電車の中で。(幼馴染)
私は今、満員電車の中で幼馴染と今にも唇があったってしまうんじゃないのか、という至近距離に追いやられている。
「ひ、人多いね」
私は小声ではあるけど幼馴染に話しかけた。
幼馴染は、恥ずかしがっているのか私と顔を合わせようとはしなかった。
それもしょうがない、だって喋れば吐息が、動けば胸と足が、何をしたところで恥ずかしいのには変わりないのだから。
しかし内心私は、この状況を嬉しく思っているのかもしれない。
だって最近は、幼馴染とこうして長い間至近距離にいられることなんて、全くと言っていいほどなかったから。
「そうだね」
幼馴染は私と顔を合わせないながらも、呟いた。
幼馴染の吐息が、私の腕に当たるとなんだかこちらまで、恥ずかしくなってくる。
さっき幼馴染が、私から目線を外したのは、私の吐息が当たったからなのかも。
その時。
電車が、揺れた私の意思に反して体が、動いてしまう。
幼馴染の体も動き私達の顔は、その揺れで近づいた。
後数センチ。もしかしたら数ミリの位置だったかもしれない。
そんな位置で私達は止まった。
互いの吐息が、互いに顔に当たっていく。
目線を外せば済む話なのかも知れないけど、達そうはしなかった。
幼馴染はどうかわからないけど、わたしに限って言えば、幼馴染の顔から目を離したくない。その一心だった。
気づくと私達は、残り数ミリを自分の意思で縮めていた。
常に一緒にいたのにもかかわらずこれが、私達の、ファーストキスだった。
その後私達は狭い電車の中で、微笑みあった。
私は今、満員電車の中で幼馴染と今にも唇があったってしまうんじゃないのか、という至近距離に追いやられている。
「ひ、人多いね」
そんな中で、幼馴染は呟いた。
そして私の顔に吐息が、当たっていく。
この状況をもっと楽しみたい、もっと幼馴染の顔を見ていたいという気持ちは、もちろんあるけど、私にはこのまま位置に顔を置いておくのは、無理だった。
私は俯いた。
だって幼馴染が、喋るたびに幼馴染の吐息が、私の顔に当たるんだよ? そんなの耐えられる方がおかしいはず。
それに少し動けば、胸が足が互いに当たってしまう。
「そうだね」
私は恥ずかしいながらも、顔を合わせないながらも、一応幼馴染に返答する。
私が喋ったことによって、私の吐息が幼馴染に当たり、幼馴染の体がブルっと震えた。
そして幼馴染は、確実に照れている。
そう確信した時。
電車が揺れた。
私の意思に反して、私の体が動いてしまうぐらいには揺れた。
そして向かいにいる幼馴染の体も動いていた。
そうなると私達の体は、必然的に後数センチ、数ミリといった距離まで近づいていた。
互いの吐息が、互いの顔に当たる。
さっきみたいに顔を伏せればいいのに、私はそうはしなかった。
できなかった。
だってこの至近距離で、幼馴染の顔をみてられること以上の幸福を私は、知らないから。
気づくと私達は、残り数ミリの距離を今度は、電車の揺れではなくちゃんとした自分達の意思で、縮めていた。
常に一緒にいるのに、お互いがお互いのこと大好きなのに、これが私達のファーストキスだった。
その後私達は微笑みあっていた。
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