四章 原因はビュリオラ、いろんな意味で3



 と、そのとき、窓のすきまからコウモリが入ってきて、


「ストップ。ストップ。お楽しみをジャマして悪いんだけどな。こんなチビ娘に手を出すのは、よくないって。エイリッヒ、おまえ、よりどりみどりなんだろ?」


 リンデさんに引き離されました。


 ドキドキ……なんだかわからないけど、ホッとします。ホッとっていうか、なんだろう。ホッとガッカリ……みたいな?


 エイリッヒさんは吐息をついて、イスにすわりなおしました。

「何か、わかったのか?」


「うん。やっぱり、おまえの仕業じゃないかもしれない。

 おかみさんが言うには、昨日もおまえはマチルダと飲んでた。おかみさんがほかの客の相手をして、次に見たとき、おまえは一人だった。

『マチルダは、どうしたんだい?』と聞くと、おまえは、こう答えた。『さっき知らない男と出ていった。そういえば、けっこう時間がたつな。何してるんだろう?』

 そして、『男ともめてるのかもしれない。見てくる』と言って、裏口から出ていった。それきり店には、もどってこなかったってことだ」


「ふうん……」


 エイリッヒさんは手帳にメモをとりながら考えこみました。


「おれが、もめてるかもしれないと思ったのは、たぶん、出ていったときのマチルダのようすが、喜んでるようには見えなかったからだろう。イヤな空気を感じたのかもしれないな。だから、見に行った」


「そうだよ。おまえが出ていったときには、マチルダはもう殺されてたんだ。もちろん、やったのは、その男。ビックリしたおまえは、マチルダを介抱しようとして、ナイフを手にとった。そこへ、おれがやってきたってわけだ」


 おお、それは説得力あるです。

 人間(ほんとは精霊だけど)の心理に合致するです。


「そうか。すると、おれは殺人犯の男の顔を見てるってことか。とっくに忘れてしまっているが」


 リンデさんは大げさに首をふります。

「相手は、そうは思ってないだろうよ。おまえの特殊な事情なんて知らないんだから」


 エイリッヒさんは腕を組みました。


「おれの口から自分の罪が露見すると考えたんだな。ふつうの男なら、さっさと町から逃げだすんだろうが、この男は、そうはしなかった。

 かわりに、おれのほうこそ殺人犯だとウソの証言をして、おれを処刑させてしまうことで目撃者を始末し、殺人事件に終止符を打ってしまおうと考えた」


「そんなに、うまくいくか? おまえがマトモな男なら、じつは犯人の顔を見たんです。あの男が、おれに濡れ衣をかぶせたんだと言うだろ?」


「城内で妙な動きがあったろ? 犯人か、犯人の仲間が城にいる。つまり、殺人犯は城の誰かと通じてるんだ。自分の主張が有利に運ぶことを知っていた」


癒着ゆちゃくってやつか。なんかの利害で共犯者がいるんだな」


 うーん。高度な話には、ついていけません。


「もちろん、やつらは、おれが断崖の魔術師だとは思ってないだろう。知っていれば、冷酷無比な魔法使いに罪を着せれば、どんな仕返しを受けるか、想像がつくだろうからな」


「とにかく、ウソの証言をした男が怪しいんだよな」と、リンデさん。


「その男じたいが犯人なのか、犯人にやとわれてウソをついたのかまでは、まだ、わからないが。でも、犯人とつながりがあるのは確実だ」


 ふうん。頭のいい犯人ですねぇ。

 シャルランには考えもおよびません。

 あれ? でも、その男って……。


「ああっ、そうだ。見ましたよ! その男。ものすごい外国なまりの船乗りっぽい人で、むさくるしいヤギひげに、赤いバンダナ。おまけに前歯が一本かけてましたっけ」


「ほんとか? でかしたぞ。シャルラン」


 エイリッヒさんが、ガシッと、あたしの両肩をつかむので、また、なんかドキドキしてくるんですよね。なんなんでしょうね。


「ちょうど、あたしとご主人さまが、お城にいるときに訴えてたんです」


「船乗りなら、積荷にかかる税金をかるくしてもらうために、役人に袖の下をつかませることもあるな。それで、つながりができたのかもしれない」


 あたしは、がぜん、やる気になりました!


「よーし、その船乗りさん。見つけて、捕まえるです!」

「その前に、まず変装だな。でないと安心して人前に出られない」


 それも、そうですね。

 でも、変装って、どうするでしょう?

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