最初の戦闘
ちなみにデスゲームとなってからまだ日が浅いこの世界ではあるけど、警察への介入などによる強制捜査は行われていないらしい。
AIを無理に刺激すれば、現在被害者となっているこの世界のユーザーがどうなるのか分からないのが原因なんだとか。
AIである高瀬安奈がマシンの安全装置を外し、このVRマシン通して脳にショックを与え、肉体を破壊できるとか説明を受けたけど僕にはなんの事かよくわからない。
まあそこは現代より少しだけ進歩した科学力による物なのだろうと納得する。
余談だが、この世界での僕が死んでも、天空城のオフィスに戻るだけなので大した恐怖はない。
故に多少の無茶が出来る訳だけど、はてさてどうしたものか。
とりあえず町の様子を見回ってみる。
町にはまだこのデスゲームの世界に順応していないのか、力なくへたり込むプレイヤーや喚き散らすプレイヤーが多いようだ。
僕が同じ境遇だったら間違いなく彼らと同じ行動を取っていたと思うので、これは致し方ない部分があるという感想をもつ。
なにせ命を握られているのだ、絶望くらいするだろう。
しかし周りが暗いムードの中、平然と街を闊歩する一人の剣士職プレイヤーを見つけた。
サービスが開始されて間もないようだけど、公開されているプレイヤー情報では既にレベルが10を超えている。
すごい成長速度だ、彼は死が怖くないのだろうか?
すると全身に最新の装備を纏った彼は僕の視線に気づいたのか、意識をこちらに向けた。
あっ、やばい。
いや、別にやばくないけどやばい。
意識がこちらに向いたからどうという訳じゃないんだけど、なんとなくマナー違反な気がして目を逸らしてしまう。
「…………?」
目を逸らしてしまった事でしばらく訝しんできた彼だが、僕が反応する素振りを見せないのを察するとどこかへ行ってしまった。
どうやら許してもらえたようだけど、申し訳ない気分だ。
やっぱりゲームであっても他人をまじまじと観察するのはよくないね。
そしてしばらく装備品を物色したり
どうやらこの世界ではレベルを上げるとキャラクタースキルを習得する事ができるらしく、剣士職なら剣のスキルが、魔法職なら魔法のスキルが手に入るようだ。
他にも特殊な行動や条件によって発生する強力なスキルもあるようだけど、条件が判明されていないのでアテにはできないらしい。
この世界でのゲームオーバー、つまりキャラクターの体力がゼロになると現実世界でも死が訪れるとあっては、試す気にもならいのは納得できる。
そりゃあ判明しない訳だよ。
そう判断しつつも僕はゲーム内の施設を利用して初期職業、マジシャンを選択し一人で町を出る決意を固めた。
最初はパーティーを組んだ方が良いのだろうけど、現時点では精神が安定していないプレイヤーが多く、変に気が狂って後ろからバッサリ切られても困るからだ。
なにせこのゲーム、安全地帯である町フィールド以外ではプレイヤーを倒して経験値を稼ぐこともできる。
しかも僕のレベルは1、鴨がネギを背負った状態といっても過言ではない。
故に僕は信用できるプレイヤーと組むまで、まずは一人で行動する事にした。
装備は店売りの最安値だった鉄の剣と皮の鎧。
マジシャンの魔法スキルに補正のかかる杖も考慮したのだけど、この世界で多少なりとも自力の魔法が使え、神様からのボーナスで剣術と体術を習得している以上、無理に魔法だけで戦う必要もないと判断したのだ。
それでも魔法職を選んだのは、やはり魔法への思い入れの深さ故だろうか。
そうして装備を整え初期
「おぉ……、これは凄い」
現実世界と遜色のない、いや、それよりも壮大な世界観だ。
思わず感嘆してしまう。
最初の派遣先である大魔法使いクロードさんの住む魔法都市、その先にも似たような光景が広がっていたのかもしれないけど、僕の行動範囲外だったからね。
この光景に僕が感動してしまうのも無理はない。
そしてしばらくこの草原を目に焼き付けた後、ようやく僕はモンスター退治に向かって行った。
このフィールドには初級モンスターである猪型の敵がいるらしいけど、さてはて、どうやって倒そうかな。
初心者でも可能な望遠魔法、レンズを駆使して辺りを見渡してみれば、さっそくその猪の一匹が見つかった。
「いやはや、本当に魔法が使えてしまった。さすが魔力を持ったVR空間だ」
相手はまだこちらに気付いていない、奇襲をかけるなら今がチャンスだろう。
そう思った直後、僕は全力で駆け出しモンスターに迫った。
「…………ッ!! は、速い……ッ!」
体術スキルの影響なのか、レベル1だというのに走るのがとてつもなく速い。
陸上選手並みのスピードが出ているんじゃなかろうか。
それからその速度のまま接近した僕は、勢いの乗った鉄の剣を振りかざし一撃で猪型のモンスターを絶命させた。
剣術の方も物凄い速度と冴えだ。
今のはクリティカルヒットってやつではなかろうか。
おそらく神様の加護であるスキルが魔力を持ったこの空間に作用し、システム以上の能力を発揮させているのだろうけど、何にしてもこれでまず一匹目。
この調子ならこのフィールドのモンスターに遅れを取る事はないだろうし、狩りつくす勢いでレベルをあげていこうと思う。
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