第14話「事情聴取イン魔王城 その5」

「さっきステューシーにも聞いたんだが、魔王が殺されそうな理由に心当たりとかないのか?」

「はあ……そう言われても……」

「何か最近変わった事とかないのか?」

 小説とかマンガだと、何げないエピソードに事件解決のヒントがあることが多々あるからな。

「変わった事……ああ、最近コーヒーはブラックで飲むようになりましたね。前はミルクとか砂糖とか入れて飲んでたんですけど、何も入れないで飲むようになりました――――私が」

「…いや、お前かい!魔王の周りで変わった事聞いたんだけど!」

 そしてとてもどうでもいい情報だ。

「魔王様の周りですか?うーん……あー……特にはないですね。強いて言うなら、魔王様の部屋の配置を変えたみたいですね。北枕を南に向くようにしたとか」

「どうでもいいな。つーか魔王が北枕とか気にすんなよ」



 続いてミラの事情聴取。

「最後に生きてる魔王を見たのはいつだ?」

「最後にですか。前の冒険者グループの終わった後に、魔王の間に入って、魔王様の剣をきれいにしに行った時ですかね」

「剣をきれいに」

「はい。バトルによっては、剣が血とか魔法とかで汚れることが意外と多いんで、それをきれいにしてますね。使わない時は、椅子に立てかけ掛けてあるんで、それを布とかできれいにしてますね」

「ほう。ってことは、そのきれいにした剣でそのまま魔王をぐさりと……」

「いや、違いますよ?なんか話の流れでそのまま自供させようとしてません?」

 レオポルドの雑な誘導尋問に、ミラは困った表情を浮かべる。

 事情聴取に飽きてきたのか、なんだか話の流れが雑になってる気がする。

「そう言えば、ステューシーはバトルに参加するスタッフとかの管理をしていて、ライは裏方のスタッフの管理をしてるっていってたが、ミラはこの魔王城でどんな仕事を?」

 と俺も質問する。

「僕は、ホントに雑務って感じですね。まあ、会計とかお金関係は僕の管轄ですね」

「魔王城のお金事情って、どんな感じなんだ?財政的に厳しいのか?」

「いえ、厳しいっていうわけではないですね。普通に従業員に給料を払えるくらいは余裕がありますよ」

「じゃあ魔王の周りで金銭的なトラブルは?」

 そんな俺の質問に、ミラは少し首を傾けながら、

「いや……たぶんないかと。お金に困ってるって言う話は聞いたことないですね」

「ところで、三人の給料はどういう感じなんだ?」

 別に事件には関係ないだろうが、単純に気になった事を聞いてみた。

「うーん……まあ、高い給料かどうかは分かりませんが、基本的にこの魔王城で暮らしているわけなんで、特に困ったことはない……ですね」

 ミラの言い方を見るに、もうちょっと給料を上げて欲しいという感じは伝わってきた。


「で、今回の事件についてだが、魔王が殺されるのに心当たりとかあるか?もしくは犯人の心当たり。もしくは君が魔王を殺した動機」

 脱線しかけた話をレオポルドが再びもとに戻す。

「えーっと……ってどうしても僕を犯人にしたいんですか⁉僕は犯人じゃないですからね⁉」

 ブンブンと腕を顔の前で振って否定する。そして、

「魔王様が殺されたことに対して心当たりはないです。でも、別に誰にでも好かれるような良い魔王様というわけでもなかったですし、何かのきっかけでカッとなった犯人が魔王様を刺したとしても、不思議ではないかもしれません」

 と、ミラは自分が疑われることを承知でそんな発言をした。

「人に恨まれるような言動をよくしてたのか?」

「うーんどうでしょう?あんまり他人と密接な関わり合いを持つタイプではないです。基本的には、自分の部屋にいるか、魔王の間でだるそうに椅子に座ってるかしているだけですからね。だから人の使い方とかで、少しむかつくことはあるかもしれません。それと、あんまり他人の気持ちとかを考えるタイプでもないので、たまにデリカシーのない発言とかもあったりはします。でも、殺すまでに行くかと言われれば、疑問ですけど」

 確かに、一つ一つは大したことなくても、ちりも積もれば、だ。案外その辺が動機のような気がしてきた。

「じゃあ、仕事とかで口うるさく言ってくることとかは?」

「いえ、特には…たまに口出ししますけど、結構丸投げな気がしますね」

「細かいことを注意されたりとかは?」

 さっきライが北枕を気にしてたとか言ってたから、細かい性格のイメージがついてしまっている。

「まあ、確かに、変な所を気にすることはありますけど、基本的には何が起こっても動じない、っていうイメージの方が強いですね。去年の冬の出来事なんですけど、冒険者たちがテンションがあがったのか、魔王城のなかでダイナマイトキャンプファイヤーをしたんですよ。そしたら、火が燃え移っちゃって、火事になったんですよ。それで結構火の回りが早くて、連絡が行く前に魔王の間にまで炎が来たんですけど、魔王様はだるそうに、椅子に座ったまま魔法で炎を消したんですよ。まあ、その辺はさすが高レベルなだけあるな、と。あと思ったのは、なんでダイナマイトキャップファイヤーなんてしたんだ、ってことですよね。やるなら夏だろって言いたいですよ」

「ツッコミどころそこ⁉夏でも冬でも屋内でやることじゃないだろ!つーかダイナマイトキャンプファイヤーってなんだよ!」

 

 こうして三人の事情聴取が終わった。

 ほんとにこんなんで事件が解決するんだろうか。


 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る