疑問


死体がいた

死体だった

いた?

いやあったか

まあどっちでもいいや

死体がいた

もちろん始めから死体だったわけではなかった

最初は生きていた

肺呼吸もしていた

だが死んだのだ

「圧死したんでやんす」

出っ歯のチビが柱の陰でそう呟いた

そいつに言わせるとどうやら裸で尻を突き出し上下左右に振りながらあははん今宵のいい風♪ なんて自作の聞くに耐えない歌を披露しつつ太陽の下で気が狂ったふりをしていたら車に撥ねられて壁に挟まれ死んでしまったそうなのだ

救急車で運ばれた

だがもう死んでいたからその移動速度も緩やかなものだったそうだ

救急車を運転している人たちはこんなことを思っていた

(何やってんだろうおれ………)

人間、生きていればそんなことを思うこともある

だが疑問を抱いたらこの世界に居場所は無い


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る