初夏の予感


記憶喪失になった

朝がきた

花は咲いたり散ったりしていた

わかりやすいからいいよなお前らは

こっちは複雑だよ

おれはおれが誰かわからなかった

空き缶に名前を付けて飼育したりしていた

「どうかしてる」

だがどうにもならない

お手上げだよ

おれはきっと間違えた

それでも進まなくてはならない

間違えた場所からまた始めなくてはならないのだ

花束は揺れている

それを胸元に大事そうに抱えたまま歩き出した

夏の日射しに

何かを取り戻せそうな予感がしたけれど

きっとおれは泣くだろう


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