休みが明けました、さあ会議だ。
夏季休み明け初日早朝の2年男子寮歓談室。
レオが話があるんだよね〜と、あのゆるい感じで俺たちを集めた。
……あれかな、多分……休み前に言ってた『問題』だろうな。
みんなに相談したいって言ってた……し…………って!
「⁉︎」
アルトとケリーも⁉︎
ええ⁉︎ ここ2年の男子寮だよ⁉︎ なんで1年のアルトとケリーが⁉︎
例によって呼ばれてないのかハミュエラ! だよね!
「えーと、あとはライナスとエディンだけかな?」
「全く、公爵家の跡取りが殿下よりも遅いとは……」
「そういうお前はなにやってるんだ、ケリー?」
思わず手を掴む。
にっこり笑顔で「は? お茶淹れてただけだけど?」と返してくるがいやいや……。
「それは俺の仕事だよなぁ⁉︎」
「だってお前俺より来るの遅いんだもん。あ、スコーン焼いてきましたけど食べます?」
「俺の仕事!」
「ケ、ケリーってヴィニーみたいな事が出来るんだね? あ、僕もクッキー焼いてみたんだー」
「レオ様がクッキー⁉︎ レオ様、本当にお料理始められたんですか⁉︎」
「うん。はい、スティーブも食べてみて〜」
「え、あ……い、頂きます……あ、美味しいです……」
完全に俺の立ち位置奪いにきている、だと⁉︎
おのれ! レオといいケリーといい、なんなんだこいつらは⁉︎
伯爵家跡取りと次期国王がなにやってんのなにやってんの!
アルトが居心地悪そうに隅っこに引きこもる中、プチお茶会みたいになってきた歓談室。
……というか、なにこれ、女子会?
お菓子持ち寄ってお茶するとか女子会か何かみたいになってるよ?
待って、なにここの王族貴族、女子力高すぎない?
え? おかしいと思うの俺だけ?
「おはようございます!」
「おは、は? なんだこの状況」
「おはようございます。良かった、やはりこの空気に疑問があるのは俺だけじゃなかったんですね」
「そりゃ……え?」
2年の公爵家子息も遅れて登場。
まあ、時間はほぼぴったりなんだけどな。
で。
「戦巫女の件なんだけどね、異界から召喚する事になりそうなんだよね」
「い……」
「異界……? 異界って、異世界か? は、はあ?」
席に座り、レオのクッキーを摘んでいたライナス様とエディンが驚いた声を出す。
ま、まあ、もちろんスティーブン様もケリーも驚いた顔をしている。
無表情なのはこの世界がゲームの世界だと知っていて、展開の予想を付けていた俺と……そして何故かアルト。
……あんまり驚いていない?
予想してたって事、か?
「うーん、まあ、順序立てて話すと……」
とケリーの淹れた茶を啜りながらレオが言うに、以前ヘンリエッタ嬢がレオに『ティターニアの悪戯』の件を話した事がやはり発端。
それにより、エメリエラが異世界から戦巫女を召喚出来ると言い出したらしい。
レオは困惑しながらもエメリエラとその件について対話を重ねた結果、この世界で探すより異世界からエメリエラ自身が最も『適した人物』を召喚する方が確実、と分かった。
まあ、そりゃそうなんだろうけど。
だがこの話をレオは魔法研究所にもバルニール陛下にも、リセッタ宰相にもまだしていない。
俺たちに話したのが初めてだと言う。
「……そもそも、レオ……異世界から人を召喚なんて出来るのか?」
「出来るみたい。問題は召喚した女の子が、戦巫女という立場を受け入れてくれるか、かな。それから帰す事も……エメリエラ曰く『愛の力があれば可能なのだわ』らしいんだけど、正直要領を得ないというか……確定的ではないんだよね……」
レオの声真似が段々可愛くなっているのはヤバくないか。
ん? あれ? これは俺の兄貴的心理が働いてそう見えるのか?
いや、そうじゃなくて。
「成る程、オレが呼ばれたのはそういう訳ですか」
「うん、結婚式にエメリエラに愛を誓う、という風習はセントラルを中心に広まりつつある。実際その事でエメは「存在が安定したのだわ」って言ってるんだ。でも、なんというか、戦巫女の召喚と送還は話が違う。『ティターニアの悪戯』の事とか、僕なりに調べてみたんだけど王家の文献にもそれほど多く載っていなかったんだよね。その辺りは君の方が詳しそうかなって、思ったんだけど……」
「え、えーと、あの、レオ様……『ティターニアの悪戯』は御伽噺では……」
「ううん。スティーブ、君がよく読む恋愛小説の中に使われているのは大昔、実際に『ティターニアの悪戯』に遭ってこの世界に来た人間の話が題材になっている事が多いんだよ。事実、王家の始祖は『ティターニアの悪戯』に遭って魔力と『記憶継承』の恩恵を受けるに至った者だと言われてるんだ」
「そ、そうだったのですか⁉︎」
成る程、アルトが居るのは女神関係だったからか。
確かに女神や宗教に関してこいつ以上に頼りになるやつはいないかも。
レオ、実に的確な人選だ。
「……『ティターニアの悪戯』ですか、確かに……女神たちの『悪戯』は異世界から人をこの世界に落っことす、というのが定番のようですね……。その手の文献は各地方に残っていると読んだことがあります」
「え、なんだそれ……タチ悪くないですか?」
「ああ、タチが悪いんだ。女神たちにとってしてみれば本当に『悪戯』のつもりらしい。異世界から人を落としてこの世界に閉じ込める。……だから、稀にこの世界に、異世界の物や人の痕跡が残るそうだ」
「……」
アルトがケリーと普通に会話しとる……なにあれ謎の感動。
……と、いうかそれって、俺の『鈴緒丸』の……。
確か異世界から来た剣士の持ち物だった、とか……う、うええ!
でも、物や……人も?
そうだよな、だって『鈴緒丸』は元々持っていた剣士がいた。
異世界から来た剣士……。
…………まさか、俺も……『ティターニアの悪戯』に遭って……い、いやぁ、まさかな?
「と、いうわけで協力してもらうのに異世界から来てもらっておきながら帰れないのに戦争には協力しろとか最低じゃない? って僕は思うんだよね」
…………最低だな、それは確かに……。
……う、うわあ、改めて言われると戦巫女の立場からしたら確かに迷惑以外の何物でもないやつだ〜!
ゲームだから普通に受け入れてたけど、実際に自分がその立場になったら絶望しかないな!
な、なにかなかったっけ、ネタバレに、えーと、戦巫女が元の世界に帰れる方法的な……うーん、うーん……。
だめだ、すぐには思い出せそうにない。
俺が興味あったのお嬢様のエンディングだけだもん。
「た、確かに……。せめてお帰り頂ける安心感は必要ですよね」
「……しかし戦争に協力させるのであれば帰れないという覚悟もしてもらった方がいいんじゃないか?」
「エ、エディン、最低です! なんて事を言うんですか!」
「協力してもらうのなら巫女殿の御身は必ず守ると確約すべきだろう! ディリエアス!」
わいのわいの。
2年生組は盛り上がってるが、1年2人は冷静にそれを眺めている。
こ、この温度差なに?
「つまり殿下は戦巫女を召喚したいけど、帰す方法が確立していないから反対、ということですか?」
「ううん、ケリー……僕は、戦巫女には来てもらいたい。巫女殿がいなければ戦争は勝てないと思う」
「! ……レオ様……」
レオ……。
……やはり、そう、だよな……。
魔法を使うエルフ、妖精、人魚(女)を相手に身体能力で獣人に劣る人間が勝つ方法。
戦巫女の治癒の力と『従者石』でエメリエラから魔法の力を借り受け使う……これしか……。
「陛下に話せばきっとすぐに戦巫女の召喚を命じられるだろう。……でも、どんな娘が来るのか分からない。戦いを知らない娘の可能性の方が高いだろうね。……そんな娘を巻き込んでも……いいのかなって……」
「……成る程。ですがそれならば既に答えは出ているのでは? この国の王太子として、貴方は戦巫女を次の戦争に必要とお考えなのでしょう? そこは陛下と同意見と、今しがた仰いましたよね。……ならば躊躇している時間はないと思います。帰る方法がないのなら、これから見つければ良い」
「ケリー……」
ケリー、な、なんというズバッちょと……。
こういうところお嬢様に似たのか?
「俺もリースの意見に賛成だな。今はまだ分からなくとも、召喚後に送還方法が見つかれば帰れるという事だろう? 戦争までもう2年を切っている。争い事を知らぬ娘が来るのなら、最低限学ぶ時間は必要になる。……それこそ、時間はない」
「う、うむ……せっかく魔法を使える方法が分かったのに要となる巫女殿が居ないのは致命的だ。……我々の世代で人間族を再び隷属の500年にするわけにはいかない。……巫女殿には、ご無理を強いることになるかもしれないが……」
「ア、アルト様、その『ティターニアの悪戯』で元の世界に戻った方はいないのですか?」
「『ティターニアの悪戯』は資料そのものが大変に少ないんです。これから調べてみますが……」
「魔法研究所の方々にもご協力いただけば良いんではないんですか? 今暇なのでしょう?」
「そ、そうだね……」
ケリー棘が酷い。
レオが困った顔になってるじゃないか。
……まあ、魔法研究所の件は色々あるからなぁ。
それに、休み中にニコライに聞いたあの話……そうだな、今しておくか。
「あの、レオハール様……巫女殿の件はとりあえず陛下たちに相談されてみてはいかがですか?」
100パーGOが出るんだろうけど。
こちらとしても、巫女には来てもらわないと……。
ゲームの開始は俺としても不安ではあるが、戦争で死ぬのはゴメンだ。
助かる可能性は高いに限る。
俺はお嬢様にずーっとお仕えするって決めてるんだから!
「……そうだよね……。……、……うん、そうだね」
「…………」
レオの顔が変わったな。
……“決まった”か。
「それはそれとして俺から報告がいくつか」
「え、このタイミングで?」
「はい、戦争の話ですから。……例の亜人たちの剣に関してです。夏季休み中にクレイからの伝言を預かりました。『武器の件、職人長がようやく折れた。こちらの準備は整えておくので王子にその旨、伝えてほしい』だ、そうです」
「!」
「亜人……?」
あ、そうか……アルトは亜人たちと協力する件知らないんだっけ。
ケリーは年始のあの時、居たから知ってるんだが……。
まあ、アルトになら話しても問題ないだろう。
と、いうか…………、……ハワード家の話、アルトとライナス様にするの……キツイな……。
「亜人族と協力するそうですよ、今回の戦争」
「な、なんだと⁉︎ 彼らに接触出来るのか⁉︎」
「……。なんで興味津々なんですか、フェフトリー様……」
「彼らには独自の宗教観があると本で読んだ事がある! 人間族には親みの少ないイシュタリア教や武神族を崇める獣人族の習慣があるらしいのだ! 是非話を聞いてみたい!」
「…………、……ブ、ブレませんね……」
ケリーが引くのが分かるが、なんか、なんだろう……なんというか……ア、アルト……俺の今さっきの不安を少しで良いから返せ……。
クレイ、どうやらうちの国の公爵家ご子息の1人はお前らに良い意味で興味津々だぞ……。
「そっか、じゃあその件も陛下に話しておくよ。日取りを決める前にいくつか話し合いたいし、出来れば事前に陛下へクレイを紹介しておきたいな」
「……」
「? なぁに、ヴィニー?」
「あ、ああ、いや……王家なら亜人と関わりをとうに持っていても不思議じゃないと思って……。いや、俺から連絡しておきます」
「なに⁉︎ 執事、お前が接点だったのか⁉︎ オレにも紹介しろ!」
「はいはいまた今度。……で、次の報告なんですが」
「うん?」
はあー……気が重い。
思わず溜息が出る。
エディンとライナス様に、変な顔をされてしまう。
いや、多分、聞けばあんたらも同じ溜息が出るぜ……。
それとも、公爵家は把握しているだろうか……?
「……サウス区の事なのですが……ご存知ですか?」
「サウス区? ……えーと、なに? 食糧の話? 戦後防衛の話?」
「…………。全く見当もつかない、と?」
「え、あ、うん? ごめん?」
「いえ、なら……」
そうか、全く、か。
レオの耳には入っていない?
いや、スティーブン様やライナス様も頭にハテナマークが飛んでるな。
唯一眼を細めたのはエディンとケリーだ。
「亜人の情報によると、亜人の一部勢力がサウス区に取り入っているそうです。クレイたちとは思想の違う勢力で、亜人のみの国を作らんとしている勢力……サウス区の公爵家はそれを受け入れている、と」
「…………。……、えーと……、……それはなんというか……」
レオが言わんとしている事を察してライナス様を横目で見る。
一気に表情が険しくなるライナス様と、明らかに動揺するアルト。
「サウス区、ね。“例のお家”も一枚噛んでいそうだな?」
「……ああ、そのようだな」
「ほお……」
柔らかく微笑むケリーの言葉に、俺が同意すると今度はエディンが微笑む。
そりゃあ色気たっぷりに……。
いやいや、怖い怖い……こいつら怖いって笑顔が怖いって!
「……噂はありましたが……まさかサウス区の領主の家まで、ですか……? そんな……これは、レオ様……」
「す、少し話が大きくなったね……、…………。そうか…うん、まあ……あの土地では、仕方がない部分もあるね」
「で、ですが!」
「いや、分かっている。大丈夫だよライナス。君がまず落ち着いて」
「……っ!」
立ち上がったライナス様に、レオが制止を入れる。
多分、ここまで言うとレオたちにも大体分かってきたんだろう。
ただ、やはり身内の事だ。
アルトとライナス様の動揺は大きい。
……普通、身内のいる前でする話ではないからな〜……。
でも、俺らはライナス様の事もアルトの事も信じてるよ。
何よりその反応が答えだ。
それに、もしこの事を知って身内の味方をするんなら……。
「……その件も了解したよ。一応こちらでも探ってみる……。アンドレイ辺りは勘付いていそうだし、ね」
「では次の件」
「うっ……ま、まだあるの」
「この流れならお分り頂けるでしょう? ……セントラル南の領主様の件ですよ。ご当主様含め、ご子息ご息女、魔法研究所と学園の事……」
「ああ、それね」
と、嫌そうな顔のレオ。
腕を組んで溜息……と、いう事は……。
ちらりとエディンを見るとスティーブン様と顔を見合わせている。
もちろん「あの件ね」みたいな顔をしているのでやはりこの2人は知っているのか。
というか困惑顔はライナス様だけだな。
アルトはまだハワードショックから戻ってきてない感じ。
「…………」
「と、いうか……どうしました?」
「いや、うん、確かにこの件も話し合いたいと思っていた」
レオに視線を戻すとゲン◯ウポーズで負のオーラを放っていた。
め、珍しいな? どうしたんだ?
「実は夏季休みの最中に動きがあったんです」
「え、何があったんですか?」
切り出したのはスティーブン様。
俺たちの知らない間に動き?
レオがここまであからさまに落ち込むのは珍しい。
何をしくさりやがったオークランド家。
「その前に一つ整理しておくぞ。今現在、レオの婚約者候補で有力候補として名前が挙がっているのはセントラル領主家の息女4名。東区、リース家のローナ。西区、リエラフィース家のヘンリエッタ嬢。南区、オークランド家のアリエナ嬢。北区、オルコット家のフィーリア嬢……。まあ、フィーリア嬢はまだ8歳、実質的に“ナシ”と言われている」
「本物のマリアンヌ姫が見つかった場合は話が変わりますが、とりあえず最有力はローナ様です。……なのですが……」
「新しく正妃となったルティナ妃はあえて今の所どの令嬢をレオの婚約者に推す、という事はしていない。はい、ここまでで質問がある奴」
ふるふる、と首を振る俺とケリー。
アルトはまだ考え込んでいるし、レオは目を閉じて無我の境地のような状態……っておいぃ、本当に何があった⁉︎
不穏! 不穏だよその態度!
ライナス様は……うん、ギリついてこれてる感。
「ルティナ妃はオークランド侯爵の姉君にあたります。その事をオークランド侯爵が持ち出して、陛下にアリエナ様をごり押ししていたんです」
「陛下も微妙に引き気味でな……『王誕祭』の時まではレオに選ばせるの一点張りで逃げていたんだ」
……あ、あの王様やりそうな……。
レオに任せる=面倒くさいから本人に任せまーすオレ知ーらないって事かーい!
「でも『王誕祭』の日に、マーシャがパーティーに参加したでしょう? ……その時に、オークランド家次男のサクレット様が…………マーシャに一目惚れをしたらしいんですよ……」
「……………………」
「……………………」
ほ……………………ほほう?
「……と、いう実にクッソ面倒臭い事になっている。サクレット・オークランドは現在目下マーシャの事を調査中。たどり着くのにさほど時間はかからんだろう。因みにサクレット・オークランドは現在14歳。つまりマーシャと同い歳。年齢的にジャストフィットだ。最悪だろう?」
「…………さ、最悪だなぁ……」
「それでね、ヴィニー……まさかマーシャが巻き込まれる事になるとは、まあ、普通に思わなかったんだけどさ……ほら、あの件とかあるでしょう? 深く突っ込んで調べられたらアレだし、最悪の事を考えると……最悪なんだよ」
「最悪だな」
レオのオブラートが酷いけど、言いたい事はよーく分かりました。
多分別にアルトが居るからとかではない、動揺のオブラートだろう。
それにしたって酷いけど。
……マ、マジか。
オークランド家という厄介な事この上ない家の次男坊がマーシャに一目惚れだとぉ⁉︎
しかもマーシャの事を調べてる!
マーシャが万が一、本物のマリアンヌだと知られれば……オークランド家にとってウッハウッハな展開という事ではないかぁぁぁ!
そう、つまり……最悪アリエナ嬢がレオに振られても、次男がマーシャを射止めれば王家に食い込めて正直どっちでも美味しいよね☆ ……で、ある。
「……それは…………非ッッッ常に不本意極まりないですが……そうなるとディリエアス様がマーシャを口説き始めたのはある意味良かった事になりますね……」
「そうなんですよね。まさかこんな事になるとは思いませんでしたけど……」
ケリー、表情が消えたな。
エディンをじとりと睨みながらスティーブン様も肩を落とす。
確かに……マーシャにはエディンが“言い寄っている”状況だ。
セントラル領主侯爵家の次男坊とはいえ、セントラル公爵家のエディンに食ってかかれる度胸はないだろう。
ん、んんん……ケリーの言う通り、非ッッッ常に不本意だが……なんというタイミング……。
「……なんかお前って虫除けみたいな役回りばっかりだな?」
「なんとなく自分でもそんな気はしていたが直接言われると腹が立つな」
そ、損な役回りになってるな、エディン……でも今回ばかりはちょっとサンキュー……。
「それにマーシャの事はちゃんと口説くから安心しろ」
「出来るわけあるかふざけんなよ。デート絶対邪魔してやるからな」
「宣言するなシスコン」
「え? デート⁉︎ なにそれ僕聞いてないんだけど⁉︎」
「お前もしゃしゃり出てくるなややこしくなる。劇を見に行くだけだ、変な事はしないと誓うからとりあえず今は黙っておけ」
「えぇ〜⁉︎」
……確かにレオが混ざってくるといささか面倒くさい。
しかしとりあえず……。
「安心しろ、レオ。俺が必ず邪魔してやる!」
「ヴィニー…………、……う、うぅん……」
「レオ様……」
複雑そうだなぁ!
「まあ、デート云々は後回しにして……オークランド家の問題を整理するとつまりこういう事ですね?」
と、ケリーが人差し指を立てる。
だが正直デートの話は今一番重要ではないか?
オークランド家とか後回しで良くない?
「一つ、謀反疑惑。二つ、魔法研究所への過度な介入。三つ、王家への婚約強要問題。四つ、学園内でのご子息ご息女の振る舞い」
「? 学園内でのご子息ご息女の振る舞い?」
「あ、ライナス様はご存知ないのですね……。3年生のダドリー・オークランド様が生徒会長の婚約者に手を出していたり、多くの身分の低い令嬢を侍らせて遊びまわっているのですよ」
「な、なんだと⁉︎」
「ついでにうちの義姉様に関して悪い噂を流していたのはアリエナ・オークランド嬢でした。まあ、恋敵では無理もないのでしょうがね」
「ははは、女性らしい姑息で陰湿な戦法だな」
「本当だね」
にこりと笑うケリーに、同意して微笑むエディンとレオ。
くっ、なんか完全に話がオークランド家になってしまった。
まあいい、デート当日覚えていろよ!
「かなり上手く立ち回って“遊んで”おられるようでしたが……ふふふ、筒抜けなんですよね」
「お、おお……?」
……因みに現生徒会長はスティーブン様の事大好きだったアスレイ・マクレラン様から引き継いだ、同じくスティーブン様のお父様、宰相の補佐をしている方のご子息。
つまりまあ、スティーブン様と縁深い方なのだ。
その婚約者を弄んでいるという事は……言わなくてもお分かりいただけるだろう。
多分この場でこの意味が分かってないのはライナス様だけだ。
「学期も新しくなりましたし、生徒会役員の1人として学園を健やかに穏やかにするのは必要な事だと思っていたのですが……ねぇ、レオ様?」
「そうだね、僕もそう思うよ〜。……正直困っていたんだ……魔法研究所や婚約者の事もあったから……。……でもなんだろう、ヴィニーの話を聞いたらなんとかなりそうな気がしてきたね?」
「そうだな。これはひとまとめにして片付けてしまえそうだな?」
「おや、先輩方もそう思われましたか? 実は私もそうご提案したかったんですよ。ちょっと“良い考え”を思いついたのですが、発言してもよろしいでしょうか?」
「え? なになに?」
「まあ、ケリー様、今更そのような遠慮いりませんよ。是非お聞かせください!」
「俺も興味がある。話せ、リース」
「ええ、実はーーー」
「……………………ヴィンセント」
「はい、なんですかライナス様」
「お茶のお代わりを俺とアルトに貰えないだろうか……」
「……すぐお淹れしますね。あ、なんならデート妨害に関してご相談しても?」
「あ、ああ……俺で力になれるか……分からないが……」
そうですね。
でも、俺から言えるのはこれだけだ。
ライナス様、諦めないでください。
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