第12話「事情聴取イン魔王城 その3」
「事件に関することだろ?……あーそうだな……えーあなたは犯人ですか?」
俺に言われ、しぶしぶといった感じで捜査を再開するレオポルド。
「いや、質問下手か」
「んーだったら、ぶっちゃけ誰が怪しいと思う?」
ステューシーは即答するはずもなく、苦笑いを浮かべるだけだった。が、少し間をおいて、
「うーん……まあ、私だけでなく、ライもミラも十年近くここで働いていますからね。何かしらはあるかもしれませんね。魔王様も別に聖人君主じゃありませんし」
まあ、魔王だしな。
「じゃ、仕事上で何かトラブルが?」
「そんな大きなものは無いと思いますよ?別にお金に困っているなんてこともありませんし、それは他の二人も同じだったはずです。でも、魔王様は基本的にはものぐさというか、冒険者たちとのバトル以外の仕事はほとんどしない方なので……」
あまり死んだ魔王のことを悪く言いたくないのか、最後の方の言葉が小さくなった。
「仕事もせずにだらだらと?」
「だらだらかどうかは分かりませんが、一日のほとんどの時間をあの椅子に座って過ごしていますね。昼食もあそこに座って済ませますし、トイレも魔法で済ませてしまいますし」
と言って魔王の椅子の方を見る。冒険者たちが来るような日だと、バトルの時以外はずっと座っているんだとか。
ちなみにトイレを魔法で済ませるというのは、体内にある老廃物などを魔法で外に排出してしまう魔法らしい。これなら、ずっとトイレに行かなくても済むんだとか。そしてその魔法は意外と高度らしく、かなりの高レベルにならないと使えないんだとか。
いや、別に使いたいとは思わないけど。
「仕事だけじゃなく、プライベートとかでトラブルとかは?」
レオポルドの質問に少し悩みつつ、
「うーん……プライベートといっても、ほとんどこの魔王城から出ることはなかったので、外の方々との交流もほとんどありませんでしたね。魔王城で働いているものを含めても、私たち三人が一番魔王様に近かったでしょうね」
「他の魔王とかは?」
この世界にはいくつか魔王城があり、その城ごとに魔王が存在する。
「おそらく関わりはなかったかと。この大陸の代表魔王なので、世界会議の際には他の大陸の代表魔王との交流もあるでしょうけど、私たちはそこには行ってませんので、詳しいことは分かりませんね」
世界各国の王様や、有名な貴族、英雄や魔王たちが一同に集まる会議があるらしく、そこで現在起こっている問題や、これからの政治等について話し合う会議があるんだとか。
「んー……やっぱ犯人はあんたら三人の中にいるんじゃ?」
とレオポルド。まあ、今までの話を聞いてると、人づきあいもほとんどないみたいで、動機を持ってそうな人物がかなり限られてきそうだ。
「まあ、そう思われても仕方ないですね」
ステューシーは苦笑いでそれに答える。
「じゃあ、最近何か変わったこととかは?こう、人間関係でも何でもいいんだけど」
あんまり話が広がりそうになかったから、横から俺が口を出す。
「そうですね……最近は味付けの薄い料理を好むようになりましたね」
「いや、そういうことじゃねーよ。つーかそれ年取っただけだろ」
魔王の見た目は、四十代くらいの中年男性といったところだが、実年齢は百を超えるんだとか。魔族とか吸血鬼といった普通の人間でない種族は寿命が長かったりすることがある。
「いや、ホントに思いつかないですね。……ウッキー」
「今なんか付け足したか⁉急に猿っぽいキャラ付けするんじゃねー!」
「…い、いや、話すこともなくなってきたんで、なんか面白味をつけたそうかと…ウッキー」
「いや、もういいわ!」
確かに、これ以上有力な話も聞けそうになかったから、次の容疑者に移った方がよさそうだ。
そんなことを俺と同様に感じたのか、レオポルドは、
「じゃ、とりあえず話はこれくらいで、ライを呼んでくれるかウッキー?」
「お前も移ってんのか!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます