第11話「事情聴取イン魔王城 その2」

 マリアにそう言われ、当然のごとく三人の獣人たちは自分はやってないと言い始めた。

「あー分かってる分かってる。みんな最初はそう言うからな。はい、じゃあ話は本部の方で聞くから行こうかー」

 レオポルドは三人を外に連れていこうとする。

「こらこら、何もう事件が解決した雰囲気だしてんだよ。さすがにだめだろ。それに犯人がいても、これは単独犯だろ」

「やっぱり?いや、しょっ引けば誰か自供するかなーと思ったんだがな」

 冤罪とか起こしそうなやつの発言なんだが。

「とりあえず、一人一人話を聞くところからじゃないのか?あとは現場を調べたりとかだな」

 捜査員じゃないが、『名探偵』という職業になったわけだし、捜査に協力してやるか。……このままだと迷宮入りしそうだし。

「じゃ、俺たちは話を聞くことにするか。で、現場を調べるというのは具体的にどうするんだ?」

「まあ、死体の様子を調べることとかな。さっき死亡推定時刻って言ったが、他には死因とかを調べる必要があるだろうし、死体に何か犯人の痕跡がないか調べた方がいいだろ。あとは背中に刺さった凶器についてとか。あとはこの魔王の間で何かおかしなものがないか…とか、あの奥の部屋を含めた魔王城において不審な人物とかがいないか…とか調べたらいいと思うぞ」

 すっかり立場が逆転してしまったが、俺はレオポルドにそう指示をだす。

 レオポルドは部下たちに俺が言った通りのことを調べるように指示をだし、俺とマリアとともに、容疑者たちの事情聴取を行うことにした。



 まず初めに話を聞くのはステューシーからだ。

 他の二人は他の場所で待機してもらっている。

 話の口火を切ったのはレオポルドだった。

「えーそれでは話を聞きたいと思います。今日はどうされましたか?」

「どんな質問だよ。医者かよ」

 と俺。

「ああ、最近よく眠れないんですよね」

「いや、あんたも答えるんかい。そうじゃなくて、例えばあなたはいつからこの魔王城では働いているんです?」

「えーっと十年くらい前ですかね。たしかその時くらいに、この魔王城を大幅リニューアルするとかで、従業員もほとんど変わったときがありまして、その際に大規模な従業員採用がありまして……そこからずっとですね」

 魔王城の大幅リニューアルってなんだろう。

「で、魔王城ではどんな仕事を?」

 気にはなったがとりあえずスルーして次の質問に移る。

「色々ですよ。ライもミラも似たような感じですね。魔王城の清掃だってやりますし、料理も交代でしてますね」

「特に変わった仕事はしてないの?みんな同じような感じなの?」

「この魔王城では、バトルに参加する側と、魔王城を運営する側の二つに分かれてます。そして、私はバトルに参加するモンスターたちを取りまとめる役職についています。そういったモンスターたちの管理とかしてますけど、ほとんど名ばかりな気もしますね」

 ステューシーは横から口をはさんできたマリアに対しても丁寧に答える。


「それじゃあ、今日の流れを教えてもらえますか。死体発見までの流れを」

「ああ、はい。と言っても、事件が起こるまではいたって普通でしたけどね。朝起きて軽く朝食をとり、魔王城の見回りと簡単な清掃をしました。そして、今日やってくる冒険者たちの情報を見て、軽く会議をしました」

「それは魔王も含めて?」

「ええ、魔王様と私たち三人で。そして、冒険者の方々がいらっしゃったら、私たちは部屋に戻ってゆっくりしてましたね。基本的に冒険者の方々がいらっしゃるときは、やることがあまりないので」

「終わった後にまた片付けとかを?」

「ええ、そうですね。そして今日みたいに、冒険者のグループが二組以上あるときは、魔王様のバトルとバトルの間に、魔王の間に行って少し準備をします」

「さっき身の回りの世話とか言ってたやつ?」

「はい。私は主に清掃関係をしてます。バトルが行われるこの部屋には、見ての通り絨毯がしいてありまして、バトルの後は少し汚れたりするんです。それをきれいにしてますね。あとはあの垂れ幕を変えたりとか」

 そう言って魔王の座る椅子の後ろを指さすステューシー。

「あれって変えてるんだ」

「ええ。今は赤色ですが、前の冒険者のグループがバトルをしていたときは、紅色でした」

「同じじゃね?違い分かんねーだろ」

 実際二つの色は、年月が経ってるせいか、ほぼ同じ色にしか見えなかった。

「ふーん。それって何か意味があるのかしら」

 俺とマリアの言葉に対し、ステューシーは苦笑いしつつ、

「さあ……少しでもバトルの時の印象を変えたいというようなことをおっしゃっていましたね。日によっては何組もの冒険者と戦う時もあり、飽きてくるんだとか」

 垂れ幕の色が変わったところで大した違いはないだろうとは思ったが、まあいいや。


 ふとレオポルドを見ると、あくびをして今にも眠りそうな勢いだった。

「おい、一応この事件の捜査員として来たんだろ?」

「…ん?……ああ、そうだな。でも、こういうの話を聞くっていうのはなんだか眠くなって……」

「じゃあ、お前もなんか聞きたいこと聞けば?」

 俺は少し呆れつつもそう言った。

「そうだなあ……最近、《魔法戦隊ガンバルンジャー》を見てるんだが、悪の組織のトップは誰だと思う?すげー気になるんだよね」

「どんな質問だよ!つーかなんだ、《魔法戦隊ガンバルンジャー》って!」

「え?聞きたいことを聞けって……」

「そういう意味じゃねーよ!事件に関することを聞けっつーことだよ!」

 《魔法戦隊ガンバルンジャー》は、子どもとかに人気のヒーローが出てくる話らしく、本やマンガで読まれている。

 まあ、日本でいうヒーローものみたく、五人くらいの主人公たちが、世界征服をたくらむ悪の組織と戦う物語らしい。

「私は、主人公たちがよく行く骨董品屋の店主が黒幕だと思うのよねー」

 とマリア。

「ガンバルンジャーの話はいいわ!お前も話にのってくるんじゃねー!」

 っていうか骨董品店が行きつけって渋くね?

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