第15話「変身ヒロインの役目」
Side 銀条院 ユカリ
変身ヒロインと怪人のルーツ。
事件の真相。
そしてこの世界が滅ぶまでのタイムリミット。
いっそ聞かなければよかったと思った。
頭がクラクラしながら協会本部のラウンジに座り込む。
「銀条院――後の事は任せられるか?」
「佐久間さん?」
そんな時だった。
佐久間さんが寄りかかって来たのは。
「正直あの話は半信半疑なところが多いが、信じざるおえんだろう。国防軍との入れ替わりで私達はあの城に乗り込む」
「もしかして――」
「どうなるかは分からん――銀条院、君はお世辞にも強いとは言えないが私にとって理想のヒロインだった。だから死ぬなよ」
「そんな・・・・・・」
嬉しさより、絶望を感じた。
言葉を失う。
死ぬつまりなのだ。
佐久間さんは。
誰もが憧れた最強のヒロインが。
どうすればいい。
どうすればいのだろう。
強くなるにしてもどうやって?
時間はない。
やはり自分は役立たずなんだろうか。
(悔しい・・・・・・とても悔しいです・・・・・・)
気づけばユカリは一人泣いていた。
「本当は安易なパワーアップは好かんのだがな」
「え?」
そして入れ替わりにフードの人物が現れた。
「ヒロインがなぜここまで無力なのかは邪神の影響もあるが、問題は変身ヒロインは元々戦う戦士ではなく、ダレスの細胞である怪人の浄化に特化した戦士だからだ」
「そ、そうなのですか」
「だから戦えるようになるには邪神の力を弱め、変身ヒロインをより高度な物に作り替えなければならない」
「そんなことが可能なのですか?」
にわかには信じられない話ではあるが不思議と説得力のようなものを感じた。
「可能だ。その変わり俺は戦えなくなるし――」
続けてこう言った。
「この事件が収束した後にその力を使って悪事を働く人間も出てくるだろう」
「それは――」
人間の愚かさをユカリは見てきている。
間違いなくそう言うヒロインは出てくるだろう。
「それでもやるか?」
「・・・・・・どうやってやるかは分かりませんが――」
悩む。
そして思い浮かんだのは――
最強のヒロイン 佐久間 レイカ
聖ヒメノ学園の腐れ縁の藤堂 アスカと同じ学校の生徒達。
天野 猛。
楠木 達也。
水樹 綾香。
デューネ・マリセイド。
「答えは出たか?」
「はい。お願いします」
そして黒いローブの人物は両手を向けた。
ユカリを中心に魔方陣のようなものが展開。
ユカリは光に包まれ、意識が遠退いた。
☆
何時の間にか不思議な場所にいた。
綺麗な青空。
お花畑。
そして長い金髪の少女。
白い衣を身に纏い、背中に天使の翼を持っている。
「ようやく会えた。私の力をもっとも受け継ぐヒロインに」
「アナタは?」
「女神ユーディアと言った方が正しいかな?」
「ではあなたが・・・・・・」
邪神ダレスが産み出した怪人に対抗するために、変身ヒロインを産み出すことになった存在。
「私はずっと悩んでいたの。変身ヒロインを産み出したのか間違いか否かって・・・・・・でも、そうも言ってられなかった」
「それは――」
腐敗した変身ヒロイン達の実情のこと知っているのだろう。
「だけどそれすらも間違いだったのかもしれない」
「え?」
「人の可能性――私はそれをホロスコープやアナタを通してみてきた。そこにはあの四人以外にも沢山のヒーローやヒロイン達がいた」
そして周囲には様々なヒーローやヒロインの雄姿が映し出された。
全て平行世界のヒーロー達だろう。
「これから全ての変身ヒロインの力を解放します。そして私は消滅します」
「ちょっと待ってください!? それってアナタは死ぬと」
「ええ。一件するとそれは責任放棄に感じるかも」
「そう言う話ではありません!! そうするぐらいなら今の力で頑張ります!!」
なぜか女神ユーディアは笑みを浮かべた。
「なにがおかしいんですか!?」
「いえ。まさか世界の命運よりも私を選ぶなんて――確かに変身ヒロインなんだなって」
「そんな事よりも――」
「私は十分に生きました。そして可能性を感じました。それともアナタ達、人間は、変身ヒロインは何時までも女神の力が無ければ前に進めない存在なのですか?」
「ッ――」
諭すようにそう言われてユカリは言葉に詰まってしまう。
「ごめんなさい。辛い役目を押しつけてしまって」
「いえ――私は――」
「ダレスに伝えて。神の役目はもう終わっているって。そして全ての変身ヒロインに伝えて。これからの世界を頼むって」
「・・・・・・」
暫くの静寂。
そして――
☆
「変身していないのに――力が溢れ出てくる。これが本当の私達の力?」
現実の世界に戻ったユカリはすぐさま変身ヒロインの力を感じ取った。
この協会にいる変身ヒロイン達も同じような異変を感じ取っているのだろう。
施設全体の彼方此方で騒ぎのような物が聞こえる。
「――後は邪神の力を抑えるだけだ」
そして黒いフードの人物はその場を後にする。
「待ってください!! どうしてそこまでしてくれるんですか!?」
「勘違いするな。俺は後押ししただけにすぎない。決着は君達の手でつけるんだ」
そう言って消え去る。
入れ替わりに猛達が集まってくる。
「お話がありますわ――」
そしてユカリは言った。
「僅かな時間でいいから鍛えてください」
と言った。
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