第193話 組織は怖い
事件の後始末に追われる忙しい日々。
違うか。
事件を追い続ける忙しい日々。
フォンが死亡し残党狩りをしている工藤達はもはや事件の後始末気分だろうが、俺は違う。俺は退魔官、魔を狩らねばどれほどの悪党を逮捕しようとも手柄にならない仕事をしたと見なされない。
俺の事件雨女事件は全く解決していない。
なんとしても雨女を上げねば黒星と成り俺の評価は駄々下がりになる。まあなんだ、雨女とは多少ではあるが共感出来る余地はあり、多少の友誼が出来てしまった。故に出世関連はまあ許容出来るとしてもだ。
掛かった費用は許容出来ない。
雨女を逮捕したわけではないので警察から成功報酬が支払われることもなく警察に必要経費として請求することも出来ない。酷い話だ。ただでさえ命を賭けているのに失敗は許されない悪の帝国並みのブラック、今まで退魔官が長続きしなかった訳が良く分かる。
俺も別の目的、まあ色ボケなので半分自業自得なのだが、それがなければとっととおさらばして学業に専念してエンジニアを目指す。エンジニアなら命を賭けることも無く安定した生活ができる。迷うまでも無いことなのに、合理に生きると目指した俺なのに、どうしても捨てられない。色に狂ったばかりに目下財政の立て直すため奮闘している日々である。
それで真面目にユガミや魔人退治に勤しむのかといえば違う。どんなに雑魚のユガミや魔人でも俺では歯が立たず、旋律者を雇わないわけにはいかず、その先立つものが無いという泥沼。
優しい時雨なら土下座して泣き落としをすれば同情して手伝ってくれるかも知れないが、俺だって惚れた女を前にしてプライドがある。合理に生きる俺だって捨てられない誇りがある。
獅子神以下他の旋律士とはビジネスでの付き合い。ビジネスという情などという下らない感情が入らない投資とリターンの世界。値引きくらいなら交渉してみるが、それ以上の不純なものは入らない入れたくない。
やはり世の中金であり金は命より重い。
こんな仕事だ。銀行に投資計画書を持っていったところで相手にされない。幹部クラスの何か弱みでも握る必要がある。ここで銀行幹部のストーカーでもするかといえば、しない。なぜなら今回に限っては一攫千金のお宝の当てがある。
いい年して夢みたいな事を妄想するなと言われそうだが、俺の目は覚めている。夢ではない現実的なお宝が、ある。あるんだよ。
それは捜査状況を工藤に聞いて判明したが、工藤達はフォンの配下の逮捕は出来ているが、フォンが自殺したこともありその資金の行方が分かってないらしい。フォンのことだ、いざという時のため絶対に秘密口座の一つや二つ持っている。それを警察より早く見つけ出し根こそぎ奪う予定である。いや言い方が悪いか、証拠品として永久押収する予定だ。
そんな1分1秒たりとも無駄に出来ない俺に呼び出しが掛かった。
断りたいところだが、ボスである五津府からの呼び出しとあっては無碍に出来ないし、朝出かけようとアパートのドアを開けたら如月さんがいた。目を疑ったがいた。別にラブコメ的要素はない。直属の上司である如月さん直々に迎え、いや直々にお迎えという連行しに来られてはどうしようもない。
しかし今更だが俺は警察内における五津府派閥にガッツリ属している事になっていんだな。成り行きで退魔官に成り仕事をこなしていく中で、一匹狼と格好付けていたわけじゃない。いずれ辞める気だった俺は派閥の力関係などに興味なかったというか、気にしたことが無かった。それがいけなかったのか、いつの間にか五津府諸共浮沈する一蓮托生みたいになっている。
組織は怖い。
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