惚れちゃってごめんね
@getugaku
第1話 資源ごみ回収のお姉さん
春なのに、春だからなのか?
とにかく風が強い日でした。陽射しはやわらかく暖かいのに、風は冷たくて衣替えなんてでないまま五月になりそう。
そんなことを思いながら、ドラッグストアに向かうのだ。住宅地から少し歩けば、大きな道路。新年度もバリバリ働くぞと、気合いの入った車の鳴き声。
せわしなく、また一年、働いて終わるんだ。
楽に逃げた私は、また一年、ぼんやりと過ごすだけなんだがね。
「すみません、落とされましたよ」
資源ごみを回収する軽トラックの助手席から、明るめの茶髪をお団子にした丸顔のお姉さんが声をかける。
なんだ?私は何も落としてないぞ。ただ、あなたの朗らかな笑顔に落とされてしまいそうですが、なんて。こ、言葉にはしないぞ。
「あ、すみません!!こら、どうして着てないの~」
カーキ色した子ども用のブルゾン。
自転車を漕いでいた女性はペダルを漕ぐのをやめて、お団子さんに顔を向ける。
「すみません、ありがとうございます」
「いえ、暖かいと着るの忘れちゃいますもんね」
自転車の前部分にあるチャイルドシートには、カーキ色のブルゾンの持ち主が桜の花弁が髪にまとわりついて邪魔そうにしている。
どこにでもありふれた光景に、私は立ち会えてしまった。こんなに優しい人が、私の近くで知らない暮らしをしているんだ。
なんだろう、どっちも…好き。
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