アメリカンユースカルチャー


「腹減ったな」

おれは友人にそう言った

「リスでも食うか?」

友人は言った

リスかあ

おれは一瞬、躊躇った

「いいね」

そう答えた

そしておれとトムの二人はリス料理店へと向かったのだ

「よしっ、じゃあ車出すぜ」

おれは尋ねた

「ところでどんなメニューがあるんだ?」

「そうだな………基本的には丸焼きがメインだ」

リスの丸焼きか

あまり食欲をそそられない響きだった

なるべくならリスの五体が不満足になって見た目が判別し難いと有難い

おれの曇りがちな表情を察知したのかトムはさらに続けた

「これから向かう店にはさ、常連にのみ提供される刺身もあるぞ」

「うまいのかいそれ?」

「そいつは自分の舌で確かめてみるんだな」

一理ある

おれはふっと助手席で笑った

「今までお前の誘いに乗ってハズれた試しは無かったもんな………あのチアリーダーのジェニファー、お前のご察しの通りとんでもないヤリマン、おれはもう何度はめ狂ったかわからないよ」

「イエー、やっぱりあの女、淫乱だったのか………おっともうすぐ着くぞ」

そうしておれとトムは美味しいリスの専門店へ到着した

おれの名前はケビン

オハイオ大学に在学中でトムとは昔馴染みなんだ

「トムゥ、あのさあ今度、無修正のいやらしい女の裸体が鮮明に映し出されているDVDを貸してくれないか? 性器の出たり入ったりまでもがくっきりと刻印されているエグいやつ」

おれは身ぶり手振りも交えて説明した

目の前で両手をもぞもぞさせそれを一気に取っ払った

それがモザイクを除去する動作であることは明白だった

余計なものは必要無い

それを伝えたかった

さすがはトム

これだけでわかった

トムは片目をぱちりとやって微笑んだ

なんだかんだで頼り甲斐のある奴なんだ

おれたちはその晩、八十七匹のリスを貪り食った

それはのちに『森の環境を守る会』からの殺人予告を受けるきっかけともなった出来事だった


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