乙女ゲームの世界に転生したら速攻で殺されるモブ姫でした~武器を手にして生き残れ!…って、私ただの女子高生なんですけど?!~

七沢ゆきの@11月新刊発売

第1話 気が付いたら皇女になっていました

 私はいつものように病室のベッドの上に横になっていた。


 でもなんか変だ。

 いつもと違う。

 私は病室の天井を見上げながらそんなことを思う。


 息はできるのに世界がぼやけてる。


 自慢じゃないけど視力は1.5だ。こんなこと、有り得ないのに。

 おかしいな。全然目の焦点が合わないよ。


 そのとき私ははっきりと自覚した。


 あ、私、死ぬんだ。


 お母さんが枕元で泣いてる。

 お父さんとお兄ちゃんも声を出さないように変な方向を向いているみたいだ。

 もうよく見えないけど。


 ごめんね、お母さん。もっと一緒にお料理したかった。

 お母さんの作るおいしいハンバーグの作り方、まだ覚えきれてないのに。


 ごめんね、お父さん。お父さんの剣道道場継げなかった。

 お兄ちゃんが警察官になっちゃったから、私が継ぐねって約束したのに。


 ごめんね、お兄ちゃん。オリンピックに一緒に行こうって夢、かなわなかった。

 お兄ちゃんとするクレー射撃の練習、大好きだったよ。

 剣道はオリンピックの種目にないから、射撃でダブル入賞しような!って張り切ってたのに。

 そのためにお兄ちゃんは警察官になったのに。


 悔しい、悔しいよ。


 やりたいこと、まだいっぱいあったよ……。


 神さま、どうか、どうか、次に生まれるときはここまでの人生でできなかったことができるような世界に生まれ変わらせてください……。


 そして、私の意識は、そこで途切れた。




                        ※※※



「姫、エーレン姫、お目覚め下さいませ」


 耳元で声が聞こえる。

 えっ?

 私はあのとき病院で死んだはず……。

 エーレン姫って誰?


「姫、陛下たちがお待ちです。さあ」


 体の上に掛けられていた寝具が剥がされる。

 ひんやりした空気に私の意識はだいぶクリアになる。

 って、え、え、えええええーっ!?

 なにこのディ○ニーのお城っぽい部屋。

 てゆうかなんで私こんなに髪が長いの?

 動くのに邪魔だからいつもショートなのに……しかも、金髪?!

 私はもう一回部屋の中を見回し、ついでに自分の姿も見回し、普段の自分なら絶対着ないひらひらふわふわしたドレスみたいなパジャマを着ているのを見て、また、気を失った。


「まあ、大変!姫がお倒れに!!」

「早く侍医を!」

「レギーナは陛下にこのことをご連絡して!」


 耳元でうっすら大騒ぎの声がバタバタ聞こえるけどもういいんだ。

 これは夢……きっと夢……たぶん新種の三途の川……。  

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