初デートは
第2話 脅迫
「えっ」
立ち上がった少女は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしている。
「聞こえなかったのか? 命を助けてやったお礼に俺の彼女に成れと言った」
「えっえっでも、その、それは、ボク達であったばかりだし」
少女が何やら俺を傷つけないように断ろうとしているのが手に取るように分かる。
そりゃそうだろ、こう言っては何だが俺は出会って恋に落ちるようなイケメンじゃ無い。俺がもし彼女を欲するのなら大金か権力、はたまた巧みな話術、どれかを持っていなければ話しにならないことなど俺自身がよく分かっている。
よく分かっているからこそ俺は彼女を手に入れる為、嫌な奴になると決めたんだ。
「なら、代わりにこの小太刀を貰ってく」
俺の手にはもう既に共振が収まった小太刀が握られている。
「そっそれは困るよ。それが無いと旋律が奏でられなくなる」
先程と違い少女ははっきりと拒絶の色を見せた。彼女に成るより大事な物らしい。成り行きとはいえこれを手にできたのは大きなアドバンテージだ。
「なら、俺の彼女に成れ」
「そっそれは」
少女はそっと視線を俺から逸らす。そんなに嫌か。まあ彼女だってイケメンとの恋を夢見るような年頃、当たり前か。
ここで引くのが普通だが、俺はもう引かない、引きたくない。
かといってこのまま強引に押していてもいい結果が得られるとも思えない。最悪逆ギレされて力尽くで刀を奪い返され逃げられてしまう。
「なら妥協だ。一年」
「なにが一年?」
「まずは一年だけ俺と付き合え、その後はもう無理は言わない」
「いっ一年だけ」
「そうたった一年だけだ」
「約束だよ。一年だけだよ」
「契約成立だな。
俺の名は果無 迫(はてなし せり)」
「ボクは雪月 時雨(ゆきづき しぐれ)。
一年だけだけどこれからよろしくね」
彼女は一年に力を込めて言うのであった。
こうして俺は時雨と付き合うことになった。
こんな事して付き合った報いはきっと受けるだろう。
あのまま別れていれば、不可思議ないい思い出になれたとしても。
それでも、自分に後悔は無い。
今自分は彼女の隣に立っているのだから。
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