スリ―ジャックス ジャック達とヴェルガの物語

@nakamichiko

第1話 序



人類の最も科学的な発見は


「地球にも命の終りがある」


ということである。もし何か突発的なことがなければ、やがてこの星は母なる太陽に飲み込まれ、それとともに消えゆく運命にある、数億年ののちに。 

もし人類がこれといった罪を犯さず、この星と共に命を過ごしたならば、最後の時に、めったに姿を現すことのない神が現われて、全てを救ってくれたかもしれない。しかしそれは多くの人には望めなかった。


地球歴DC二千年、人類は戦いと飢え、天災、一時の繁栄を繰り返し、その終りの頃二度の大きな大戦を経て、もっとも実りのある時代を迎えることとなる     

いわゆる


「協調と調和の一千年」である。


この千年の間に人類は民族間のあらゆる軋轢をほぐすことに勤め、真の平和と一人の命の尊さを考え、もし本人が強く望めば、どこの誰であろうとも最先端の教育が受けられるよう制度を整えた。そして世界中のありとあらゆる民族、地域の文化風習、奇習奇祭に至るまでを文書、映像化し、どこでも閲覧できるようになった。

これが協調である。


 調和とはこの星の「自然」とである                      


目に見えるかどうかの小さな小さな貝から過去の巨大生物まで、その生態を、その環境を、海を山を調べ、成果を後の者に引き継いだ。この一見普通の研究の積み重ねこそが、地球を離れた人類及び他の生命を生かすための、最大の武器となった。

 

なぜなら、太陽系を離れて数万年、いまだに他の知的生命体とは遭遇しておらず、微小な地球外生命はいないことはなかったが、その数は千にも満たなかった。期待していた一足飛びの科学の発展も、異星人との政治の折衝も要はなかったのである。


しかし、人類は孤独ではなかった。


           

              序 終


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