第3話「初ダンジョンは見慣れぬアイテムとともに」

 俺は今、街の外にある小さな森に来ていた。

 異世界らしいところ見たいということで、比較的危険の少ないダンジョンに来たのだ。辺りを見てみると、スライムとかかわいらしいウサギのようなモンスターがいるくらいで、俺の体より大きなモンスターは見られなかった。

「じゃ、試しにモンスターと戦ってみる?」

「うーん……でも俺別に魔法が使えるわけじゃないしな。異世界らしいもの見たいってだけで、別にバトルがしたいってわけじゃ」

「そうなの?『名探偵』スキルとか興味あったんだけど。……まあ、いいわ。じゃ私は試したいアイテムでも使うわね」

 そう言ってマリアはパンパンに膨らんだリュックサックを地面に置く。


 異世界に来て数日がたったが、なんとなくマリアのことも分かってきた。

 このマリア、とにかく見たことのないアイテムや、使ったことのない魔法をとにかく使いたがる。

 そもそも俺を呼び出した召喚魔法も、使ったことがないから唱えてみたって言う理由だったし。

 そんなわけで、屋敷のなかには珍しいアイテムや武器などが数多くある。中には、ダンジョンじゃなくても効果のあるアイテムもあるとかで、家の中の運気を上げてくれる人形があったのだが、夜中にトイレで起きた時、廊下をその人形たちが歩いているのを見た時には、腰が抜けてしまった。

 マリアは一人暮らしをしてるって言ってたが、たぶんマリアの持ってきたアイテムとかの被害をうけたせいで、この屋敷に使用人とかがいないような気がする。


「えっとまずはこの槍ね。これを使うと、炎の渦が出てくるらしいの」

 そう言って取り出したのは、マリアの背丈以上ある真っ赤な槍だった。

 っていうかどっから出したんだ?あの槍絶対リュックには入んないだろ。

 そんな俺の疑問をよそに、マリアは前からやって来る小さなモグラみたいなモンスターに槍の先を向ける。

「えいっ」

 という掛け声とともに魔力を込めると、槍の先から、ライターでつけたような火がポッ、とついた。

「小せえ!槍の大きさと全然比例してない!」

 そんな小さな炎でモンスターがやられるはずもなく、その小さなモグラは飛び掛かり、体当たりをかました―――――俺に。

「グオッ」

腹にクリーンヒットし、危うくちびりかける。

「な、なんで俺に攻撃してくるんだよ……」

 俺に体当たりをかましたモンスターは、マリアが唱えた炎の呪文によって倒された。―――初めからそうすればよかったのに。

「大丈夫?まあ、万が一何かあっても、生き返りの葉っぱがあるから安心してね」

 安心させるように笑顔で言ってくるが、全く安心できない。万が一があったら困るんだが。

 そんな俺の不満の表情を読み取ったのか、マリアは、

「そんなに心配なら、トウマも戦ってみたらいいじゃない。レベル1からでも使えるスキルだってあるんだから」

 と一言。まあ、せっかく異世界に来たわけだし、『名探偵』という職業だが、がんばってバトルでもしてみるか。


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