prayer【黒】

#1 固有システム、チート



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 prayer black  game start……◆








 ったく……このオレが異世界転移だと? それに、なんだこのちんちくりんなガイドは。


「おいちんちくりん、お前、ガイドなんだよな? なら、魔王の居場所を知ってるんだろうな? とっとと見つけ出して倒して、で、帰る。

 こんなくだらねぇゲームに参加している暇はないんだよオレは。」


「ち、ちんちくりんではありませんわ! チーノですのよ? ネロさま、魔王の居場所は魔王の城でしょうけど、その場所は今から探すのですわ?」


 ちっ、役に立たない妖精だ。乳だけ立派に育ちやがってからに。仕方ねーな。その魔王の城とやらをさっさと探すか。

 家のラジオで話したアルマとかいう女神にもらったチートスキルがあれば楽勝だろ。異世界と言えばチートだからな。だがそのチートスキルがどういったものかまでは決められなかったな。

 どれ、一つ試してみるか。


 ……


 これはコードを打ち直すことでデータを書き換えられるタイプか。つまりは何でも出来る。


「ネロさま? 使いこなせそうですの?」


 巨乳の褐色妖精がオレの顔を覗き込みやがる。オレはそれを指で跳ね言ってやる。


「オレを誰だと思ってやがる? あらゆるゲームを改造しつくすチートマスターだぜ? この程度の改造、なんてことねーな。

 まずは面倒なLVの概念をなくしちまうか。」


「痛いですの……うぅっ……」


 巨乳妖精が地面に落ちて動かなくなってしまった。なんだ、妖精ってのはこんなに打たれ弱いのかよ……はぁ、仕方ねーな。くそが……


 オレは泣いてうずくまる妖精チーノを拾い上げて切り株の上に放り投げた。チーノはオレを見上げて頬を赤らめている。オレはそれを無視してコードを打ち直す。メニュー画面にコード入力の欄が追加されていて、そこで改造が行えるようだ。


 ……


 よし、これでLV上げる必要は無くなった。で、ついでにスキルも全習得した。

 しかしつまらないスキルばかりだ。それにスキルを使うのにいちいちメニュー画面をタップするのも面倒極まりねーな。これも排除だ。


「……ネロさま?」


 このスキルと、このスキルを組み合わせて、攻撃しながら防御も出来るようにシールド効果を追加、迎撃はオートで……増やせる魔方陣は無限に。

 消費MP? ゼロだゼロ、無限に撃てるように。


「あの、ネロさま?」


 ダメージ無効化は……ちっ、これだけは無理みたいだな。神の奴め。まぁ、これだけやっときゃ死ぬ事はないか。


「ネロさま!」


「あぁ? うるせーな巨乳妖精。」


「ひっ……あ、あの、人が訪ねて来てますの……」


 人が? こんな森の中で?

 オレはメニューを閉じるとチーノが指差す方に目を向けた。そこに立ってやがるのは所謂道化だ。人と呼ぶべきか微妙なラインだな。


「なんだピエロ? オレに用か?」


『いえいえ、少しお尋ねしたいことガありましテ。貴方、今魔王を倒すと言っておられましたカ?』


「だな。魔王を倒して元いた場所に帰る。それがどうかしたかピエロ?」


『お言葉ですガ、貴方に魔王を倒す力なんテあるのでしょうかネ?』


 ピエロは首を大袈裟に傾げる。その時、乾いた鈴の音が森に響いた。


「間違いなく倒せる。」


『ほぅ、やはりあの魔女の言っていタ言葉は本当だったようですネ。異世界からの使者、稀に訪れては魔王を倒そうとする者。』


「何を訳のわからん事を言ってる。そろそろウザいぞ? ピエロが。」


『く、口の減らない方ですネ……わかりました、ならわたくしと手合わせ願いましょウ。もし、わたくしに勝てれば魔王の居場所をお教えいたしますヨ?』


「知ってるのか、なら話は早い。サクッと吐いてもらう事にするか。ちょうど試してみたかったしな! 死んでも恨むなよ、ピエロが!」


 ……




「さっすがネロさまですわ! 圧倒的な勝利ですのよ! さぁ、魔王の居場所を教えるのですわ!」


 チーノのやつが偉そうに地面を這うピエロに言っては羽をパタつかせてやがる。


「チーノ、お前は黙ってろ。」


「す、すみませんですの……」


 オレは地面に転がるピエロの頭を踏み付けてやる。抵抗出来ない程のダメージを負っているようだな。無様な奴だぜ。


「大口叩いてた割には大したことねーなピエロ。さっさと魔王の居場所を教えやがれ、でねーとこのまま頭を潰すぞ? あぁ?」


 やっぱ最高だ。ゲームで弱者を痛ぶるのは最高な気分だ。


『わ、わかりましタ……おおし、え、しましょウ……まずはその脚を……退けていただけたら嬉しいのですガ……?』


 オレは仕方なく脚を退けるとピエロの胸倉を掴み後ろの大木に押し付ける。するとピエロは右手を上げ森の奥を指差して言った。

 この先のキノコの生えた区画に魔王がいると。


「あぁ? キノコだとぉ?」


『ハイ、魔王は現在、愛娘と共にキノコ狩りをしているのでございまス~。こちら側へ出てくる事は稀でしテ、わたくしとしてもチャンスというかなんというカ。』


「ふん、お前……魔王に謀反でもするつもりだったのか? でも自分じゃ敵わねーからオレに頼みに来たってとこか?」


『まぁ、その通りでス~。お互い、利益があることですシ。』


「まぁいい。お前も付いて来いピエロ。居なかったら即、殺してやるからよ~?」


「ネロさま、超鬼畜でございます! で、でもそんなところが素敵ですわ~!」


「黙ってろ、妖精が!」


「あうっ、すみませんですの……チーノは……チーノはどんな罰でもお受けしますの。」


「やかましいな。黙って付いて来い。ガイド妖精だろーが。」


「はいですの!」


 全く、コイツはドMか。


 何はともあれ、オレ達は森の奥へ足を運ぶ事にした。その先にあるキノコ狩りスポットに魔王とその娘がお忍びで来ているようだからな。

 そんな呑気な魔王もいるものなんだな。ま、こっちとしては好都合だ、娘諸共ぶっ殺してこんなつまらないゲームを終わらせてやるよ。

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