第2話 日本のモナコ

おかあさんそれは無いよ。


熱海は日本のモナコだって言う人がいるみたいよ。という母の言葉に俺はそう言った。

ニューヨークに行って当分会えなくなるのなら少し遊びにおいで。という母の言葉で熱海に来ていた時のことだ。


海外に行くなら、荷物置き場に良さそうな物件あるけど見に行かない?

リビングでゆっくりくつろいでいた俺に母はそう言った。

全く興味の無さそうな返事をする俺に母は、話を続けた。

いい物件よ、散歩がてら見に行こう。





街全体が汚くない? そんな俺の言葉を受け流し母は目的の物件に俺を案内した。


ここよ。

そう母に言われた方を見ると、そこにはボロボロの物件が隣の建物と連結して建っていた。


何これ、ヤバくない、お化け屋敷かゴミ屋敷みたいじゃん。

やはり俺の言葉は、母には届かない様だ。


母は、自信満々にまるで不動産屋の様に物件の説明を始めた。

ここは昔ラーメン屋だかステーキ屋だった物件で、お店を閉めてから10年以上経っている物件よ。駅前だしいいと思うの。


そう説明する母に素っ気無い返事を返しながら振り返ると、そこには来宮と言う小さな駅が有った。


確かに駅前だけど、何で店なの?荷物置き場なら倉庫でいいじゃん。

そんな俺の言葉はやはり母には届かない様子だ。



海外行ってる間は中に荷物置いて、外は自動販売機設置しても良いし、人に貸したって良いじゃない、ねえ。


いつから考えていたのか知らないが、プランがある様子だった。


貸すって何?又貸し?

この質問には即答だった。


買うのよ。売り物件、売店舗よ。

嬉しそうに、しかも何故だが自慢げだった。


金は?金無いよ、と言う俺に対して残念そうな顔をしながら、物件の価格が850万円であること、価格は1000万円から最近価格が下がった事などひと通り説明をした。


その説明を聞いている時に少し不思議な感覚が俺の周りを漂っているように感じた。

言葉にで例えると、いいよ〜いいよ〜 パワーあるよ。こんな感じだった。俺はそんな不思議な感覚に対しても、だから金無いよと言いたくなったがそこは我慢し、気にしない様にした。






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