逢魔が時のキャンバスには

1.

 逢魔が時。既に日は沈んでいて、山の稜線に赤みがかかった紫が漂っているのが遠くに見える。どこからか聞こえるチャイムが昼の終わりと、夜の始まりを告げていた。なるほど、これなら魔物に逢う時間帯だと言われているのも頷ける。妖しくも美しい自然の中、ゆらりと現れる人ならざるモノ。

 そこで、手が勝手に筆へと伸びていることに気づき、思わず苦笑してしまう。よく幼馴染に「絵を描くことしか考えていないバカ」と呆れられるのだが、まさにその通り。伊達に十何年も過ごしていない。

 パレットにいくつかの色を出し、水を含ませた筆で絵の具を溶く。再び視線を開け放たれた窓の外へと向け、目の前にあるキャンバスに色を置いていく。自分が今見ているものをそのまま切り取るように。

 集中する時、美術室は最適な場所だった。一応、美術部に所属はしているものの部員は自分一人だけ。一個上の先輩の年で入部する人がいなかったらしく、廃部寸前になっていたところに入り込んだ。

 基本放任主義の顧問から、教室よりも広いこの場所を自由に使っていい許可を貰うと居心地が良すぎて、放課後はずっと入り浸るようになってしまった。人が来ない自分だけの場所。それは人に溢れている学校にはない、特別な空間で気に入っていた。

 だから、まさか誰かに声を掛けられるなんて思いもしなくて。

「絵、上手いね」

「うわっ」

 手元が狂い、絵の具が撥ねた。薄い赤が、まだ白が多いキャンバスに飛び散る。やばいと思って立ち上がると、今度は足元にあったバケツが倒れ、床に水をぶちまけてしまった。広がっていく水たまりは、俺に声を掛けた誰かの足元にまで達していた。その人のシューズの色は青、先輩だ。急いで手近にあった雑巾を手に取り、振り返る。

「ごめんなさ」

 初めて、綺麗なものを見て息が止まるという体験をした。

 すらりとしたしなやかな体躯に、端正な顔立ち。一見冷たい印象を受ける容姿だが、男にしては長い黒髪、その奥である瞳には微かな色気が滲んでいた。同性でも、いや性差なんて関係なく綺麗な人だと思った。

 思わずじっと見つめていると、先輩の視線が突き刺さってきて一気に現実へと引き戻される。

「……い」

 真っ直ぐな視線に耐えられなくなって目を逸らす。手遅れだが謝罪の続きを述べ、床の水を拭くことにした。無心で床と向き合っていると、自分のしたことがどれだけ非常識かが身にしみて分かる。 

 初対面の人に水をかけてしまったから謝ろうとした、ここまではいいだろう。しかし、先輩の姿を見た途端、いつもの癖が出てしまい、黙って隅々まで観察してしまったのは失礼極まりない。完全にやってしまった。

 先輩の方を見れずに床と向き合っていると、視界の端に俺が持っているものとは別の雑巾が入り込んだ。マジか。

 おそるおそる顔を上げると、俺と同じく床を拭いている先輩がいた。

「あの、わざわざ拭かなくていいですよ、俺が悪いんで」

 無視。先輩は何も聞こえなかったかのようにひたすら手を動かしている。とりあえず話は片付けが終わってからのようだ。至極真っ当な判断だが、こっちは申し訳ない気持ちでいっぱいだった。



 壁際にあるスイッチを押すと美術室が一気に明るくなる。思いの外掃除に時間がかかってしまい、外はすっかり暗くなって月が昇り始めていた。スマホを取り出し、画面に表示された時刻を確認すると午後六時五十分。あと十分で下校時間だ。

 先輩は美術室にあるものに興味をひかれているようで、作品やら道具類やらを眺めている。壁際にいる俺と先輩の距離は微妙に遠い。色々と迷惑をかけた自分から、その距離を詰める勇気はなかなか出てこなかった。

 そんなことを思っていると、先輩と目が合った。それはもう、ばっちりと。逸らす暇も無いくらい。

「ごめん!」

「え」

「いやお前があんなに驚くとは思わなくってさぁ。集中してたんだよな、ホントごめん」

 ぱちん、と先輩が顔の前で手を合わせた音が響く。砕けた口調に理解が追いつかない。返す言葉に困っていると、先輩が手招きをする。

「この距離、声張らなきゃなんないのちょっと面倒臭い」

「そう、ですね」

 先輩のたった一言で、さっきまで遠く感じていた距離がなんだか短くなったような気がした。踏み出す足は軽やかに、一歩また一歩と先輩の元へと近づいていく。

 立ち話は疲れるだろう。途中で椅子を持って、先輩に渡すと「サンキュ」と笑って座ってくれた。投げ出された長い足を見て、思い出す。

「そうだ、シューズ。先輩、シューズ濡れてましたよね」

「ん、もう乾いた」

 ほら、と揺れたつま先は確かに濡れていない。水浸しになるほどのことではなかったみたいだ。ほっと胸を撫でおろす。

「じゃー、これはお互い様ってことで」

「どういうことですか」

「さっきからオレのこと気にしてたみたいだから。オレが君を脅かしたことと、君がオレのシューズ濡らしたことでプラマイゼロ。オーケイ?」

 ぐいっと近づいてきた先輩の勢いに気後れしてしまう。周りにはいないタイプだからかもしれない。それでも、せっかく続いた会話が途切れるのは嫌でなんとか声を出す。

「オ、オーケイ」 

「それならよーし。これからオレに遠慮するなよ」

 不思議な感覚だった。俺は人付き合いは苦手な方だと思う。仲良くなりたいという気持ちはあるのだが、人と関わる時に一線を引いてしまうのだ。自分には触れてほしくない部分があるから。心の脆い部分を無遠慮にひっかきまわされたくない。特に気軽に話しかけてくる人にそういうバリアを張ってしまうのだが、先輩は悠々とそれを飛び越えてきた。少々強引だけど、その勢いは意外と居心地が悪くなるものではなかった。おそらく先輩みたいな人がコミュニーション能力が高い、社交性のある人間と呼ばれるのだろう。

「そういえば、先輩は何でここに来たんですか」

「実は忘れ物があって。さっき美術室眺めてた時に見つけたんだよね」

 先輩は脇に寄せてあった小さな紙袋を指さす。美術の授業の時の忘れ物だろうか。

「あれ見つけたらちゃちゃっと帰るつもりだったんだけどさ、先に上手い絵描いてるヤツ見つけたから気になって」

「ありがとうございます」

 絵のことを褒められるのは嬉しい。例えお世辞だとしても、だ。

「美術部?」

「俺しかいないんですけど、一応そういうことになってますね」

「へえ、美術部とか部員いなくなって廃部になったもんだとばっかり。もったいねえ、もっと皆に知ってもらえばいいのに」

 そう言って先輩は俺の描いていた絵へと視線を向ける。山の形だけが浮かびあがっているキャンバスは殺風景で、続きを描きたかったな、なんて意味のない後悔が一瞬だけ頭をよぎった。

「もしかしてあれ、今日中に描きあげるつもりだった?」

「……顔に出てましたか」

「さーね」

 楽しそうに先輩ははぐらかして、地面を蹴り椅子から立ち上がった。

「もうそろそろ帰んなきゃな」

「うわっ、下校時刻過ぎてますね。やっば」

「巡回してるセンセーに見つかると反省文書かされるんだよなあ」

「やったことあるんですか」

「君こそ一回もやったことないなんて真面目な生徒だね。いつか体験してみるといいよ」

 端正な顔を崩して笑う先輩。つられて笑うと、びしっと眉間に指を突きつけられた。驚いて固まっていると、先輩がさっきとはまるで違う調子で厳かに告げる。

「気を抜いていられるのもここまで。これからオレ達は敵地を通り、目的地まで辿り着かなくてはならない。途中で敵に見つかっても助けてやれないからな」

「はあ?」

 気の抜けた俺の返事に、先輩は大袈裟にため息をつく。

「ただ帰るだけじゃつまんないだろ。雰囲気大事」

「……サー・イエス・サー」

「良い返事だ」

 ニヒルな笑みを浮かべたせんぱ、いや上官と共に荷物を持って出口へと急ぐ。上官は電気を消してから、少しだけ扉を開き外の様子を確認すると、幾分ひそめた声で俺に話しかけてきた。

「最後に、お互いのコードネームを確認してから任務遂行といこうじゃないか」



「怜、シネマって名前の先輩なんてうちにいないよな」

「映画館じゃあるまいし、いないわね」

 翌日の昼休み。俺は幼馴染と二人で昼飯を食べていた。

 うちの学校にある中庭には、創立当時からあるご立派な木が生えている。その下は教室から死角になっていて、まず人に見つからない。おまけに木陰で快適な温度が常に保たれている。学校内で静かな場所が欲しい人達にはうってつけだろうに、利用しているのは俺達だけのようだった。高校に入学して二年、ほとんど昼飯はここで食べているが俺ら以外の人に出会ったことは一度もない。

「珍しいね、先輩が気になるなんて。どうしたの」

 購買で買ったパンを咀嚼しながら、怜は聞いてくる、というか俺が話しやすいよう相槌を打ってくれた。ちなみに顔は俺の方を向いていない。参考書を頭に入れるついでに聞いててあげるから勝手に話していいよ。それがずっと変わらない怜の相談の乗り方だった。

 傍から見れば、冷たい人だと思われるかもしれない。初めは俺もそう思っていた。話くらいちゃんとした態度で聞いてくれてもいいじゃないか。

 しかし、話が終わると、怜は毎回的確なアドバイスや自分の考えを言ってくれる。おかげで、解決したことや自分に自信を持てたことが多くあった。今では、怜の態度も気にならないどころか話しやすく感じている。

「昨日美術室に来た先輩がいてさ」

 弁当箱に入っている冷凍からあげを口に放りながら、昨日の放課後の話をする。凄くイケメンな先輩が美術室に来たこと。その先輩と初対面なのに楽しく話せたこと。最後に、シネマというコードネームを名乗って帰ったこと。

「そこで本名言っちゃう司も面白いね、そこはノリにノるでしょ」

「自己紹介の流れだと思ったんだよ」

「まあいいや。で、その先輩の本名が気になると」

「いいんかい。……多分、手掛かりはシネマだよな」

「そうね、私もそう思う」

 参考書から顔を上げて、しばし考え込む怜。学生の貴重な休み時間に参考書を手放さないことからも分かるだろうが、怜は勉強が好きな人種である。彼女曰く、勉強を通して知ることや考えることが出来るから好きなのだそうだ。自分に分からないことがあるのも、むず痒く感じるらしい。

 そんな知識欲の塊である彼女は、参考書を置いて地面に何かを書き始めた。隣で俺は弁当を平らげる。ほら、適材適所って言葉があるだろう。俺は残念ながら頭を使うことに関してはさっぱりだった。

 少しして怜は指を鳴らした。どうやら、彼女の納得のいく答えが出たらしい。

「水瀬先輩だよ、あの有名な水瀬先輩」

「誰だそれ。ってかなんでシネマから水瀬に?」

「先輩を知らない人ってこの学校に存在するんだ。ま、先に名前の方の説明するよ」

 怜は地面を指差した。そこには『シネマ→CINEMA→MINACE』と書いてある。

「シネマは英語で書くとCINEMA。これを並べ替えるとMINACE、みなせって読めるでしょう」

「こじつけっぽい」

「失礼ね。これ、アナグラムっていう言葉遊びの一つなんだよ。面白いと思うんだけどな」

「ごめん、俺の完全なる知識不足」

「これでまた一つ司の世界が豊かになったね」

 得意げな顔をする怜。彼女の自慢の仕方は鼻につかなくて好きだ。多少腹が立つことはあれど、実力が伴っているからこちらも納得出来る。近寄りがたい雰囲気をまとわない怜は、先輩後輩同年代を問わず様々な人に好かれていた。

 故に、怜は学校内の情報を知り尽くしている。四時限目終了直後に戦場になる購買の人気パンを毎日平然と持ってくるのも、一年の頃先輩に裏技を教えてもらったから、と言っていた。その彼女が「有名な」と付けるくらいだ、学校で噂になっている情報よりもディープなことも知っているのだろう。

 とはいえ、俺は彼のことを何一つ知らない。気を取り直して、俺は授業中のように手を挙げた。

「はい、質問です。水瀬先輩はどんな人なんですか」

「一言で言うなら学校の王子様。司もご存知の通り整った容姿してるでしょ、もう女子には大人気だよね」

「怜の好み?」

「女の子は皆イケメン大好きです」

 真顔でそう言って、怜は再び参考書を開く。言ってることと表情が噛み合ってなくて、吹き出しそうになるのをこらえるのが大変だ。

「正直、話聞いてた時から水瀬先輩でしょっては思ってたんだけど、印象と違ってて。あの人、人付き合いとか積極的にしないって聞いたから。冗談とか滅多に言わないって三年の先輩が言ってた」

「へえ」

「ミステリアスでいいよね」

「好きなの、先輩のこと」

 怜が目に見えて動揺するまでは、何気ない一言のつもりだった。

 怜の視線に混じる、微かな戸惑い。いつだって冷静な彼女が、普段の会話で自分のペースを乱すことなんて無かったから、俺はどうしたらいいか分からなくて口をつぐむ。

 しばらく流れた沈黙は、嫌でも思春期の男女であることを意識してしまうものだった。幼馴染とはいえ、時を経て変わってしまったことも、分からないことも多くなった。

「……私の先輩に対する好きは、アイドルに対する理想が混ざった好きと一緒。心配しなくていいよ」

 先に沈黙を破ったのは怜の方だった。引っかかる言い方だったが、何が引っかかっているのは分からなくて彼女に尋ねることは出来ない。すっきりしない、もやもやした気持ちだけが心に残る。

「それじゃ、先に戻るわね」

 予鈴が鳴る中、颯爽と去っていく後ろ姿はすでにいつもの調子を取り戻していた。相変わらず気持ちの切り替えが早い。



「つーかさクン」

「なんですか水瀬先輩」

「お、オレの名前分かったんだ。すげー」

「優秀な幼馴染がいるもんで」

「そこは自分で考えましたって言ってほしかったなあ」

 画材を出していると、当然のように水瀬先輩は美術室へやってきた。お菓子の詰まった袋を片手に引っ提げて。

 何故か迷惑だと思うことはなかった。一人で集中出来るからこそ、美術室にこもっていたのに。先輩と言葉を交わすのはこれで二回目、それにしてはあっさりと先輩を受け入れていた。

「今日は何描くの」

「昨日と同じ所から見る風景ですね」

「それなのに新しいキャンバスに描くんだ」

「昨日見たものと今日見るものは全然違うんです」

 俺が絵を描く上で心がけているのは、自分が綺麗だと思ったものを描くことだ。

 例えば、朝露の滴る花びらや砂浜に打ち寄せる波。どうも自分は儚い美が好きなんだと気づいたのはつい最近のことである。瞬きをしたら、次の瞬間には消えてなくなっているような、違うものになっているような。そんな美しさが好きらしい。

 刻々と変わりゆく空はまさに俺好みだった。天候や季節でも違う表情を見せるから飽きがこない。

「なあ、まだ日暮れまで時間あるだろ。ちょっと話そうぜ」

「いいですけど」

「やった。はい、これお裾分け」

 先輩の指が俺の口に添えられたかと思うと、何かが詰めこまれた。転がしてみると、甘い。いちご味の飴だ。

「先輩、飴好きなんですか」

「いや? つかさクンが好きそうだなーって」

「飴は、まあ嫌いじゃないですけど、味はレモンの方が好きです」

「そっか。次は善処しよう」

 先輩は袋からポテトチップスを取り出した。俺もそっちが食べたかったけど、これから絵を描くのに手が油で汚れてしまうのは避けたい。

 ぱりぱりと軽い音が響く。ふとその手が止まったかと思うと、先輩はいいことを思いついたとばかりに瞳をきらめかせて質問を投げかけてきた。

「つかさクン、スケッチブックとか持ってないの」

「一応、あるにはありますけど」

「みーせーて」

「大したもん描いてませんよ、ほとんどラフみたいな」

「いーからいーから」

 手を広げたまま、にこにこと笑う先輩。そこにスケッチブックをのせろということか。先輩はその格好のまま動かない。観念して、俺はリュックからスケッチブックを取り出し、横にある机の上に置いた。

「手を拭いてから見てくださいね」

「りょーかい」

 先輩の声を背に、俺は中断していた準備を再開する。もうすぐ日が沈む頃だろう。早くしなければ。

 ぺらぺらと紙をめくる音を聞きながら、イーゼルを立てキャンバスを乗せる。パレットと筆は美術準備室から持ってきた。相棒のアクリル絵の具も机の上に鎮座している。あと足りないのは水を入れたバケツだ。

 水道へ行き蛇口をひねって、その下にバケツを滑りこませる。水で濡れないようシャツの裾をまくった。

「人物画も描くんだ」

「描きますよ、たまに」

 また前回のようになってしまったら大変だ。半分くらい溜まったところで、水を止める。こぼさないよう気をつけながら、机の上に置いた。これなら間違えても足で蹴飛ばさないだろう。

 先輩のスケッチブックをめくる指は、妹の笑顔が描いてあるページで止まっていた。確か中学の制服を初めて着た時のものだ。絵を描いている途中、俺に見られて気恥ずかしそうにしていたのを覚えている。

「ただ、描いてる間はモデルを見てないといけないのが個人的に難点で。コミュニケーションが苦手だからなんでしょうけど」

 先輩が首を傾げる。クエスチョンマークが浮かんでいるのが見えるようだ。

 自然や物を描くときはこっちがこだわれば、いくらでも自分の熱を描いている作品に込められる。でも、人を描くとなるとそれが上手くいかないのだ。描いている人の反応が気になってしまって、自分の思うように描けない。妹の絵だって正直、自分の納得のいくものではなかった。喜んでくれたけど。

「人でも、綺麗だなとか好きだなって自分が思ったものは描きたいんですけどね」

「自分が描きたいって思ったもの、か。やっぱり絵を描く人はそう思ってるのかな」

 先輩は寂しそうな顔をした、気がした。本当に一瞬のことだったから見間違いかもしれない。現に、今はへらへらした表情に戻っている。

「ところでつかさクン、日が暮れてるけど」

「あっ、教えてくれてありがとうございます」

「邪魔しないようにここから見てるね」

 頷くと、俺は昨日と同じ席に座って、同じ窓の外を見つめた。まだ口の中に残っている飴をかみ砕く。昨日の空より赤みが強い。パレットに多めに赤を出していく。夜の気配はまだ微かなものだが、確かに空を覆い始めている。深い青を散らしたくて、スパッタリング用の網とブラシを慌てて持ってきた。

 筆を持ち上げ、水に浸す。それをパレットに出した色につけて。

「あれ」

 筆が進まないことに気づく。おかしい。なんでだ。目の前に広がっているのは、文句なしの絶景だ。

 なのに。どうしても絵に描くことが出来なかった。しばし考えて、気づく。夕焼け、逢魔が時の空は魅力的だった。惹きこまれる美しさがあった。尋常じゃないものが出てきて、世界を壊してくれるんじゃないかと思えた。昨日までの俺は久々に、それはもうのめり込むくらいに逢魔が時の空模様を気に入ってた。

 もっと正確に言うと、先輩に出会うまでは。

「続き、描かないの?」

 邪魔をしないと言った先輩は、いつの間にか俺と窓の間に立っていた。思い切り邪魔をしている。しかし、俺は外の風景より先輩の方に魅入っていた。揺れる黒髪は艶やかで、俺を見下ろして静かに笑んでいる。おそろしいくらい綺麗だった。先輩の今まで見たことない表情に、胸が高鳴る。そして、思う。

 ああ、描きたい。

「それならさ、つかさクン」

 掠れた低音が鼓膜を揺らす。心地いい、声。ぐるぐると先輩の声が頭の中でリピートされる。心臓はばくばくと動いていて、破裂しそうだった。美しさに殴り殺されてしまいそう。

「オレ、実は顔には自信あるんだけど、どうかな」 

 その時の先輩の顔は、惜しくも逆光でよく見えなかった。



「先輩動かないでください」

「あー、肩こった。モデルって疲れるね、あと敬語」

「ホントに敬語やめないとダメですか」

「ダメ。先輩後輩っていうのオレあんま好きじゃないんだよね。できれば名前呼びしてほしいくらい」

 めんどくさいしさ、疲れる。先輩はそう言って椅子に座ったまま、大きく伸びをした。

 あの日から、結局俺は先輩の絵を描くことになり、俺と先輩の関係が少し変わった。先輩は俺に敬語を使わないよう言ってきて、対等な関係になることを望んでいる。それを俺は色んな言い訳をつけて、誤魔化していた。

 自分の中に、先輩と後輩っていう最後の一線を越えてしまっては駄目だという思いがあった。大したことではないのは分かっている。歳の差を超えて仲良くなることなんて、一般的にはしょっちゅうあることだ。

 余計な考え事をしているからか、ちっとも先輩の絵の方は進んでいない。放課後は毎日美術室に集まって向き合っているのに。その分、敬語どうこうは抜きで俺と先輩はすっかり打ち解けていた。

 やはり、会話を積み重ねると見えてくるものはたくさんある。その大半はくだらないことだったけれど。先輩の好きな食べ物やアーティスト、趣味。それから、過去にやった馬鹿話。どれも面白くて、腹を抱えて笑った。

 基本的に先輩はへらへらしていて、真面目じゃなくて。容姿からは想像もつかないほどよく笑う人だった。だから、最初は怜の印象とは大違いだなと思っていた。

 しかし、今になると怜の言っていたことも分かる。先輩は、俺を見ていない。俺を通して他の誰かを見ているような節がある。その違和感を実感するたびに、小さくて鋭い痛みを感じた。理由は、分からない。だから、きっと大したことではないはずだ。

「じゃ、また描きますよ」

「変なところで頑固だね」

「うるさい」

「そういう時ばっかり!」

 へらっと笑うと、先輩はすっと真顔になって俺と向き合った。

 キャンバスには、先輩の顔のパーツの位置しか描かれていない。数日かかってこの状態だ。はっきりいってありえない進行速度である。今日こそは先輩の顔を完成させる勢いで描かなくてはいつまでたっても完成しないだろう。

 手に持った鉛筆をくるりと回し、キャンバスに線を入れていく。

 描いているとなおさら思う。先輩の顔は本当に整っている。俺は特に目が好きだった。切れ長で、でも決して細いわけではない。ふちを彩る睫毛は長く上向いていて、はっきりとした意思が込められた瞳に吸い込まれそうになる。

 久々の感覚だった。外の世界なんて関係ないくらい集中している。先輩を描くことだけに神経を使っている。こんなにも、絵を描くことだけに一生懸命になっている。細かいところにもこだわりたい、自分だけが見ている先輩を描き出したい! 

「夢みたい、だな」

「え?」

 先輩の呟きが、美術室に響く。集中は途切れ、自然と俺の意識は絵から先輩へと向けられる。

「こうやって、前にもオレの絵を描いてくれるって言ってくれた人がいたんだよね」 

 急に、先輩が見知らぬ人に見えた。縮まっていた距離が遠ざかっていく、ような。

「オレが一年の頃あの人は三年だったから、つかさクンは知らないだろうけど……花先輩も美術部だった。あの人も放課後はいつも一人、美術室で絵を描いてた」

 ちくり。あの鋭い痛みだ。無視してきたはずの痛みが、今になって煩わしい。ざわざわと心に荒い波を立てる。

「花先輩の絵は繊細で、柔らかくて。先輩もそういう人だったから、オレもすぐ懐いちゃってさあ。いちご味の飴、持っていくとオレより年上なのに子供みたいにはしゃぐんだよ。それがすげー可愛くて」

 ずきり。さっきよりも強い、胸が締めつけられるような、痛み。

「で、まだ在学してる頃、オレの絵を描きたいって言ってくれたんだ。マジで嬉しかった」

 今まで聞いたことがない、明るい声音。先輩のことをまた一つ知ったはずなのに、痛みは治まるどころか増していく。

「でもそれだけ。そのあと話はうやむやになって、花先輩は受験の勉強するからって美術室に来なくなった。結局、オレを描いてはくれなかった。気まぐれだったのかな、なんて今では思ってる」

 少しだけ、痛みが治まった。代わりにそんな自分に、嫌悪感を抱いた。

「まあ、それでオレは花先輩のこと好きだって気づいたんだけど、もう遅いんだよね。今も連絡とってるけど、オレのこと眼中にないって感じ」

 ぐさり。狙いは的確、ど真ん中。防ぎようがない言葉に、ようやく俺も自分の気持ちが分かった。痛みの正体も、先輩のことで一喜一憂することにも。先輩と後輩っていう関係で誤魔化そうとした、この気持ちはおそらく。

 そこで、先輩は俺を見据える。

「今はつかさクンが描いてくれるから、嬉しいよ」

 好きな人に向ける笑顔と共に、からっぽの一言が添えられている。

 確信した。先輩の見据える先には、俺じゃなくて花先輩とやらがいる。それが、どうしようもなく苦しくて、辛くて、叫びだしそうだったけど。どうにか、昂った感情を押し殺して。

「そういってくれるなんて俺も嬉しいです、先輩」

 作った笑顔で、偽物の言葉を吐いた。



 穏やかなBGMが流れている店内には、人はまばらにしかいなかった。ヘッドフォンをして勉強に励む人、こくりこくりと舟を漕いでいる人。昼間のような活気はなく、夜のファミレスは違う世界を作りだしていた。

「お待たせ。紅茶でよかった?」

「うん、ありがとう」

 電話で、しかも夜に呼び出したにも関わらず、怜は嫌な顔一つしないでファミレスに来てくれた。

「今日はいやに優しいな」

「いいえ、私はいつも通り。そう感じるのは司が弱ってるせいね」

 ありえないくらい、やつれた顔してる。そう言って、怜は自分の分の紅茶に口をつけた。彼女の格好は黒のパーカーにジーンズ、完全に自宅でゆっくり過ごす時の格好だ。申し訳なく感じたが、それ以上に来てくれたことに感謝をしている。それでも、自分の思いをすぐに彼女に言うことは憚られた。

「……いつもの勉強道具は?」

「急いで来たから忘れちゃった、残念。仕方ないから、今日は真面目に話を聞くしかないみたい」

 残念という割にはけろっとした顔で怜は言う。勉強好きが勉強道具を置いて話を聞こうと思うくらい、俺の声は切羽詰まったものだったらしい。

 怜が真面目に話を聞いてくれる。普段だったら天変地異の前触れかと思ってしまいそうだが、今はそれで話す決心がついた。

「俺、水瀬先輩のこと好きだ」

 テーブルの上に置かれた怜の腕が震え、紅茶が入ったカップにかちゃんとぶつかった。

「……そう」

「最近驚きすぎじゃないか? いつもの何を聞いても眉一つ動かなさない冷静沈着さはどこいった」

「そりゃあ驚くわよ、驚くに決まってるじゃない」

「だよな、気持ち悪いだろ」 

 ははっと、乾いた笑い声をあげる。

 否定されるのが、怖い。覚悟を決めて言ったはずの気持ちは簡単に揺らいだ。幼馴染に嫌われるのも、俺にとっては耐え難いことらしい。

「それは違う。気持ち悪くなんかない」

 一番言われたくなくて軽く流そうとした言葉を、怜はしっかりと受け止め否定してくれた。

 それが意外にも嬉しくて、酷く安心してしまって。

「やば。情けない」

「ちゃらちゃちゃっちゃちゃー、ティッシュ~」 

 棒読みの効果音に笑いながら受け取る。今ほど幼馴染を心強く思ったことがあっただろうか。おまけに夜の怜は頭のネジが数本外れていて、なんだか面白い。受け取ったティッシュで滲んだ視界を元に戻す。

「誰を好きになるのも自由だよ。少なくとも私はそう思ってる。確かに驚いたけど、前々からそうなんじゃないかなっては思ってた」

「どういうことだよ」

 思いがけない言葉に身を乗り出すと、怜は呆れた顔で話を続ける。

「一番最初に水瀬先輩の話した時。私が水瀬先輩のこと好きって言ったら凄い顔してたもん。ショックを受けた顔っていうのは、ああいう顔のことを言うんだなって認識を改めた」

「そ、そんな前から」

「司はね、自分で思っている数十倍は鈍感だと思う」

「嘘だろ」

 俺の反応に怜はまた笑った。

「そんな司が自分の気持ちに気づいたってことは相応の何かがあったんでしょ、良ければ話してくれない?」

 相変わらず、怜は話の持っていき方が上手い。一旦紅茶に口をつけ、ほのかに感じる甘みにまた彼女の優しさを感じた。

 それから、今日あったことを話す。自分でもまだ整理が出来ていなくて、上手く話せているとは到底思えなかったけど、怜は静かに頷きながら聞いてくれた。

 そして一言。

「うわあ、望み薄だね」

「はっきり言うなよ凹む」

「へえ、先輩と想いが通じ合ったらいいなって思ってるんだ」 

「そりゃあ」

「先輩は私みたいに寛容じゃないかもしれないわよ」

 温かな慰めとは一変、刃物のように冷たく鋭利な現実を突きつけてきた。緩やかに上向いた気持ちが一気に冷めていく。

 怜は少しだけ口をつぐんだ。俺の様子を見ながら、ためらって、それでも再び続きを言った。

「人の感情は自由。思いも自由。誰に恋をするも自由。だけど、それを完全に受け入れてくれる人がいるかっていうと、微妙。司も分かっていると思うけど」

「そう、だね」

「ごめん、こんなことホントは言いたくない。でも、本気なら司の力になりたいから」

「少しだけ、待って」

 相当なダメージを受けていた。怜は気を遣って、不安定だった俺を安心させてからこんな話をしたんだろう。でも今の話を続けられていたら、今度は大泣きしていた。もうこっちはすでにキャパオーバーしてるんだよ。

 同性に恋をするとは自分でも思いもよらなかったし、何故好きなのと問われれば答えられないことも多い。今言うとするならば、飄々とした態度が好きだとか、話してて楽だとか、例えそれが誰かを重ねていたものだとしても、痛みを伴っていても甘くて優しいものだった、とか。

 勘違いから始まった感情かもしれない。それでも、先輩には他の誰かじゃなくて、俺自身を、見てほしい。

 そう思ったら、勝手に言葉は紡がれて。

「先輩と初めて会ったの、逢魔が時の空の絵を描こうとしてた時だったんだ。妖しくて、不思議なくらい綺麗な空だった。だから、もしかしたら。先輩が人を惑わす魔物だったのかもしれないって、今になってくだらないことを思ってる」

「案外、ロマンチストなのね」

「否定は出来ないな」

「なら、今も惑わされたまま?」

「まさか。時計を見ろよ、摩訶不思議なものとまみえる時間はもうとっくに過ぎた」

「あら、返しがお上手で」

 微笑む怜に、俺も微笑みを返す。それだけで十分だった。

「言っておくけど、逃げるのもありよ。敵わないって思ったら、私は友人として好きな人の傍にいる」

「意外。怜って奥手なんだな」

「恋人だけが特別な立ち位置じゃないわ」

 好きな人の心のどこかに入り込むことが出来ればいいの、私は。

 ウィンクをする怜は自分なりに愛を考え、この得体のしれない感情に向き合っているようだった。直接伝えるつもりはないが、彼女は強かで美しい。心配せずとも、自らの手で幸せを手に入れるだろう。

「さて、家に帰りましょう。もう遅いし」

「今日は、本当にありがとう」

 最後に深く頭を下げると、怜は照れくさそうに頬をかいた。

「いつものことなのに、ちゃんとお礼を言われるとむず痒いなぁ」

「今までの分も含めてってことで」



 美術室が、懐かしく感じる。

 ここ数週間放課後に来なかっただけで、こんなにも遠く感じてしまうものなのだろうか。何度もここに来ようとは思ったけど、ぐっと我慢していたから感慨深い。

 扉に手を掛け、一気に開ける。まず俺を出迎えたのは、美術室に染みついた絵の具の匂い、次に。

「待ちくたびれた、来なくなるんだったら一言言えって」

「な、なんで先輩」

 美術室の中央、拗ねた顔をして、行儀悪くテーブルの上に座っている水瀬先輩だった。

「えっ、なんで、鍵は」

「花先輩の忘れ物から拝借した」

「えっ?」

「オレが最初にここに来たの、忘れ物したからだって言っただろ。あれ、先輩から持ってくるよう頼まれてたやつ。いや何年忘れてんだよって話だよな」

 その中に美術室のスペアキーも入っていて、花先輩に使っていいよとお許しをもらったらしい。

「先輩、是非とも優秀な後輩クンに会いたいって」

「それは光栄です……ちなみに、俺のことなんて言ったんですか」

「絵画界の超新星、無限の色を操る魔術師ことつかさクン」

「大袈裟すぎます」

「その反応を待ってた」

 拍子抜けしてしまうほど何も無かったような距離感だったが、確かに俺達には空白の期間があって、すぐに和やかな雰囲気は消え去った。

 水を打ったように静まり返る美術室。どちらから声を掛けるか探りあって、結局耐えきれなくなったのか、先輩が俯きながら先に口を開いた。  

「オレも思うところはあるワケ。花先輩の面影探してたよなーとか、オレのこと色々押しつけてたなあ、とか。そもそもあんまり人付き合いが得意じゃねーから、鬱陶しく思われたのかもしれねーなって」

 そんなことないですよ、と慰めることはできない。実際そう思ったし、先輩の言動で悩んでいた。だからといって、何も聞かないのは違う。ちゃんと先輩の言葉を聞きたかった。

「でも、オレの絵を描いてくれるって言ってくれた時はすげー嬉しかった。つかさクンにはオレがどんな風に映ってるか知りたかったから。その絵を見れば、少しはつかさクンのことが分かるかもって、まあ虫がいい話だよね」

 自嘲気味に先輩は笑う。

 俺が言うのもどうかなとは思うけど、不器用な人だ。上手く立ち回っているようにみえて、不安を抱えている。

 相手に自分のことを見てほしい。俺達に共通するのはこの欲求だった。先輩は、花先輩に。俺は、先輩に。それを本人に求める勇気は無くて先輩は俺に花先輩を重ねていたし、俺は気持ちを誤魔化し押し殺していた。お互い触れ合っているようで、決定的にすれ違っていた。

 けれど、今の先輩の言葉は俺に向かって言ったものだった。あの綺麗な瞳にしっかりと俺が映っている。何より、それが嬉しかった。今まで悩んでいたこと全てがどうでもよくなってしまうくらい。

 だから、今度は俺から踏み出す番だ。

「そんな虫のいい話、あるって言ったらどうします?」

 俺はリュックからスケッチブックを取り出した。とある一ページを先輩に見せる。

 先輩の息をのむ様子を見て、何か言われるよりも先に。

「描いてきました。モデルしてる時の先輩って俺が見てる先輩じゃないなって思ったんで、記憶に残っていた先輩の顔を必死に思い出して描きました。俺の主観や印象が含まれてるのは許してください」

 一息で言い切って、先輩の顔を描いたページを差し出す。緊張した面持ちをしながらも、先輩は俺の絵を見てくれた。

「オレ、こんな風に見えてるの」

「はい」

「やばい」

「お気に召しませんでしたか」

「いや、オレ、どう考えてもこんな明るい奴じゃないからさ」

 先輩の笑顔に赤やオレンジ、黄色。暖色系の色を多めに使った配色だった。

 絵を描くとなって浮かんできたのは、話している時の楽しそうな先輩の顔だった。何回も描きなおして、やっと納得のいく顔が描けた時の嬉しさは今でも覚えている。初めて自信作の人物画を描けた俺の気持ちが少しでも伝わればいい。

 胸を張って言おう。ここからもう一度、俺達の関係を築いていければいい。

「俺にはそういう風に見えてるんです」

「そっか。……ありがとう」

 ふわり、と。先輩の笑った顔があまりにもこう、ズバンとキた。クリティカルヒットだった。ずるい、これはずるいの一言に限る。

 予想外の出来事に思考回路が吹っ飛んだ結果、俺はまだ言うはずではなかった言葉を言ってしまって、気まずい思いをするのはもう少し後のお話。



                 * * *



「待った?」

「いいえ、俺も今来たところです」

「怜ちゃんは?」

「今日は来れないって。先輩に会えなくて残念がってました」

「それ、オレの前でも言ってくれないかな、そしたら可愛いのに」

「アイツ、素直じゃないですから」

「写真撮れないから送ってあげられないね」

「それは大丈夫です、完成して一番最初に送ったんで」

「仲良しか」

「はは、一応たくさん世話にはなってるんですよ」

「花先輩も当日のお楽しみねって言って見せてくれなかったんだよな」

「初の展覧会なんですから、見に来てもらって感動してほしいでしょう。先輩必ず喜びますよ、長年の夢が叶うんですから」

「え、それって」

「はーい俺はもう何も言いませーん」

「……それにしてもゲストで出品していいよって言われる程の仲になっていたとは」

「絵画界の超新星、色の魔術師ですから」

「うわ、いつの頃の言ってんだよ。恥ずかしい」

「へへ。ところで先輩。その小さな袋どうしたんですか」

「お前もな」

「えー、俺のは秘密です」

「じゃあオレも秘密」

「うわぁ」

「サプライズって大事だよね」

「公開プロポーズとか? 笑えないからやめてくださいよ」

「はは、どうかな。まあ、全部着いてからのお楽しみってことで」




                             了

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逢魔が時のキャンバスには @Iori___Tachibana

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