酒は呑んでも

@chauchau

第1話


『おはようございます! 四月十四日日曜日、時刻は六時ちょうどとなりました! 厳しい寒さも終わりを告げてすっかり春真っ盛りですね! それでは今日も朝のニュース始まります!!』


 付けっぱなしだったテレビから聞こえてくる馬鹿みたいに明るい若いキャスターの声に八つ当たりと分かりつつも苛立ちを覚えてしまう。


 死ぬ気の思いで勉強してなんとか入れた某有名国立大学、その最初の一週間。

 形式ばかりで面白味のない入学式を乗り越えて、学部のオリエンテーションでは逆に色が濃すぎる教授の説明を受けながら友達作りに勤しんだ。

 そして待ち望んだのは金、土曜日に行われた部活・サークル説明会。大学生といえばサークル活動! たった四年しかない花の女子大生! その生活に大いに影響するサークル選びに全神経を用いたのは私だけではなかっただろう。

 誘拐紛いの多くの勧誘を振り切って、目指したのは小さな演劇サークル。馬鹿の代名詞とまで言われた私が難関大学合格を目標にしたその理由。かつて、大好きな姉が所属していたそのサークルに私は飛び込んだ。

 あぁ、ここから私の楽しい大学生活がスタートするんだ!!




「……」


「……」


 大学入学を期に始めた一人暮らし。母と父と一緒に一生懸命選んだ私の新しい家。

 日当たり良好、オートロック完備、防犯にも考慮しての四階の角部屋。少し狭くてユニットバスで大学からほんのり遠いのが難点だけど、夢にまでみた私だけの城。

 社会人の姉がいつ泊まりに来ても良いようにと我が儘言って買ってもらった少し大きめのベッド。部屋を狭くしている最大の要因なのだが私にとっては姉が泊まりに来てくれることが一番の優先事項である。

 いつまで経ってもお姉ちゃん子なんだからと母に笑われたそのベッドの上に、なぜか私は昨日知り合ったばかりの男性と二人で遠い目をしていた。


 


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