帝国の逆襲編

プロローグ

ここから読み始めても大丈夫。これまでのあらすじ

 オレ、傭兵のユリアン。これまでのあらすじを紹介するっスよ!


 オレたちの傭兵団長クロムは『鋼鉄のヴェンツェル』。人体改造手術を受けて、鉄みたいな骨がバキバキに詰まった男装の女性っス。おまけにドケチで、鉄骨ゲンコツが痛いのなんの…。


 仲間は『孤狼』の二つ名を持ち、他人の心が聞こえるヨハンさんに、元盗賊頭のセバスチャン。戦えないけど皆の世話係のアンナ。最初はたった五人の小さな傭兵団だったのが、最後の戦いでは一万人が傭兵団長クロムヴェンツェルの下で戦ったんスよ!


 舞台はオレの祖国”ブレア国”と、野望の”玖留栖クルス帝国”、そしてブレアの隣国で帝国に対抗する”ヘルジェン王国”の三つが、複雑なことになってるんス。


 まず帝国が侵攻してきて、オレの祖国ブレアは属国にされたんス。その目的は帝国に敵対する強い隣国、ヘルジェン王国との戦いにブレア国民を使うため。ブレア国は望まぬ戦に駆り出されて何年も経っていて、傭兵が食いっぱぐれることはない時代っス。


 あの日、ついにヘルジェン王国に王都目前まで攻め込まれた弱小のブレア。ブレア国に雇われのヴェンツェル傭兵団は敗走中で、その途中、追われている王太子妃クリスティーナ様と遭遇したのが全ての始まりだったっスね。


 この運命の出会いをきっかけに、団長クロムはクリスティーナ様の夫、王太子フェルディナント殿下に雇われることになるんス。そこから快進撃が始まるんスよー!


 王都に迫るヘルジェン軍を追い返したのは、王太子と団長クロムの機転だったっス。それも直接戦うんじゃなくて、占領されたダルゲン市民の暴動を煽って市民の力で取り戻させたんスけど、ヘルジェン兵に扮した団長の演技には笑ったっスねー。


 そして休む間もなくヘルジェンとの決戦は、ジテ湿地の戦い。ヘルジェン国王アドルフは大型希少生物のアロ(でっかいトカゲみたいなやつっス)を兵器に使ってきたんスけど、ウチの団長クロムの方が一枚上手っスよ。さっきのダルゲン市長から巻き上げた(ほとんどカツアゲっス)油を使い、爆炎を駆使して見事撃退! さすがっスー!!


 それから今度はこっちからヘルジェンへと攻め入るんスけど、ここでも団長が結婚相手のコンスタンツェさんの財力で戦力を補強し、軍の中で成り上がっていくんス。

 そして強弓使いの『死神』フィストさんと組み、ますます勢いは止まらないオレたち。


 そこへ現れたのが、ジテ湿地の戦いで行方不明になっていた王太子、マンフリート殿下。フェルディナント殿下の双子の弟で、二人は対立してるんスけどね、そのマンフリート殿下の企みを団長クロムが阻止したんス。


 けど団長が言うには、二人は決して憎みあってるわけじゃなくて、目指すところは同じなのに選んだ道が違うだけなんだって。オレには難しくてよく分かんなかったっスけど。


 その結果、団長クロムはヘルジェン国王アドルフに捕らわれてしまったんス。アドルフはジテ湿地の戦いで団長クロムにやられて左腕を失っているから、ものすごく恨んでて、大ピンチ!


 間一髪のところで、オレたちが力を合わせて団長クロムを取り戻したんスよ! ヨハンさんが柄にもなく焦ってて、意外なところ見ちゃったッスね。

 そういや団長クロムが「アドルフのファンクラブに強制加入させられそうになった」って言うんスけど、何のことっスかね?


 そして次なる敵は、傭兵界最強の男『雷帝クヌード』。

 アドルフに雇われてるこの男、団長クロムの元カレを殺した絶対に許せない奴っス。


 クヌードの娘ジゼルさんの協力も得て、クヌードには何度も挑んだっス。けどやっばり強くて、クヌードへの復讐を誓うヘンドリクさんが瀕死の重傷を負い、ヨハンさんまでも傷を負わされるほど。団長クロムまでもがあわやというとき、助けに来たのはブレア国王になったフェルディナント陛下だったっス。


 ここだけの話、団長は国王のことが好きなんじゃないかって、みんな言ってるんス。オレもそう思うんスよ! 団長って意外と顔に出るから。


「ばかやろう、給金を満額もらうために戦ってるんだ」って団長クロムは言うんスけど、本当は国王の悲願『ブレア国単独でヘルジェン王国に勝ち、帝国の支配から脱却する』ためなんスよね。

 でも、国王(しかも既婚)と傭兵なんて…、何もかもが違いすぎるっスよ…。


 クヌード団を倒したオレたちの奮起で、ブレア軍、帝国軍、ヘルジェン軍は総力を投じた最終決戦へと向かうんスけど、邪魔をしてきたのがミロンド公爵っつー、とにかくヤな男っス。


 なんたってこいつ、戦いの最中に国王を背後から襲うつもりだったんスよ! その為に敵のヘルジェン王国とも密かに手を結んでいた卑劣な奴で! 交渉の段階でそれに気付いた団長クロムは取引を持ちかけ、帝国とヘルジェンを一網打尽にする秘策を編み出すんス! さっすが団長、冴えてる~!


 こうして臨んだ最終決戦、バルフ平原の戦い。帝国とヘルジェン王国が戦いを繰り広げる中、オレたち一万の傭兵は帝国を裏切り背後から一斉攻撃! ブレア国に雇われた傭兵が宗主の帝国を攻撃するんスから、捕まったらタダじゃ済まない危険すぎる行為っス。


 けど団長の戦略に揺らぎはなくて、カッコ良かったんスよー! オレたちだけじゃなく、団長とともに戦ってきたブレア兵士も、ジゼルさんも、フィストさんも、みなが自分の思いに正直に、選んだ道を突き進んだ戦いだったっス。


 帝国を壊滅に追い込んだ後は、いよいよヘルジェン国王アドルフとの対決ッス。これまでやられた分やり返さなきゃ! 団長とヨハンさんのタッグバトルは、今思い出しても胸がアツくなるっス。


 そして勝利は帝国のものではなくブレア国のものに。フェルディナント陛下は帝国を抜きに、即座にヘルジェンとの間に休戦協定を結んだんスよ。


 宗主の玖留栖クルス帝国を裏切り壊滅させ、ヘルジェン国王アドルフを倒した傭兵団長クロムヴェンツェル。その首に帝国とヘルジェンの両方から賞金をかけられたドケチな団長は、今や大陸一の傭兵って呼ばれてるっス。


 身柄引き渡しを求める帝国から身を隠すよう、フェルディナント陛下が取り計らってくれて、オレたちは北方のスフノザ砦で冬を二回越したんス。その間に団長クロムとの契約が満了したヨハンさんは離れていき、トーゴっていう自称ヨハンさんの弟がヴェンツェル団の仲間になったっス。


 団長クロムにとってヨハンさんは一番古い仲間で、オレたちから見ても二人の間には、他とは違う何かがあると思ってたんスけど、どうなんスかね。団長って、自分の気持ちはあんまり話してくれないから。


 バルフ平原の戦いから二年———。久しぶりに陛下からの書簡を持ったジゼルさんが訪ねてきたところから、物語は再スタートっス。ちなみに前半を読んで無いって人も、ここから始めて大丈夫っス。でも読んでくれたらもちろん嬉しいっス!


 さあ、オレたちの次なる旅が始まるっスよ!

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