大歓迎ですよ!」
ミルクがずっと隠れて頭のお団子しか見えてなかった妖精、ラテの横に飛んでいくと、ラテはピクンと小さな身体を震わせる。そしてプルプルっとしてはミルクに笑顔を見せた。
「が、頑張ろうね、お互い!」
「勿論です! シロさまがいれば安心ですよ!」
「ソ、ソラさまだって、凄いんだよ?」
「いいえ、シロさまです!」
「違うよ、ソラさまだよ!」
また始まった。
フリルはフリルで俺の服を掴んで離れてくれないし。ま、旅をする内に打ち解けるだろう。
こうして俺達は北を目指しヨロシク号を走らせる事となった。
ミア、必ず助けてやる。そして、俺が魔界へ帰してやるからな。
to be continued………………
次回、新章突入。
prayer【黒】
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…………
……
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