異世界はミステリーとともに
安茂里茂
「魔王が死んだ⁉」問題編
「プロローグ」
「ここが魔王城よ」
目の前のマリアは俺に向かって言った。
俺とマリアの目の前には、西洋の古城といった見た目の建物がそびえたっている。これが魔王城らしい。
まあ、一目見たら魔王城だってわかるな。だって入口にでかでかと『魔王城へようこそ!』という文字が書いてあるんだから。
「雰囲気もくそもないな」
俺はもう、呆れるしかなかった。いや、この世界に来てからのことを考えれば、なんとなく予想できたことではあるが。
「じゃあ行きましょうか」
白を基調とした、高貴な印象を受ける服に身を包み、腰には細長い剣を携えているマリアは、高貴な貴族令嬢とか美しき聖騎士とかを連想させる。
ただし、その雰囲気をぶち壊すくらい大きなリュックサックを背中にしょっているせいで、おてんば娘みたいになっている。
「行きましょうかって言ってもなあ……俺まだレベル5とかなんだけど」
「大丈夫って言ってるでしょ?ここの魔王城は、レベル20くらいの冒険者向けだけど、それより低レベル冒険者でも楽しめるようになってるから」
魔王城で楽しむってなんだよ、と思ったがマリアはさらに、
「それに、私がレベル30を超えてるんだから、トウマがバトルに参加しなくても大丈夫よ」
「バトルよりも、お前の使う魔法とかアイテムの方が心配なんだけどな」
そんな俺の言葉に構わず、マリアはスタスタと魔王城の入口に向かい、受付を済ます。
「予約していたマリアです」
「……えっ、あ、はいマ、マリアさんですね。……ル、ルキナ家のマリアさんですよね?」
受付にいた、角の生えたお姉さんが、マリアの持っている剣やペンダントに描かれてある家紋のようなイラストを見ながら、おそるおそるといった感じで言う。
「ええ、そうよ。ルキナ・ウィミナリス・マリア、レベル35の『魔法戦士』」
「は、はい……かしこまりました」
と、受付のお姉さんはカウンターにある紙に書き込む。
マリアの家は大きな貴族の家らしく、この世界でも結構大きな力を持ってる家らしい。
そしてマリアは、左腕につけている銀色のブレスレットを、受付にある木箱にかざす。これで、本人確認が終了する。
「で、では、あなたの情報も教えてくれますか?」
マリアの受付が終わり、お姉さんは俺の方を見る。
あんまり言いたくないんだけどな……しかし、魔王城に入るためにはこの確認が必要だから、しぶしぶ、ブレスレットを木箱にかざす。
「えーっと、スズキ・トウマさんですね。えーっと、職業は……『名探偵』?」
ほらね。やっぱりこういう反応になるよな。
というわけで、俺、鈴木当真は、異世界で名探偵をやってます。
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