第246話 破滅への扉は開かれた
「おらっ、怖くて黙りか。お坊ちゃん」
遠慮無く膝蹴りが俺の腹に叩き込まれてくる。
その顔に正義はなく、ただ弱者をいたぶる愉悦のみ。
刑事と言うより喝上げをするチンピラだな。
このまま死んだら俺は事故で処理される最悪の終わり。
俺が学んだこと、行動する前に一呼吸一熟慮。
ぐっ。
ジャンヌは大丈夫だろう。警察だって馬鹿じゃない、下手に手を出して外交問題にはしない。
一先ず俺が気にする必要は無い。
ぐはっ。
警察という法の後ろ盾を失えば、旋律士達は力を貸さないだろう。
所詮ビジネスパートナー。
時雨も犯罪者となれば律儀に契約を守らないだろう。
ご破算か。
げほっ。
あ~あ、高く積み上げた積み木の城が一瞬で崩された気分だ。
空しさが込み上げるが、僅かな開放感、破滅へ誘惑を感じてしまう。
所詮俺は心が壊れた男だなと、げぶっと鈍い痛みの衝撃が広がる膝蹴りを受けると同時に俺の膝蹴りを刑事の股間に叩き込む。
「うごっ」
一瞬で白目を剥いた刑事に追撃の掌底を顎にフック気味に放つ。
「あ~あ、やっちまったな」
崩れ落ちる刑事の頭を踏み付け漏れた言葉は、酷く他人事だった。
「おまっ」
反撃など夢にも見ない圧倒的強者に立っていた刑事は驚きで一瞬固まってしまう。
反応が遅い。実戦経験が甘い。
一歩踏み込み机を蹴り込み刑事の腹にぶち当てる。
「がはっ」
「寝てろ」
くの字に曲がって晒される刑事の後頭部に鉄槌を打ち下ろし、刑事の顔面を机にダイブさせてやる。
いい音が響き、刑事はうっぷしたままピクピクと痙攣している。
多少溜飲は下がった。
さあ、こっからは1秒が黄金に等しい。
俺は取調室から飛び出すのであった。
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