その夏

世界中の向日葵が

赤く咲いた

それは特殊な現象だった

だがそれ以外は普通の夏だった

いつも通りに海水浴中の小学生が溺れて死んだりしているだけだった

おれの爺ちゃんはスイカをガシュガシュと食べながら言った

「全くすげえよなあ………おいマシャル、向日葵が赤いんだってよっ」

おれはこの爺ちゃんが大嫌いだった

早く死ねばいいのにと心の中で何度も願っていた

お小遣いをクーポンでくれるのも嫌だった

だが神様はいないので爺ちゃんは元気溌剌だった

………向日葵だって？

おれはぷいっと向こうを見ながら言った

「よくあることだよ」

爺ちゃんは哀しそうな表情だった

そしてこんなことを言い出した

「婆さん、今宵のセックスは控えておこう、身体の調子がすこぶる悪い」

放屁が止まらないなどと呻き出した

頭が狂っている

そう思った

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