空想科学小説読本 ~本家にはかなわないけど、とりあえずやってみました~
田中勇道
ウルトラマンが地上で戦ったらどうなるのか
俺はずっと疑問に思っていた。正義のヒーローと言えば仮面ライダーやウルトラマンが思い浮かぶが、一番歴史があるのはウルトラマンだ。ググってみるとおよそ半世紀にわたって続いているらしい。
そんなウルトラマンをY○uTubeやニコニコで見て思うことがある。
「これ、近くに人いたらやばくね?」
特撮にツッコミ入れてもしょうがないのは分かっている。それでもやはり考えてしまう。都会だったら死者は相当出るし、経済被害だって兆は余裕でいくだろう。ただ、映像だけではどれくらいやばいかが分からない。
だったら空想科学読本でも読めばいい、と思う人もいるだろう。……
「質問に答える前に、ウルトラマンについて調べさせてください。私、ウルトラマンにはあまり詳しくありません」
そうか。バーグさんは生まれてから八年ほどしか経っていない。知らなくても当然か。バーグさんはスマホを片手にウルトラマンについて調べ出した。AIだからなんでも知ってるのかと思ってたけど買い被りすぎたな。つーか、バーグさんスマホ持ってたんだ。
***
「では、リサーチが終わりましたので、ウルトラマンの危険性について見ていきましょう」
「ちょっと待て。『危険性』ってなんだよ。ウルトラマンそんなに危険なの?」
「40メートルもある巨人が目の前に立っていて、安心する人はいないと思いますけど……」
いや、まあ確かにそうだけど、俺だったら絶対ビビる。
バーグさんはスマホを操作して某フリー百科事典のページを俺に見せた。
「まずはウルトラマンのプロフィールを確認しておきましょう。身長は40メートル、これは先ほども言いましたね。そして体重が3万5千トンです。BMIは21875、標準が22ですから約千倍です」
すげぇな。前々から思ってはいたけど、やっぱりウルトラマン重すぎだ。
「仮に、ウルトラマンが上空2000メートルから着地したとします。空気抵抗を考慮しない場合、落下速度は時速713キロメートル。落下エネルギーは6864憶6650万ジュールです。これはTNT火薬164トン、マグニチュード4.7の地震に相当します」
ウルトラマンが着地するたびに地震が起こるのか。近くにいる人大変じゃん。
「マグニチュード4.7って、震度にしたらどれくらいなんだろうな」
「作者様、マグニチュードと震度は違いますから換算することはできません」
あ、そうなのか。俺の無知さが
「よく考えたら、3万5千トンもあったら着地の衝撃で地面えぐれない?」
「そうですね。計算はしていませんがクレーターはできそうです」
クレーター……もはやそれ隕石が落ちたようなもんだ。
「それじゃあ、ウルトラマンは慎重に降りる必要があるのか」
「残念ですが、どれだけ慎重に降りても被害……いえ、地震は避けられません。なんせ3万5千トンもありますからね。落下距離が10メートルでも、そのエネルギーは約34億ジュール。マグニチュード3クラスの地震が起きます」
さすがウルトラマン。スケールがデカい。
「となると、ウルトラマンは地上で戦わないほうがいいのか」
「戦うのはなるべく避けたいですね。できれば、相手を説得して自分の星に帰してあげるのが理想です」
怪獣とウルトラマンって会話できんのか? ウルトラマン「シュワッチ」しか言わないじゃん。
「それに、ウルトラマンは飛行するときも大変です」
「飛行?」
「作者様もご存知だと思いますが、音速を超えるスピードで移動する物体には衝撃波が発生します。さらには、断熱圧縮によって温度も上昇するので、高速で飛ぶ際には細心の注意を払わなければなりません」
バーグさん、俺はそこまで博学じゃねぇよ。全部初耳だわ。
「データではウルトラマンの飛行速度はマッハ5とあります。あの体では衝撃波によるダメージは相当大きいでしょうし、断熱圧縮で約1400度の高温も襲ってきます。幸い、ウルトラマンの体は無事ですが、今後、地球に来る時はスピードを落として飛行することを推奨します」
ウルトラマンすげぇ体張ってんな。つくづく感心する。
「一番良いのは怪獣が地球に来るのを未然に防ぐことです。ただ、そうなるとウルトラマンの出番が大幅に減ってしまうのが難点です」
地球の平和と引き換えにウルトラマンの出番が減る。なんとも悩ましい問題だ。
えー、結論。ウルトラマンが地上で戦ったら、被害の及ぶ範囲が広がる。
……まずは体重落としましょう。
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