スライムの"スー"その1


夕飯はカレーだった。スライムは何を食べるかわからなかったが、カレーを出したらスライムが皿ごと呑み込み綺麗にカレーだけなくなった皿を出した。一瞬でカレーが無くなったからこれには俺も母さんも驚いた。


スライムに美味かったか聞くと『スー!』と元気よく言ったので、もう一杯カレーをあげた。これもまた、一瞬でカレーが無くなり皿だけ出した。その後もカレーをあげると同じ事を繰り返し、カレーは無くなった。俺は一杯しか食べられなかった。


夕飯を食べ終わったので母さんの片付けの手伝いをしていると「アレン。あのスライムちゃんの名前考えたの?」と聞かれた。


そういえばずっとスライムって呼んでたな。

スライムは種族名だし人間だったらずっと人間って呼ばれてるものだしな。これじゃ可哀想だ。俺は考えた結果"スー"と名付けることにした。


「よし!今日からお前の名前はスーだ!」


『スー!!』


スーは飛び跳ねて喜んでくれた。

へっ可愛いやつだ。


その後、俺はスーと一緒にお風呂に入った。スーはお風呂が気に入ったみたいで気持ちよさそうにずっと湯船にプカプカ浮かんでいる。


「スーもうでるぞ。」


『ス~。』


スーを抱き抱え、タオルで拭いた。俺も自分をタオルで拭いた。後は、母さんの魔法で髪を乾かしてもらう。


母さんは火、水、風の3属性の魔法が使える。火と風を組み合わせた温風で俺の髪を乾かしてもらう。


俺が母さんに髪を乾かしてもらってるとスーがじっと見てきた。


「どうしたんだスー。お前もやってもらいたいのか?」


「あら?そうなのスーちゃん。でもスライムは魔法が弱点だからできないわねぇ。」


そう、スライムは物理攻撃にはめっぽう強い。というか無効だから全く効かない。そのかわり魔法にはめっぽう弱い。防御力も低いからすぐにやられてしまう。


たが、スーは何故か母さんの魔法、温風に飛びついた。


「あっ!ちょっ!?」


「きゃっ!?」


突然の事だったので俺も母さんも反応できなかった。スーは温風に直撃した。攻撃魔法じゃなくてもスライムには攻撃になる。どんな魔法だろうがスライムはダメージを受ける。それが回復魔法でも、付与魔法でもだ。


たが、スーは平然としていた。しかも魔法を吸収したのだ。


「お、おい!スー大丈夫か?」


『スー!スー!』


あれ?大丈夫そうだな。なんでだ?しかもなんか元気になってる気がするのは気のせいか?


「ま、まぁ大丈夫ならいいけど。」


なんでダメージを負わなかったのかわからないがまぁ無事だしよしとしよう。

母さんはぽかーんとしていたが、やがて我に返って「………不思議ねぇ。」と呟いていた。


思わぬ事態があったが何事もなくて良かった。俺は母さんに「おやすみ。」と一声かけて自室に戻った。


何故スーに魔法が効かなかったのかわからないが、さっきの出来事で気持ちが疲れたので明日考えることにした。ベッドに入りスーと一緒に寝た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る