第一二話 襲撃
リーフは、ぼんやりと流れゆく風景を眺めていた。
どうしてこうなったのだろうか。
あの張り紙にさえ気づかなければ、違う仕事をして無事に村に帰れたのではないか。
いやその前に、村から出なければ……けど魔術師証を取らなければ生活していけなかった。
(どうすれば、よかったんだろう)
考えれば考える程、リーフはわからなくなった。
チラッと、前に座る三人を見る。
目の前に座るアージェは、リーフ同様に景色を眺め、ヘリムは腕を組み、目を閉じている。
フランクは、そんな二人を眺めていた。
(そう言えば、魔獣の管轄は騎士団なのだろうか?)
リーフには、魔術師団が取り仕切るイメージがあった。
アージェが関わったから騎士団になったのか。
そこで、ふと凄く不思議な疑問が湧いて、リーフはヘリムを見た。
(魔獣が人の姿なのには、誰も疑問を持っていなかった……)
魔獣という名からすれば、獣のイメージではないか。
何故、人の姿で驚かないのだろうか。
彼らにしたらそういうのは、些細な問題なのかもしれない。
犬が犬以外なものになった。だから魔獣で間違いないという事なのだろう。
そうリーフは、思う事にした。
リーフからしたら人間になったのだから、魔獣ではなく人間が犬にされていたと思うのではないかと、首を傾げる事だったが。
裏通りは森の中だった。つまりは、街を囲う森林を走っていた。
地面は土。石畳よりぼこぼしているので、結構揺れる。だがリーフは今はそんな事は、気にならなかった。
これからどうなるのか、そこに意識が行っていたからだ。
暫くすると、風景が変わる。森林を抜けた。
薄暗闇から明るい場所に出た為、リーフは目を細めた。そこに赤い物体が見える。
なんだろうかと目を開けよく見ると、それは大きな火の玉だった!
「わー!」
驚いたリーフは、悲鳴を上げ隣に座るオルソの体に抱き着く。
同じ方向の外を見ていたアージェは立ち上がり走っている中、馬車の扉を開け叫ぶ!
「止めて!」
馬車は、急停車する。
アージェは降りると、ポケットから何かを取り出すと、火の玉に向けて投げた。
それは水となり、火の玉に当たるもジュッと言って蒸発した。
気づくと、リーフとヘリム以外は、外に出ていた。
リーフは、そっと開いている扉から外の様子を伺うと、火の玉に向けて数個の水の玉が飛んでいた。多分、三人が投げたものだろう。
火の玉は、小さくなったがもう、直前まで迫っている!
「この大きさなら……」
アージェはそう呟き、剣を抜いた。
そして火の玉を真っ二つに切り裂いた!
驚く事に、火の玉はその場で消滅したのだ!
「え? なんで?」
剣で火の玉が真っ二つのも驚いたが、消滅した事にリーフは凄く驚いた。
「なんで、ではありません! あなた魔術師でしょう! 怖がってブルブル震えているだけなんて! 恥を知りなさい!」
「ごめんなさい……」
アージェからガツンと言われ、リーフは項垂れる。いう事はもっともだった。
今日、魔術師証を取得したとはいえ、魔術は元から使えるのだ。
ただ普段、火を見ても恐怖心を感じた事はなかったが、あの火の玉を見た途端、恐怖心が湧き上がって来たのだ。
「まあ、そんなにカリカリするな」
「そうは言いますが、彼がきちんと対応していれば、私達が出るまでもなかったのですよ! 彼は今日取得したとはいえ、魔術師証を持っているのですよ!」
オルソがなだめるもアージェの怒りは静まらない。
「皆さん、危ない!」
言い争いをしていると突然声が聞こえ振り向けば、馬車の正面に人が浮いていた!
そして、その者が放ったと思われる氷の刃が、外に出ていた三人に降り注ぐ!
迫りくる氷の刃にフランクも剣を抜いた!
「オルソさん!」
アージェに呼ばれても彼は、硬直して動かない! 慌ててアージェが、オルソの前に出た。
そして炎の玉同様、切り裂き消滅させた!
勿論、フランクも同様に切り裂いて、何を逃れた。
「シリル……」
「しっかりして下さい! 死にたいのですか!」
アージェが振り向かず、後ろにいるオルソに叫ぶ。
リーフは、オルソが呟いた言葉に驚き、馬車の外に出た。
宙に浮いていたのは、オルソが言ったように、二年前より少し大人びたシリルだった!
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