第17話 温かみ

「冬樹くんだったね。姪が世話になってるね」

「いいえ、お世話になってるのは、僕のほうです」

あからさまな社交辞令の挨拶をする。


「早速だが本題に入るね」

「はい」

やはり、裏があったか・・・

予想はしていたが、それを目の当たりにすると、さすがに怯える。


「実はここにいる、人たちには共通点がある」

「何ですか?」

生唾を飲む。


「全員、アナログ派だ」

思わずむせた・・・


そんなことで、連れ込んだのか?


「でも、僕や美雪さんはともかく、そちらの方がアナログ派では、

仕事上困るでしょう?」

声優さんたちを見る。


「仕事上は仕方なく使ってるけど、普段は使ってないの」

「なぜ?」

「機械は苦手なんです」


ブログやSNSは、マネージャーが代筆しているという。

それって、詐欺じゃ・・・


「私たちが、ノートに書いて、それを打ってもらってるんだ」

なるほど・・・


「でも、わざわざ、そんな事で、僕を呼んだんですか?」

「いや、それだけじゃないよ。もちろん」

美雪さんが、口をはさむ。


「まさか、文通しろと?そんな時間ないでしょ」

忙しい芸能人。

返事を書く時間があるようでは困る。


「私たちに、ファンレター書いて」

声優さんたちは言う。

「お二人なら、たくさんもらってるでしょ?」

「でも、みんな活字なんだもん。温かみのある手書きが欲しい」

即座に返してくる。


「そんな、駄々こねないでくださいよ」

「お願いします」

たく・・・


「もしかして、美雪さんと仲良くなったのは・・・」

「それが、原因」

もう、わけわかんない・・・


「ふぅ、わかりました。書きますよ。書かせていただきます」

「本当に、ありがとうございます」

手を握られる。


そういや、おいくつなんだ?この人たち・・・


「私たちは、32歳よ」

「オープンですね」

「それほどでも・・・」


でも、20代でも、通用するな・・・

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