#9 サッカー少年

 その日は至って普通の練習日になるはずだった。


俺とタケヒコは、俺がサッカー部に入ってから、かなり息の合ったペアで、新人戦でもかなり期待されているらしかった。


でも…


「付き合って欲しい」そう書いた手紙をサキコに渡したのは今朝の事だった。


しかし、さっき返って来た答えは


「ごめんなさい」


それだけだった。


負けるとわかっていたけど。

俺より良いヤツだって十分わかっていたけど。


どうせ、タケヒコにそれを話したら、


「何言ってんだよ」


そう言われるだけだろう。ただ、それだけしか言われないのが、逆に怖い。


「バッカみてぇ…」


たった一人で呟いた。


その時、佐藤から電話があった。ナツの部活見学に、練習を休んで、一緒に付き合ってくれないかという話だった。だが、その後の光景を見たら…




負けたんだな。改めて感じた。


「今日さ、何かあったの?」


帰ってから、ナツに聞かれた。俺は、


「別に。」


と、答えたが、ナツは俺の考えている事を察したらしい。でも、笑いもしないし、怒りもしなかった。


ただ、こう言った。


「あのさあ…。八つ当たりで料理するのってかっこ悪いと思うよ。私は。」


その声は、俺の試合終了のホイッスルだった。




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