希望という名


おれのペット

それは掌サイズだ

胴体はドラム缶よりちょっと大きいが

頭が掌サイズなのだ

だからおれはよくペットの頭をむんずと掴む

それで天気予報を観る

もちろんペットの頭はむんずのままだよ

「曇りですね」

予報士は画面越しにおれに情報を伝えた

電気と電気の交配

予報士はおれを無視して自分の話しを続けた

「風が強くて波が高いのでサーファー達は明日は海に入らないで家でジャンケンとかしていてくださいね」

おれの怒りは頂点に達した

「サーファーなめてんのか!」

画面に向かって鉄パイプを叩き込んだ

「死になさいよ! あんたたちは!」

税金泥棒めが!

怒りが収まらなかった

「おらあっ」

ガンガンにぶっ叩くとテレビは黒煙を吐いた

地球と仲良くする気、無し

「もっとがんばれよ、てめえはよお」

もくもくと煙を吐き続けるテレビをおれは叱咤激励した

だがテレビは死んだ

………

そんなつもりはなかったのに

おれは画面の向こうの予報士をぶん殴るつもりだったのに悪いことをしてしまった

テレビはただあいつを映していただけなのだ

「わるかったな」

おれはぺこりと頭を下げた

予報士は週間天気へと突入

「永遠に頭上は曇りでしょう」

だがおれのテレビがそのことを告げることはなかった

何故なら既にぶっ壊れているのだ

だからおれは明後日あたりには何事もなく空は晴れていると思い込んでいる


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る