謎の贈り物

西田 正歩

第1話ブックカバー


読みたい本がないと言うのは、本当に悲しいことだ。いや、見つけられないというのが、本当のところだが、さすがに売れている奴やテレビや雑誌の紹介物は読んでいる。

しかし、掘り出し物というのには余り出会ったことはない。自分の直感を信じて買うが、満足する物には出会えたことはない。

しかし、ある日の深夜のことであった。

ドンドンドンドンドンドン

ボロアパートで夜だというのにインターフォンも押さず、ドアを叩いている。

「すみません、こちら田中 正春さんのお宅ですね。あなたは、自分の趣味で悩んでいるようですね。もし良ければこれをお使いください」

ドアのポストの中に何かが入った音がした。

「ただし、ちゃんと注意事項を読んでいただき、お使いください。」

私はポストを開ける。中には封筒が入っていた。封筒の中には、ブックカバーが入っており、それと一緒に手紙が同封しており、

(これは、ためし読み出来るブックカバーです。あなたが持っている本から、読みたいジャンルの本を持って来てそれにブックカバーをかけます。そして、開くと自分が読みたい本が出てきます。ためし読みなので、途中までしか書かれておりません。後は自分でその本をお買い下さい。

注意事項は、もし読んで別に買わないわ、という気持ちにはならないでください。あくまで、あなたにあった物語ですので、決して買わないということのありませんように)

読みたい本が読めるんなら、買うに決まっているだろう。どれどれと、ミステリーの本を取りだしかけてみた。

すると本の内容が変わり、とても面白かった。明日の休みを使い本屋に行くことにした。それからは、楽しくてしかたがない。読みたい本がこれだけあったなんて、沢山の本の部屋になっていた。

ある日、時代小説を読んだとき、いつものように本屋に行ったが置いておらず、店員に予約しようとすると、絶版で取り扱ってないとのことであった。

それから、他の本屋に行くが無い。携帯のネットオークションに出てたのを見つけ、値段を見てビックリした。五千円の文字が出ていた。

フッと値段を読み、買うのをやめた。

その夜のことジリジリジリジリと携帯から、設定してない音が流れてきた。何だと出てみるた。

「あなたは、約束を破り本を買いませんでしたね。」

「しかし、高かったですし」

「いいえ、あなたの住んでる近くの古本屋に五百円で売ってあったんです。」

「本当ですか。では、明日買いますよ」

「いえいえ、あなたは内容よりお金に気持ちがおよいでしまいました。そんな気持ちの人に本も読まれたくないでしょう。あなたは約束を破ったその代償は必要です。」

私は気がつくと寝ていた。時計の目覚ましがなる。しかし、フッと違和感を感じた。テレビもつけたが、また違和感がある。男女のキャスターが話しているが、文字が出てこない。

「なっなんだ」

新聞にも、写真と枠が写し出されているだけで、全て白紙であった。そして、大切な本の中も文字がない白紙であった。

時間も文字もない世界に私はいるのであった。

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