ーラミミラー

エリー.ファー

ーラミミラー

 神様は何もかも同じだと大きな違いの生まれない世界の差を認識できないのではないか、と感じて、いつの間にか二つに分断させたそうです。

 それは、昼と夜。

 裏と表。

 黒と白。

 海と陸。

 闇と光。

 そのような分かりやすい分断ばかりであればよかったのですが。

 何もかも、という訳にはいかなかったそうです。

 私の知るところではありませんし、そこに私の考えを介入させるというのもいかがなものかと思い口をつぐんでいました。

 なので、ここから先は、すべての物語が始まるほんの一瞬のひらめき、もしくは雷鳴なのだと思ってください。

 神様はいる、として。

 その神様が、物語好きだとして。

 その神様の作り出す世界が、ほんの少しでも私の知っている、そして貴方の住んでいる世界と関係があるとして。

 それらはいつも、神様の介入を受けていました。それは神様が作り出した自分のものに関して責任を持ち、それらがどのような影響力を持つ世界になるのか、ということを認識していた。もしくは認識しようとしていたということに他なりません。

 つまり。

 世界は常に、その一瞬一瞬を誰かの手にゆだねられていた、ということができるのです。

 恐ろしいのではなく、それは本来何かが誰かの所有物であるということから逃れることのできない、という不変の真理からなるものでした。

 神様は、いつも定義を作っていました。

 私の知るようなものではないですから、正直、なんとも言えないのですが、それでも、やはり神様は。

 私たちのことなど、無視をしてご自分の意思を一番に考えているそうです。

 そのせいか。

 間もなく、世界は分断されるそうです。

 片方の世界を鏡の中に入れて、そのまま外に出てこないようにするそうです。

 厄介な話ではありませんか。

 何故にそのようなことをするのか全く見当もつきません。戯れだったとしても、やはりもう少し配慮というものがなければ、神様であると付き従うこともできません。

 人間は、そして生き物は、それこそ微生物もしかり、自分たちにとっての神様を選ぶ権利くらいは皆が持っているのです。

 何をしようとも、何を訴えようとも。

 神様が神様である所以は、やはり、そこに信者がいるかどうか、というところに執着するものなのです。

 神を引きずり下ろす。

 そうして。

 神をそのまま分断する。

 一つは現実の世界に、もう一つは鏡の中の世界に。

 閉じ込めてしまえば、楽になれるというものでしょう。

 それが神様の力を封じ込めながら、神様をそのまま世界に存在させる唯一の方法。

 致し方ありません。

 そんなことを言っているから。

 結局、神様を分断し、鏡の中に閉じ込めても、完璧な封印とはいかず。

 いつの間にか、人が鏡を見る時には右と左が入れ替わってしまうようになりました。分断された世界の片方を、鏡の中に入れなければ、この鏡の中で起きている根源的な矛盾を解消することはできないそうです。

 あんまり、でしょう。

 あんまり、ではありませんか。

 神様を馬鹿にしたのではありません。ただ、神様としてそこに存在し続ける、という観点で言えば、この状態は全くの問題だらけであり、崇め奉ることは不可能というものです。

 その思いを行動によって表現したまでなのです。

 不思議なものです。

「半分を頂きに来た。」

「なりません。」

「では、こうしよう。」

「どういたしますか。」

「この世の生き物を半分にする。」

「しかし、その片方を鏡の中に入れられては困ります。」

「では、こうしよう。半分にしたうえで意志の疎通がしにくいようにして、どちらも鏡の外の世界に残すとしよう。」

 かくして、生き物は雄と雌が生まれ。

 人間は男と女。半分となった。

 お互いを理解し合うことはできないが、願えばどうにかなるかもしれない。

 神様はきっと、その瞬間に自分が必要になることを今日も期待して。

 鏡の中からこちらを覗いている。

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