どうやら異世界は平和らしいです?
akisan
第1話
ジリリリリ…ジリリリリ…
カーテンの隙間から朝日が差し込み、昨夜時計タイマーでセットした音が憂鬱な朝を伝えていた。
タイマーを止めようと手探りで探すと、寝る前に飲んだビールが音を立てて地面に落ちたが気にせずに押した。
「…朝だ、支度しないと…」
そう言うと気持ち的に重い体を動かし起き上がることが出来た。
生まれて数十年、社会人として働きだして数年がたったがいまだにこの瞬間がどうも苦手だ。
最初の頃に比べるとましにはなったが、未だに朝の支度と朝食作りは苦手だ。
肉が焼ける音とトーストの香りが俺の目を少しずつ覚ましていくが、それにつれて表情は少しずつ落ち込んでいった。
「…そういえば、昨日の帰りに押し付けられた資料終わってなかったな」
そんなことを思い出し、ため息をつくと肉が焦げるような臭いがしてあわてて止めるが、間に合わず片面が炭と化していた。
それを見てまたため息をつくが、時間も時間なので急いでテーブルまで持って行きテレビをつけるた。
「・・・なんですよね!ワハハハ!」
テレビからはいま売れっ子の芸人が出演していて、朝から大きな声を出して笑いを誘っていた。
「元気だなー」なんて思いながら見ていると、珍しく占いが始まったのだ。
占いなんてほとんど信じてなんかはいないが、今日は珍しく見入っていた。
「…の人!残念最下位です!今までにない不運が訪れるかもしれませんが、その後には幸運が待っているかもしれません!」
(…最下位と来たか、しかも不幸かぁ)
見なければよかった。
そう思い少しため息交じりにテレビを消そうとすると
「今日のラッキーアイテムは『専門的な本』です!きっとやくにたt」
…専門的な本ってなんだよ。
俺は見なかったこと聞かなかったことにして、時計を見ると出勤時間に近づいていたのだ。
危なくはない、だが朝早くに出勤して資料片付けなければいけなかったので、急いで口の中一杯に朝食を頬張り洗面台に向かうと癖毛が酷かったが仕方がないと思い、準備していたスーツに着替えて鞄を掴み「さぁ行くぞ」気合を入れるために顔をパンパンと叩くと、ふと目の前に趣味で昔やっていた農業関係の本「農業の基本」なるものが目に入った。
(そういえばテレビで…)
専門的な本とか言っていたが、確かに関係はあるか?会社の中では役には立たなさそうだが、昼休みの暇つぶしにはなるかと考え本を鞄に入れると急いで会社に向かうのだった。
夕方、陽が沈む少し前に珍しく早く会社を出ることが出来た。
不幸らしい不幸は起きず特に何もなかった。
平凡な一日だった。
占いを本当は気にしてたんじゃ?と言われそうだが、目にしたものは頭に少なからず残るせいだと思いたい。
そんなことを思っていると目の前に子供たちが楽しそうに笑いながら帰っていたのだ。
疲れた表情をしながら帰っている自分とは正反対で、いつかこうなるんじゃないぞ?と心でそっとささやいた。
『……ぃ』
ふと何かが聞こえた気がした。
すると急に世界の色が灰色に染まり音が何も聞こえなくなっていた。
(…なんだ?)
突然の事に頭が付いてこないが、ふと空を見ると大きな図形が描かれていたのだ。
何なんだ…?そんなことを思い注視していると、急に図形が光だし真ん中から光が俺の体を包み込んだのだ。
そこからの記憶は覚えておらず、夢の中でその日の出来事を思い出すだけだった。
これが俺の最初の出来事であり、終わった物語の番外編として登場した男の物語だ。
てか、急すぎませんかね?
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