鋼鉄の爪


背中が痒いから掻いてくれ

親父に頼まれたので

いいよと言って

掻いてやったら

うぎゃあと叫ばれた

あやべえ

アイアンクロー外すの忘れてたわ

「大丈夫か?」

おれは尋ねた

大丈夫じゃない

と言われた

なるほどな

おれは頷いた

「痛むか?」

痛む

と言われた

おれはもう一度、頷いた

「何か欲しいものはあるか?」

桃の缶詰が食べたい死ぬ前にと言われた

ばかっ

そんなこと言うな

実の息子を殺人罪で収監させる親が何処にいるんだ

「親をアイアンクローで切りつける息子はいるけどな」

ははっ

これは一本とられた

大きな傷跡

そこから止めどなく流れる血


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