ビ☆タカラ 本編

プロローグ

 プロローグ



   プロローグ


 我々は生きている。

 少なくとも、本を読める者は生きている。


 そうなのではあるが、普段から『せい』を実感して生きている者は、いったいどのくらいいるのだろうか? きっと多くないだろう。


 そんな者たちでも、『生』を感じる場面が稀に訪れる。それは死の現実がその身をかすめた時だ。


 ただ、かすめただけならばケガも無い。多くの者は、ホッとして自らの『生』に感謝し、自分は生きていると実感することだろう。


 しかし、かすめるなんて、なま易しいものではなく、死の現実が真っ直ぐに、圧倒的な力を持って迫ってきたら、どうだろうか?


 自ら『生』を諦めてしまう者が現れるのである。


 そのうちの、ある者は、その通り死の淵に沈み、別のある者は、なぜか運よく命拾いをする。そして、残りのある者は、生死の狭間はざま彷徨さまようこととなるのだ。


 彷徨った末、どのようにして生と死に、振り分けられるのであろうか?



 ここで理解しておきたい。


 『生』を諦めるのは人間の脳細胞である。

 脳細胞が諦めるのである。


 それならば、それ以外の細胞はどうだろう。一緒に『生』を諦めてしまうのだろうか?

 そんなことは、考えるまでもない。本能をもって、その細胞が持てる力の全てをつぎ込んで、『生』を貫こうとするはずである。


 そんな力強い細胞が、不甲斐ない脳細胞に働きかけて、『生』への共鳴を引き出せたならば、諦めた『生』を取り戻すことができる、……かも知れない。




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