第三五話 リーフの役目
誰もが惚けた様に、ヘリムの話に聞き入っていた。
「で、その魔法陣はまだ消してはいないという事ですか?」
「あぁ。そんな暇がなかった。ガッド達にも話し、少し手伝ってもらわないといけなかったし、作業の最中にリーフに何かあれば大変だからな」
ダミアンの質問に、ちらっとリーフを見てヘリムは答えた。
リーフは、何故自分がヘリムのマスターになったかはわかった。でも何故リボンをほどけたか――リボンの封印を解いてしまったかわからないでいた。
ヘリムの前マスターと同じ想いを自分が持っていたとは、思えなかったからだ。
「今更だが、別にリボンをほどける者を探さずとも、受け継いでいた王族の者がなさった方が確実だと思うのだが。それは、思いつかなかったのか?」
「王族とはいえ、悪しき思いを抱かないとも限らない。何せ自分達は、召喚の能力も魔力の能力も封印していないからな。だからルキーノは、あえてそれを避けた。そして俺に、そういう者が出ない様にと、見張る事も命じられた」
ゴーチェの問いに、今度はガッド達を見てヘリムは答えた。
確かにルキーノ達の想いが、代々受け継がれるとは限らない。
「まさか、監視役でもあったとはな。文献には、魔法陣を消す魔獣が現れるまで、城の地下にある魔法陣を隠し通すよう書いてあった。実はこの魔法陣が何であるかまでは、書かれていなかった」
「当たり前だ。知ってしまえば、俺と契約出来る者を探し出し、俺を欺きあの召喚の魔法陣を使う可能性があるからな。だから伏せた。本心などわからないからな」
ガッドの言葉に、ヘリムはそう返した。
「なるほど。それで、一階の一部が侵入禁止だったのか。そこから地下に……」
ゴーチェが納得と頷く。
しかしまさかリーフが選ばれるとは、皆驚いていた。
魔術師のマスターである召喚師は、リボンの役割を知っていたのだろう。あの魔法使いを使って召喚師をさらい、リボンをほどける召喚師を探していた!
ヘリムが魔獣に戻ったのを知り、リーフがマスターだと気が付いた。だからヘリムを殺さず、リーフをさらおうとした。
そして、リーフに扉を出現させようとした。
一応つじつまはあう。
ただ、その後どうするつもりだったかは不明だ。魔獣は、複数を同時に召喚出来ないとされている。
もし複数出来るのなら、そのままリーフが召喚してしまう可能性もある。
そう考えると、やはり違うのではないかと思うも、今はそれしか考えが浮かなかった。
リーフも流れとして納得するも、自分が選ばれた事に関しては納得がいかなかった。
「リーフ。これから魔法陣を消しに行く。君には、魔力を注ぎ込む手助けをしてほしい」
「え! 僕が!?」
「他に誰が出来る? 俺と君の魔力は共有している。君も行えば、倍の速さで終わる」
「でも……」
リーフは怖かった。
そんな大行事を行える自信がなどない。それに魔力を送り込むなんてやった事がなかった。
「ヘリムよ。それに私がついていっても宜しいか? リーフの補助をしようと思うのだが……」
ダミアンがそうヘリムに聞いた。
リーフが何を考えているのか、ダミアンにはわかったのだ。
「そうだな。お願いしよう」
「あの、私もついていって宜しいでしょうか? 邪魔はしませんので」
驚く事にアージェも行くと言い出した。
アージェも心配だったのだろう。そう言うと、ヘリムは頷いた。
「そうだな。私達も行く事だし、ここにいる全員で見守ってはどうだ」
驚く提案をガッドがする。
それはそれで、緊張するとリーフは思うも全員賛成し、これから向かう事になった。
(何でこんな事に……)
リーフは、不安と緊張で手が震える程だった。
「大丈夫ですか?」
「す、凄く緊張して、はきそうです。僕、魔法陣を消す事もした事ないし、間違って扉を出してしまうんじゃないかと不安で」
「大丈夫です。あなた一人ではありません」
アージェは、震えるリーフの手を握った。
リーフは、驚くき震えは止まったが、何故か心臓のドキドキがなり出す。
「あの……手を……」
「扉は出現する事はありません。魔術を発動させるのとは違い、口に出して呼び出さなければ出現しないのです。それに自分の名を名乗り求めなければ、召喚はされません」
「そうなんですか?」
アージェは頷く。
リーフは、ホッとした。少なくとも間違って呼び出す事はないのだから。
でも気になる事があった。
「あの、アージェさんが召喚した時、ベランジェとか言っていたような気がするんだけど……」
「その事ですか。それが私の本当の名です。十歳になって召喚師を選んだ時に、名を与えられます。何故そうしているかは、わかりませんが……」
「え! 知らなかった! じゃ皆、自分の名前じゃないんだ!」
「そうなりますね」
そんなしきたりもあったのかと、リーフは驚く。
「では、向かおう」
ガッドが言うと、皆一階へ移動を始める。そして地下に降りる階段へ辿り着いた。その前に扉がある。
その扉には、二つの窪みがあった。そこにガッドとロイがはめていた、ブレスレッドを嵌めると、ガチャリと音が鳴った。
二つのブレスレッドが、扉の鍵になっていた!
ガッドが扉を押すと、スーッと開く。そして階段の壁をガッドが触れると、地下の壁と天井がフワッと明るくなった。
ガッドが手を離した所を見れば、そこにはオーブのような物が埋め込まれていた。魔力を流し込むと、明るくなるように細工がしてあったのだ。
ガットが階段を下り始めると、ロイ、ヘリム、ゴーチェ、ダミアン、ウリッセ、オルソ、そしてリーフにアージェ、魔獣のスクランと降りて行く。
階段は十段もなく、地下は他の階と違い天井が低かった。手を伸ばせば届きそうだ。だが、だだっ広いだけだが広さはあった。
少し奥に進み、ガッドは歩みを止める。そして目の前にある魔法陣を見つめた。
他の者もこれが話していた魔法陣かと驚いた。家一軒分の広さもあろう魔法陣の大きさ。聞いてはいたものの、その大きさに驚く。
「よく描いたものだ……」
ダミアンがボソッと呟く。やや声は呆れた感じだ。
「いやぁ、ご苦労さま。開けてくれて助かった」
声が聞こえ全員振り向いた。
驚く者達が立っていた!
「「「シリル!」」」
オルソ、アージェそして、リーフが声を揃え叫んだ。
シリルは、あの魔術師と一緒に立っていた!
「まさかシリルがマスターって事はないよな?」
「そんなはずはありません! 団長だって立ち会ったではありませんか!」
ゴーチェが二人を見ていうも、アージェが否定する。
儀式を受けていなければ、シリルがと言う可能性もあった。
だがアージェが言う通り、二年前に試験を受ける前に儀式を行った。それは紛れもない事実。
では一緒にいるのは、仲間だからなのか?
そういう疑問で皆、見ていた。
「これって、もしかして……まだ術がかかった状態のままなのでは」
アージェが言う。
シリルは、ジッとこちらを見ている。その表情は無表情だ。
やはり、シリルを手放したのではなく、送り込んでいたのだった!
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