第19話 不安

帰宅後、すぐに学校生活へと戻る。


約束通り、声優さんには直筆の手紙を、たまに出している。

お忙しいので、返事はいらないし、期待もしていない。


ただ、無事に届いてくれている事を祈る。


美雪さんもそうだが、ファンレターというよりも、

完全に、友達に宛てた感じの文面だ。


仕方がない。

どんな役をやっているのかは、殆ど知らない。

美雪さんから聞かされたが、「ああ、あの役か」程度の印象しかない。


まあ、役者さんも舞台を下りれば普通の人。

それで、いいと思っている。


美雪さんとは、相変わらずの関係。

手書きの手紙でやりとりをしている。


でも、よく周囲にばれないものだ。


「冬樹くん、いい」

「どうしたの?美雪さん」


教室で、声をかけられた。


「あのおふたりなんだけど・・・」

「バスツアーの時の声優さん?」

「うん」

「どうしたの?」


美雪さんが、真剣な顔で言う。


「もし、私に何かあったら、よろしくね」

「何を?」

「仲良くしてあげて」

「そうはいっても、所詮はファンとしての関係でしかないよ」

「それでいいから・・・ね」

頷くしかなかった・・・


「ありがとう。お願いね」

美雪さんは、僕の手を握る。


普通なら、ドキドキものなのだが、とても、不安になった。

何かあるのではと・・・


そして、その不安が、現実の物となる。

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