やりたい事

俺は今、初めに召喚された王都に1番近い森、深淵の森にいる。


なんとなくここに来た。


ダンジョンを攻略して1ヶ月経った。


「あー。なんか飽きたな。」


俺はいろんな場所に行き、いろんな食べ物を食べまくった。

なるべく人との交流は避けながら。


『まさか1ヶ月で飽きてしまうとは思いませんでした。』


まぁ、俺も思っていなかったよ。


『マスター。食べ歩きしかしてないですよ。』


俺は日本にいた頃は異世界に行ったら強くなるために修行したり、冒険者になっていろんな魔物を討伐したり、可愛い人と付き合ったりなど、そんな妄想をしていた。


だが現実は、裏切られ奴隷にされた事で人と関わる事をやめた。そしてある日突然テンコ曰く俺は最強になった。


人との関わりをやめたので可愛い人と付き合うということはなくなった。修行をするのもなくなった。いろんな魔物を討伐するというのも全て一瞬で終わるからつまらないのでなくなった。


以上の結果やりたいことはもう無いな。


『マスター。いろんな人との交流をした方が楽しいと思いますよ。』


まぁそうなんだろうけど。


『今のマスターなら裏切られようが何されようが絶対にあんな事にはなりませんし。』


確かに。


『それに、どんな時も私がいます。』


そうだなぁ。


テンコに説得されて俺はもう一度人と関わってみようかなと思った。


深淵の森を適当に歩いていると、早速人に出くわした。

それも、魔物に襲われている。


騎士が10人、馬車を守るように囲んでいる。

多分貴族かなんかだと思う。


魔物はダークコボルト。滅多に会うことのない魔物だ。Sランクの冒険者でも3人で1体相手にするレベルの相手だが、それが6体いる。


なんて運の悪い連中なんだ。ご愁傷様。


俺が引き返そうとしたら


『マスター!チャンスですよ!人と交流するチャンスです。』


いやいや、だって貴族だぞ?それに瞬殺したらめんどくさそうじゃん。


『その時は口封じするなり、逃げればいいじゃないですか。』


テンコ、結構エグいね。


『違いますよ。口封じは脅しをかければいいだけです。殺せとは言ってません。』


はいはい。わかったよ。


そんな事をしているうちに騎士が1人また1人と倒れていく。


あーあ。死んじゃった。


『大丈夫です。まだ生きてますよ。さぁ行くのですマスター。』


はぁ。やれやれ。了解です。


俺は今にもダークコボルトにやられそうになっている騎士に駆け寄り、ダークコボルトをぶっ飛ばした。


ブパァン!!


ダークコボルトの胴体は消し飛んだ。


ダークコボルトは味方が1体死んだことに気づいた。


「オイ!オマエがヤッタノカ?」


「そうだ。残りも相手してやる。まとめてかかってこい。」


「ドウホウをヒトリヤッタクライでチョウシニノルナ!」


「コロシテヤル!」


ダークコボルトは2体俺に向かって来たが


「遅い。」


パァン!グチュ!


殴って引きちぎった。2体とも力尽きた。


「ナンナンダ!オマエホントにニンゲンカ?」


「当たり前だ。かかってこないならこっちから行くぞ。」


「マ、マテ……」


ブパァン!パァン!


「残るはお前だけだぞ?」


「コ、コウサンダ。ミノガシテクレ。」


「見逃してくださいだろ?」


「ミ、ミノガシテクダサイ。」


「いいだろう。さっさと行け。」


「アリガトウゴザイマス。」


こうして俺はダークコボルトを撃退した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る