第185話 仔猫殿下と、はつ江ばあさん・その二十七
そんなこんなで、バッタ仮面シリーズが一堂に会した中、シーマ十四世殿下はというと……
「みんなー、バッタ仮面さんたちが、助けに来てくれたよー」
……耳と尻尾をダラリと垂らしながら、ヒーローショーの司会のような感じになっていた。
「これで、安心だぁね!」
脱力したシーマにニッコリと笑うはつ江が続くと……
「わーい! ありがとう!」
「みみみみー!」
モロコシとミミがぴょこぴょこ飛びはね……
「人々の危機に颯爽と現れる……、我が輩も次期魔王として、見習わなくてはならないのだ……」
プルソンは相変わらず感動に打ち震え……
「あ、えーと、どうも……」
……ゴルトは混乱しながら、無難な挨拶をした。
そんな中、バッタ仮面が腕を組みながら、コクリとうなずいた。
「うむ! それでは、我々はこれから『暴走しちゃった超・魔導機☆』の処理に向かうのだ!」
「あぶねーから、坊主どもはここで留守番してろよ」
続けてバッタ仮面メイズが声をかけると、一同は声を合わせて、はーい、と返事をした。
「みんな、頑張るだぁよ!」
「頑張ってねー!」
「みっみー!」
「がんばってねー……」
「応援しているのだ!」
「えーと……、頑張ってください……」
一同の熱かったり、力無かったり、困惑気味だったりする声援を受け、バッタ仮面シリーズは一斉にコクリとうなずいた。
「みんな! 応援ありがとう! では、行ってくるのだ! とう!」
バッタ仮面の掛け声を皮切りに、シリーズ一同は一斉に部屋から姿を消した。
そして……
「ああっと! 魔界の皆さま、ご覧ください! 福引のアレに向かって、六つの影が猛スピードで近づいていますぞ! あれは……、な、なんと! 魔界の危機に、バッタ仮面シリーズが集結していますぞ!」
……大型モニターには、「超・魔導機☆」に近づくバッタ仮面シリーズと、嬉々として状況をレポートするリッチーの姿が映し出された。
「手に汗握る展開なのだ……」
「うん、緊張するね……」
「みみぃ……」
「そーだなー」
固唾を飲むバッタ仮面ファンたちにシーマが相槌を打つ中、モニターには……
「それでは、全員の運動能力を向上させるぞ!」
「皆さま、頑張ってくださいね!」
「じゃあ、いっくよー!」
バッタ仮面デルタが全員に身体能力向上の魔法をかけ……
「よくやった、わんこども! 黒いの、行けるか!?」
「んもう! バッタ仮面ブラックと呼んでちょうだい! 行けるに決まってるでしょ!」
「よっしゃ! じゃあ、ちゃんと合わせろよ! おりゃっ!」
「アンタこそね! ふんっ!」
バッタ仮面メイズとブラックが、電熱線カッターと自分の爪で、「超・魔導機☆」の腕を切断し……
「ぬわーっ!?」
「きゃぁー!?」
「わーっ!?」
「……まいったな」
五郎左衛門、バービー、ポバール、樫村が悲鳴を上げながら落下し……
「皆さま、今お助けいたしますわ!」
「どうか落ち着いてくださいね!」
バッタ仮面ウイングと、ロカスト・オ・ランタンが、四人を救出し……
「魔界の平和を乱すものは許さないのだ……、食らえ! バッタ仮面パーンチ!」
バッタ仮面が、「超・魔導機☆」の中心部に、飛び込みながらのパンチを喰らわせ……
「ごめんね! そのお願いは叶えられないよ!」
ドォォン!
轟音を響かせて倒れる「超・魔導機☆」の姿が映り……
「そこは、キックじゃないんだ……」
……部屋の中には、シーマの力ないツッコミが響いた。
「なんという圧勝! 素晴らしき力! まさに芸術! やはり、バッタ仮面シリーズがいれば、魔界は安泰ですぞ!」
モニターには、大げさに感動するリッチーが映り、茶番は幕を閉じたかにみえた。
まさにそのとき!
「ごめんね! そのお願いは叶えられないよ!」
ガラガラガラ
ポヒッ
土煙の中から、八角形の部分だけになった「超・魔導機」が現れ、「見た目は派手だけどダメージなく適度な距離に吹き飛ばす光弾」を打ち出し、オリジナル以外のバッタ仮面シリーズと、救出した人質たちを吹き飛ばした。
「あぁ!? なんということでしょう! バッタ仮面は、無事なのでありましょうか!」
相変わらず大げさなリッチーの言葉とともに、映像がやけに的確にバッタ仮面のアップへと切り替わり……
「く……、なんという力なのだ……、これはもう、魔界のみんなと、魔界にお手伝いに来てくれたみんなに応援されながら……、次期魔王のプルソンと、キューティーマジカル仔猫ちゃんなシーマ十四世殿下と……、偶然魔界に紛れ込んじゃった子の中で一番魔術の素養がある子が協力しなくては、勝ち目がないのだ……」
魔王……、もといバッタ仮面が、やや早口でやけに具体的な解決策を口にし……
「プルソンさま! 殿下! ムッちゃんさん!」
「みー!」
「みんな、出番だぁよ!」
モロコシ、ミミ、はつ江は他の三人に、キラキラとした目を向け……
「うむ! 我が輩たちに任せるのだ!」
プルソンは耳と尻尾をピンと立てて胸を張り……
「え……、で、でも、僕……」
ゴルトは視線を泳がせてオロオロし……
「うん、まあ、そうなるだろうな、とは思ってたよ……」
……シーマはヒゲと尻尾をダラリとたらして、力なく呟いた。
かくして、はつ江ばあさんに応援されながら、仔猫殿下もこの茶番に参戦することになったのだった。
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