H31.4.2.4:26

玉手箱つづら

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 何かに頭をぶつけて「痛って」と舌打ちすると、続けざまに何度も何度もぶつけて、ぶつけて、前のめりに倒れこみながら、ぶつけてるんじゃない、後ろから殴られてるんだと気がついた。

 整介が持っているのは分解された僕のデスクの脚で、その背後ではいくつかの人影がモゾモゾと動いているのがぼんやりと見える。カチャ、カチャ、とネジを弄る音。

 脚がもう一度、今度は首に振り下ろされる。

「時代のさ、節目じゃんか」

 整介が語りかけるように言うが、僕はほとんど死んでいる。

「いいのかなって考えたんだよな。つまり、お前が次の時代に行っちゃうのがさ。お前みたいなもんが次の時代にいていいのかなって考えて、駄目だろってのが結論」

 デスクがすべて分解されて、引出しだった部分が外れた顎のようで、情けなく、特に哀れに見えた。

「だってお前、平成を生き抜いてないじゃん?」

 生き抜いたよ。毎日毎日、泣きながら生き抜いたじゃんか。平成の間、ずっと耐えながら生きてきたんじゃんか。なんで、なんでそんなこと言うんだよ。

「泣くなよ」

 大きな音がして、何も見えなくなる。痺れるような感覚に顔中が包まれる。

 すぐ泣くから駄目なんだよ、お前。生きてる奴ってのはさ、そんなんじゃないんだ。声が遠ざかっていく。やがて消える。

 僕はまったく納得できなくて、ふざけんなよ、ふざけんなよ、と体を捻っていたらグネッと上手いこと成仏を免れて悪霊になったのだが、霊は時間の軸から外れてしまうようで、前後不覚、何時とも認識できないところから、何時とも認識できないところ(前と違う時であるのかも判然としない)まで、さまよう先でたくさんの人間を呪って、楽しいのだけどとっても虚しい。

 梅の香を頼りに、うろり、うろり。

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H31.4.2.4:26 玉手箱つづら @tamatebako_tsudura

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