一章 戒め

一章 戒めー1

 1



 その島を初めて見たとき、十八世紀にでも逆行してしまったかのような錯覚をおぼえた。


 屋久島から南に百キロほどの距離にあるその島は、二十一世紀なかばに造られた人工島である。


 総面積は六百十二平方キロメートル。淡路島より少し大きいくらい。人工島としては、かなり大規模なほうだろう。

 二十一世紀の粋を結集して造られたと聞いたから、もっと機械的な島を想像していた。


 しかし、輸送機の窓から見おろした島の全景は、まったく自然に発生した島と違わない。


 島の海岸線は多くが白い砂浜で、一部が崖になっている。

 こんもりとした森の樹木は屋久島から移植された屋久杉だ。それが島をドーナツ状にかこんでいる。


 中央には田園が広がり、さらにそのまんなかに、オモチャのブロックみたいな建物がひとにぎりある。

 施設と言えるのは、それだけだ。ほかには何もない。

 ため息が出るほど、さみしい風景である。


「あれが収容所か」


 これから、ここが自分の終生をすごす場所になるのだと思うと、やはり、やるせない。


 覚悟はしてきたつもりだが、忍はまだ二十四さいだ。現役の軍人であるかぎり、何十年でも、ここを出ていくことはできない。


 おまけに島にいるのは、ほとんどが異常者だ。

 異端収容所の教官など、うまく、やっていけるのだろうかと、ふと不安に思う。


 ここは社会に適応できない異端者を集めた収容所。

 だから、島は絶海の孤島であり、外部への交通手段は、週に一度のこの輸送機だけだ。


 逃亡は絶対にできないよう厳重に警戒されている。


 島には航空機は常備されず、海底トンネルなどもない。緊急脱出用の小型潜水艇は、ごくわずかの管理者の承認なしには使用できないシステムになっている。


 また、島全体に特殊な磁場が張りめぐらされ、電波を遮断している。情報ネットワークからも完全に隔離されていた。


「港もないのだな。収容所に万一のことがあれば、死ぬしかないということか」


 忍のつぶやきを耳にしたらしく、前の操縦席からパイロットの軍曹が応えてきた。


「ご心配にはおよびません。収容所の連中は変わっていますが、おとなしいものです。危険はありません。おかしなふるまいも、畜生のすることと思えば、腹も立ちません。じきに九龍くりゅう大尉も、あつかいをおぼえられることでしょう」


 収容者がクーデターを起こすことを案じたとでも考えたらしい。


 軍曹はエリートコースをはずれて左遷されてきた忍に、同情しているようだ。忍はそこまで案じたわけではなかったのだが。


「現在、収容者は何人だ?」


 たずねると即時、返答がある。

 反重力輸送機は自動操縦になっており、パイロットは手持ちぶさたなのだ。


「およそ二千人であります。二千百数十名でしょう」

「そんなにいるのか。おどろいたな」

「ここだけの話ですが、社会不適合者がいなくなることはありません。これは篠山博士の受け売りですがーー着陸いたします。よろしいですか?」

「やってくれ」


 反重力輸送機は機体の幅さえあれば離着陸可能だ。島には発着場さえない。島の北端にある平地が発着場がわりだった。


 島が近づくと、巨大なブロッコリーのように見えていた樹木の一本ずつまで見えるようになった。


 島の生態系は屋久島に似せて人工的に造られたものだが、自力で飛来したのか、奄美大島や沖縄諸島の動植物も、ちらほらと見える。からみつくように濃い緑のなかに、あざやかな色の鳥が飛んでいる。


 忍は宇宙ステーション移住者でこそないが、ドームシティー育ちだ。この未開の森の景色には圧倒された。


 昨日まで視界に入ってくるのは、すべてが人造物だった。


 強化ガラスの壁。そびえる摩天楼。地下深く続くシェルター。衛星軌道上の宇宙ステーションまで直通の宇宙間エレベーター。


 規則どおりに列を守り、オートウォークに流されていく人々。

 同じ服、同じ色彩。表情も同じ。


 人々を監視するカメラ搭載のインセクト型ロボット。

 その映像は、つねに政府の中央管理室へ送られる。


 体内に埋めこまれた生体反応プレートからの脳波によって、人々は管理されている。


 何もかもが国家によって統制管理された、機能的かつ清浄で健全な社会。礼節を重んじ、おきてに守られた厳格な社会。


 生まれたときから適性をしらべられ、適性どおりの道へふりわけられ、定められた職につく。


 地位の高い職や特殊な専門職の適性を得られなかった者は、工場などの単純作業にまわされる。


 だが、どういうわけか、こうした作業からこぼれおちていく者が、ときおり現れる。適性はないと言われているのに画家になりたがったり、スポーツマンになりたがる。


 あるいは、誰でも守れるカンタンな礼節が守れない。

 危険思想、精神病などの社会不適合者。


 それらを矯正の目的で集めたのが、各地にある不適合者収容所だ。


 重犯罪者は植民星送りの強制重労働になるので、国内の収容所にいるのは、軽犯罪者や治る見こみのある異常嗜好者などだ。


 忍はこうした収容所のなかの一つ、収容所B3に西暦二千八十四年十月七日付けで、更生プログラムの教官として赴任された。つまり、異端レベルBの不適合者の国内三つめの収容所だ。


 異端レベルAは植民星送りの重犯罪者だから、国内の収容所では、レベルBがもっとも重度の異端である。どんな更生プログラムにかけても、まず九割がた根治することはない者たちだ。


 忍の仕事は教官とは名ばかりであり、じっさいには彼らを植民星へ送るための最後の裁定人といったところである。植民星は実質的に重犯罪者の処刑場だ。送っても送っても倒れていく。労働力は、つねに不足している。


 だから、重要な仕事ではある。

 ただ変人のなかですごすことは、社会で忌みきらわれることでもある。一度でも、この職についた者は、軍隊のなかで出世の道を絶たれると言われている。


 この役に、忍はみずから志願して来た。

 二十四という若さで大尉にまで昇進し、将来を嘱望しょくぼうされていたのだが。でも、あれ以上、自分をいつわってはいられなかった。


 そういう意味では、自分も不適合者なのだと思う。


「九龍大尉。到着いたしました」


 ひらかれたハッチから甘い香りが侵入してきたので、少なからず意表をつかれた。甘いというより、さわやかと言うべきか。

 香水は特権階級のごく少数の貴婦人だけがつけることができる贅沢品だ。その香料ほどには強くない。


 それが樹木や草花の香りのとけた大気の匂いだと、忍は生まれて初めて知った。


 わずかの荷物を持っておりると、足の下にやわらかい感触があって、さらにうろたえる。人工芝の上くらいは歩いたことがあるが、それとは違う、もっと弾力のある感触だった。


 何もかもが初めてで、忍の知らないことばかり。


「いらっしゃいませ。大尉どの」


 いきなり声をかけられた。

 もちろん、そこに一個小隊が敬礼で迎えてくれていることには気づいていたが。


 お仕着せのグレーの軍服を着用した連中が半数。

 同じくお仕着せのカーキ色の作業服をきた連中が、残りの半数。カーキ色のほうは収容者だろう。


 忍は気持ちをひきしめた。

「ご苦労。私が九龍だ。君は?」


 一人だけ手前に立っている隊長にたずねる。

 丸顔の童顔で、忍より若く見えた。腕章は白地に赤の一本線。医療班の曹長であるとわかる。


「風間であります! 物資管理の任を受けております。お見知りおきを」


 風間曹長は敬礼をとくと、するっと手を出して、忍のトランクをつかんだ。


「どうぞ。こちらへ。収容所まで案内いたします」


 うっそうと樹木の繁茂する森の入口に、四人乗りのホーバークラフトが停めてあった。風間はそこへ忍をつれていく。


 あとの者たちは輸送機から物資をおろす作業にかかっていた。それにしても彼らのあいだを忍が通っていくとき、カーキ色の連中から、やたらとため息がもれたのが妙な感じだ。


 ホーバークラフトが森のなかを走り始めてから、忍は風間にたずねてみた。


「収容者たちは新しい教官に虐待ぎゃくたいされるとでも思っているのだろうか? 私の到着が、ずいぶんと憂うつらしい」


 ホーバークラフトは時速三十キロほどのスピードで移動していく。ゆるやかに流れていく景色をながめていた風間が、ニカリと白い歯を見せる。


「大尉があまりお若いので、連中、仰天したのでしょう」

「若いというなら、曹長のほうが若いのではないか?」


「いえ。自分はこれでも大尉よりは年上でしょう。二十八になります。それに自分のは、ただの童顔というやつなので、連中の趣味にはあわないのであります」


 なんだか、よくわからない。


「少し暑いな。ここはずっと、この調子か?」

 気温も暑いが、とにかく湿度の高さに閉口した。


「収容所の建物に入れば、環境自動調節機能が完備されております。今しばらく、ご辛抱ください」


 それきり、とくに会話もなく、どこか自分とは別の世界の夢のように、外の景色をながめていた。

 かすかに聞こえてくる潮騒が緑の濃い風景にとけあい、なおさら夢心地へとさそう。


 世界の調和から、はみだしていく焦燥感と、それさえしのぐほどの放恣ほうしな充足感。


 おおいかさなる樹陰のすきまから差す木洩れ日が、ふっと金色に輝く幻影を呼びおこした。人影のように見える。


 忍はその一点を凝視した。

 白い手をさしだし、幻影が笑う。



 ——いっしょに行こう?



 おどろいて見なおしたときには、夢はさめていた。

 それは陽光にてらされて、ほの暗い森のなかに浮きあがって見える大輪の黄色い花にすぎなかった。


 忍はシートにもたれて嘆息した。


 風間曹長が問いかけてくる。

「どうかなさいましたか?」


 忍は困惑を風間に悟られないよう苦心しなければならなかった。それほど、さきほどの幻影は真に迫って、妙にリアルだった。


「……いや、なんでもない」


 風間は何も言わなかった。


 そのあとは何事もなく、森のなかを進んでいった。


 森の端が明るんできたと思うと、目の前がひらけた。

 あぜ道や水路の整備された畑が広がっている。

 果樹園や柵のなかに家畜を放した牧場もある。大勢のカーキ色が働いている。


 医療品や機器類などの物資のほかは、ほとんど収容所内での自給自足なのだ。そのほうが食料を内地から送り続けるより、はるかに経済的だからだ。


 それにしても、あきれるほど牧歌的な風景だ。


 水田、麦畑、芋やカボチャ、レタスにトマト、パプリカ、ゴーヤ、さとうきびなどの畑。

 果樹園にはバナナ、パパイヤ、マンゴー、パイナップルなどの南国のフルーツ。


 レンガ造りの家畜小屋。

 群れになった牛や豚、羊、鳥。


 グループにわかれて作業するカーキ色たちの表情は、くったくがない。不謹慎なほどおおらかで、仲間どうし、じゃれあっていた。肩をくんだり、背中をたたきあっている。


 暑いせいもあるのだろうが、作業服の前ボタンを外し、肌を露出させていた。


 人間というよりケモノだなと、忍は不快に思った。

 こんな連中になれることなどあるのだろうか?


 収容者たちはホーバークラフトが走ってくるのを見ると、作業の手を止めてふりかえる。冷めた目でいちべつするだけの者もあるが、おおむねは好奇心まるだしだ。なかには、忍と目があうと笑いかけてくる者さえいる。


 風間がそれに気づいて声をかけてきた。


「連中、自分たちにあとがないことを自覚していますから、たいがいは従順です。が、大尉どのは夜半の一人歩きはひかえられたほうが無難かと思います。さしでがましいようですが、警棒はつねに携帯してください」


「体制に不満を持つ者が多いのか?」

「いえ、そうではなく……」


 風間は頭をかいて言葉をにごした。


 広大な農園の中央に、四角いケーキをいくつかに切りわけたように白い建物がならんでいた。


 九つのキューブ状の建物は高さ五十メートル、横幅十二、三メートル、奥行きもそんなものだろう。

 よくある地下シェルター式で、地上部分は外部への出入りに使われるていどだ。


 中心のキューブに案内され、なかへ入ると、とたんに忍の見なれた都市の姿になった。


 エントランスホールのまんなかに噴水が高く水をふきあげ、白い床に青白い陰影を落としている。人感センサーの照明。空調システム。いたるところにある監視カメラ。


 壁ぎわにならんで人間の命令を待っている球形のお手伝いロボット。

 風間曹長が一つに手をあてると、銀色のボールは、らせん状に電光を走らせ目をさました。


「ご命令ですか? ご主人さま」


 ボールから優しい女声が発せられる。


 電子音で充分だが、収容者は完全に男女別の収容所に収監されている。つまり、一つの施設には同性しか存在しない。

 このB3収容所は男だけだ。教官や管理官、研究者なども一人残らず男だ。お手伝いロボットくらいは女の声で話してほしいのだろう。


 と言っても、そのロボットは球形だ。


 ヒューマノイドのロボット——つまり、セクサロイドというやつは、病気や仕事の都合で生涯、妻帯できない成人男子のうち、ある一定以上の社会貢献度を持つ者のみが許諾される。


 今回の人事異動で、忍にはにわかにその権利があたえられた。ぜひとも資格申請して一体持っていくようにと、父は言った。

 忍は断乎、反対した。


(誰でもいいわけじゃない。ましてや機械なんて。好きな女の一人くらい、私にもいたさ。それが愛してはいけない人だったというだけだ)


 不倫は犯罪のなかでも、とくに罪が重い。


 結婚は両家の親が決めることであり、本人たちが勝手に進めてよいものではない。家柄、身分、二人の遺伝子配列まで、すべてが釣りあっていなければならない。


 何よりもまず国家のために、次世代をになう優良な子どもを残さなければならないのだ。


「忍。やはり、照日さまのことか? だから、一生を棒にふってまで、人のきらう収容所勤務など志願したのか?」


 口論に疲れて、そう言った父は、急にいくつも老けたように見えた。


「そなたには母の情愛を知らせずに来てしまった。せめて、幸福な結婚をしてくれることを願っていたのだが……」


 あのときの父の声が忘れられない。


 忍の物思いはボールのハウスキーパーに命じる風間曹長の声でさまされた。


「おまえを今後、こちらの九龍大尉どのの専用機とする。大尉どののご命令に従い、忠実にお仕えするように」

「承りました。クリュウ大尉どのの生体データを入力いたします」


 ボールの中央がピカリと光り、忍の全身を青い光でなめていく。外見の特徴、指紋、声紋、虹彩のパターン、レントゲン図、血液型、遺伝子情報、脳内と心臓に埋めこまれた生体反応プレートのナンバーなどを入力しているのだ。


 最後に脳内プレートの発する忍の脳波に周波数をチューニングし、収容所のどこにいても、忍の所在をキャッチできるように登録している。


「終了いたしました。クリュウ大尉どの。ただいまより、あなたさまがマスターです。どうぞ、ご命令ください」

「今のところないが、そうだな。では風間曹長にかわって私の荷物を持ってくれ」

「かしこまりました。荷物を載せてください」


 球形がひらいて、薄い円盤型になる。

 球形ロボットは変幻自在だ。

 風間がトランクを載せると、ふわふわ浮遊しながら、忍たちのあとをついてきた。


 エントランスホールから続く回廊の奥にエレベーターがあった。


「ここからさきは通行許可のある者しか通れません。大尉の許可は本部より通達のあった時点でおりています」


 エレベーターのドアは、忍と風間の脳波をキャッチして、自動でひらいた。


「所長のもとへ、おつれいたします」


 B3の所長は心理学者の篠山博士だ。

 博士は軍医でもあり、軍の階級は中佐である。

 植民星の領土をめぐる戦争では活躍したらしいが、本職の心理学の研究のために第一線をしりぞいたということだ。


 エレベーターが地下二十階で停止した。

 所長室の扉がひらく。

 篠山博士はファイルだらけの室内で、一人の男と話していた。カーキ色の服を着ているから、収容者だ。心理テストでもしているのだろうか。


「……夢を見るんです。いつも同じ夢です」


 顔色のさえない三十すぎくらいの男だ。疲れたような顔をしている以外、どこにでもいそうな、ごくふつうの男である。やや馬面だが、特徴はそれくらいしか見あたらない。


 だが、かるい神経症ていどの患者なら、異端レベルで言えば、ごく初期のEに該当する。レベルBのこの収容所になどいるわけがない。つまり、見ためではわからない異常があるのだ。


「夢かね。どんな夢か思いだせるかね?」

「明瞭に思いだせます」

「では、その夢を——いや、待った。風間曹長と……黒の軍服、青地に白ぬきの三本線の腕章。君が九龍くんか。しかしまた、これは……」


 博士はようやく、忍たちに気づいた。こちらを見ながら、ブツブツつぶやく。


 博士は六十までにはならないだろうが、頭髪は真っ白で、小太りで小男だった。大きな目がクルクル動いて子どもっぽいが、ときおり、への字に口をかみしめると、いかにも頑固そうである。とにかく精力的に見える。


 博士は足をふみならして忍の前まで来ると、百八十二センチの忍より二十センチは低い目線から見あげててきた。そして、頭のてっぺんからつまさきまで、しげしげとながめ、おおいに笑いだした。


 あまりにぶしつけだったので、彼が所長でなければ、忍は腹を立てていたところだ。これまで他人から容姿をほめられたことはあるが、笑われたことなど一度もなかった。


 それでも、いちおう敬礼はする。

 それが、礼儀だ。


「本日づけでB3に赴任しました、九龍忍であります。以後、よろしくお願いいたします」


 博士はさらに笑う。


「うんうん。わかるとも。しかし、こりゃ、政府も思いきった人選をしたものだなーー新島にいじま。君はこの書類に夢の内容を書いて、提出したまえ。今日はもう作業にもどっていい。風間くん。送ってやりたまえ」


 後半を新島という収容者や風間に命じる。


 風間につれられて、新島は外へ歩いていった。が、出がけに忍と目があったとき、首のつけねまで赤くなって、目をそらした。


 それを見て、ふいに博士は真剣な表情になる。


「君のような、ちょっと類を見ない美男の教官が来たんじゃ、植民星送りの囚人をいっきに増やしてしまうな。それでなくても同性だけの空間は、その種の病気をまんえんさせる悪環境だというのに」


 忍は返答につまった。やっと合点がいった。

 風間の忠告も、博士の失礼な注視も、すべて、そういうことだったのだ。


「……あの男、異常性愛者でしたか」


「うむ。もとより、その病で送られてくる者もいるが、こうした環境は、元来は健全な異性愛者まで代償行為としての同性愛におちいりやすい。収容者の三割は、この傾向にあると考えられる。少なく見積もってだがね」


 忍は絶えがたい屈辱を味わった。


 異常性愛は社会の害毒として嫌悪される。同性愛、近親相姦、死姦、フェチズム、サディズム、マゾヒズム。そうした異常性愛者は蛇蝎だかつのごとく嫌われ、バレれば即時、収容所送りだ。


 そんな者の性愛の対象にされるだけでも、世間から白い目で見られるのだ。


「君はターゲットにされやすい。気をつけたまえ」


 博士に言われ、忍は背筋が冷たくなった。

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