第27話「関係者に話を聞く」
本館の方へと戻り、一人ずつ話を聞くことに。
事情聴取は五人が待機していたのとは別の部屋で行うことになった。
最初はベティからだ。部屋に入ってきたベティーを見ると、目を赤くし、悲しみに打ちひしがれそうになっているのを何とかこらえてるように見えた。
「ベティーさん、大切な人を失って悲しいところ申し訳ないけれど、事件解決のため話を聞かせてもらうわね」
はじめに話かけたのはマリアだった。捜査員であるホーソンは静かに見守っている。とりあえず事情聴取は俺とマリアに一任するらしい。
「……はい、大丈夫です。私に答えられることだったら、何でも答えます」
ベティーはまっすぐとマリアの方を見て答える。
「わかったわ。じゃあまず、四時……パーカーさんが私たちと別れてから、七時過ぎ、私たちがパーカーさんを見つけるまでの間のことを教えてほしいわ。その三時間で他の人を見かけたりしたかしら」
ベティーは少し考えこんだ後、
「パーカーさんが離れに行ったあとはマリアさんたちと一時間くらい話をしましたよね?それで、その後は基本的にジョンソンさんと一緒でした。そしてほとんどキッチンにいたので、他の方は見てないですね。……あ、でも、ジョンソンさんが地下の倉庫に荷物を取りに行ったときは一人でした」
「どのくらい一人だったの?」
「えーっと……三十分くらいでしょうか」
レオの話と食い違いはない。
「あなたの目から見て、パーカーさんを恨んでいるような人はいたかしら」
婚約者を亡くしたばかりの相手に聞くにはすこしきつい内容だと思ったのだろう、マリアは少しい言いにくそうな表情をしている。
「私はパーカーさんの仕事の様子とかは知らないので、その辺の事情は分かりません。私が見ている普段のパーカーさんは優しくて、真面目な方だと思います。だから、誰かに恨まれるなんて考えられません」
まあ、短い時間接しただけだが、そんな印象は受ける。だが、いい人が恨まれないというわけでもない。
「そうね。私もそう思うわ。それじゃあ、今日ここに招かれた人とパーカーさんの関係性はあなたの目から見てどう?」
「……よかったと思います。じゃなかったら、わざわざ招待しないと思います。……少なくともパーカーさんは悪い印象を持っていないと思います。まあ、みなさんによく会っているわけじゃないので、詳しいことはわかりません」
それもそうだろう。ただまあ、招かれた人間がパーカーの事をどう思っていたかは別の話だ。
「そう……トウマから何かある?」
マリアが俺の方を見て聞いてくる。
「……そうだな……パーカーさんは、家の扉を物とかでふさいで開けっ放しにするようなことってありましたか?」
俺の質問の意図がよく分からなかったのだろう、ベティーはきょとんとした表情で俺の方を見る。
「離れの入り口の扉が開けっ放しになっていたんです。それで、パーカーさんはそう言ったことをするような人だったかどうか聞いてみただけです」
「いえ、そういうことはしなかったと思います。むしろ几帳面な性格で、こまめに電気を消したり、いすとかがずれていたらきれいに並べなおしたりする人です」
離れから出るときも、きちんと暖房器具のスイッチを切ってたし、離れの中の収集物も、所せましと並べられてはいたが、きちんと整理はされていた。
ベティー自身はそもそも離れに入ったこともないので、ベティーが扉を開けっ放しにしたわけでもないと否定した。
ホーソンの方を見たが、特に聞きたいこともないみたいで、とりあえずベティーの事情聴取は終了した。
次はグレッチェン。
「それじゃあ、四時から七時までの間の行動を教えてもらおうかしら」
ベティーには結構やさしい感じで話を聞いてたが、今はものすごく冷静な感じで話を聞いている。
「はあ……パーカーさんがダイニングルームを離れてから、僕もそんなに間を置かずにみなさんと別れましたね。で、一旦部屋に戻って横になりました。昨日まで結構遠くで仕事をしていまして、あまり寝てなかったので、ちょっとのはずが二時間近く寝てましたね。残りの一時間は館の中をぶらぶらしてました」
「その間に、誰かほかの人に会ったりしたかしら」
「いえ、会いませんでしたね。まあ、四時から六時までは部屋で一人でしたし、六時からも別に誰かに会いませんでしたし……あ、六時頃にジョンソンさんは見かけましたね。あのトイプードルも一緒でしたね。といっても見かけただけで、話とかはしてませんけど」
捜査員であるホーソンじゃなく、マリアが尋問をしているという状況に、グレッチェンは特に疑問を持つこともなく、普通に受け答えしている。
死体を発見した時は、少し動揺していたグレッチェンだったが、今は落ち着きを取り戻しているようだ。
「あなたはパーカーさんと知り合ってどのくらいだったかしら」
「そうですね……半年も経ってませんね。たぶん今回呼ばれた中だと僕が一番付き合いが浅いんじゃないですかね」
そういえば他の人と違ってマリアとも初対面だったっけ。
「あなたの目から見てでいいのだけれど、パーカーさんを殺害するような人に心当たりはある?」
「いや、心当たりなんてありませんよ。だっていい人ですし。だからあれじゃないんですかね、パーカーさんの収集物——特に書物はほんとに高価で珍しいものも割とあったみたいですし、それを狙った窃盗犯に殺害されたんじゃ」
まあ、それも考えられるだろうな。ただ、何が盗まれたのか、はたまた盗まれてないのかよくわかってはいないが。
「じゃあ、俺からも一つ聞いていいですか?離れの入り口が開きっぱなしだったけど、あれについて何か知ってる?」
「ああ、あれですか。いや、僕は知らないですね。少なくとも僕がしたんじゃありません。というか、犯人がしたんじゃないのかな?」
「たぶんね。ま、一応聞いてみたかったんで」
とりあえずここあたりで次の人に移ろう。
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