二章 マーダーナイトー1

 1


 それから数日。

 何事もなく、すぎた。


 タクミは安心していた。

 それが嵐の前の静けさだと、予知能力者ではないタクミには、知りようがない。


 いつものように、ダイアナの学校帰り。

 専用車内での定例の報告会。


「今日でもう、五日になりますね。アンソニーにピアスをつけてもらってから」と、ダイアナは言う。

「今のところ、変化はないみたいですけど。どう思いますか? トウドウさん」


 タクミは聞いていなかった。


 さっき通りすぎたモデルガンの店から、知った顔が出てきたような……。


 その人物と、モデルガンの組みあわせが、どうも妙な気がした。しかし、芸術の素材として必要なだけなのかもしれない、とも思う。


「トウドウさん? どうかなさったの?」


 もう一度、声をかけられて、タクミは我に返った。


「——あ、すいません。なんですか?」

「制御ピアスについてです。なんの変化もないけど、やっぱり、アンソニーは超能力者ではないんですか?」


「ああ。そのことなら、あと数日のあいだに、必ず結果がわかりますよ。制御ピアスの性質として。アンソニーさんが、もしもエスパーだったら、かならず、ある反応が起こるんです」


「何が起こるんですか?」

「放電現象です」


「放電現象……制御ピアスって、そんなに危険なものなの?」


 ダイアナは、ちょっと、不安になったようだ。

 自分の耳につけたピンクパールのピアスを、無意識にさわる。


「アンソニーに、おそろいだからって渡したから、わたしもつけていたんですが……」


「心配しないでください。買うときに、週に一、二度、はずしてくださいって、店員に言われましたよね?」

「はい。わたしは昼間だけつけて、寝る前に外しています」


「なら、問題ないです。アンソニーには、なんて言いました?」

「何も言っていません」


「なら、ますます、好都合です。アンソニーさんには、このまま、終日つけっぱなしにしといてもらいましょう。

 そうすれば、十日以内には、放電現象が起こりますから。彼が最低ランクのEランク者だったとしてもね」


「放電現象って?」


「超能力っていうのは、前にも話したとおり、電気で起こす力なんですよ。

 ピアスは、その電気が外に発さないように抑えてる。だから、ずっと外さないでいると、体内に電気が、たまっていくんですよね。

 なので、その状態が長く続くと、金属製のものをさわったときなどに、静電気になって、いっきに放出されるんです。電気機器がクラッシュしてしまったり。

 最初のうちは、かるい放電現象が続くだけですから、この段階でピアスを外せば、人体に影響はありません」


「そうなんですか」


「それに、エスパーはランクが高いほど、体内で作る生体電気量も多いんです。

 アンソニーさんがBランク以上のエスパーなら、五日めの今日までに、すでに放電現象が起きています。

 最低ランクのEランク者なら、放電現象を起こすまでに、約二週間。それまでを観察期間としておけば、充分です。あと十日ですね」


 ダイアナはガッカリしたようだ。

「あと十日も待たなければならないの……」


 ダイアナにしてみれば、一日も早く、結果がわかってほしいのだろう。


「すいません。それ以上のことは、僕らの力では、なんとも……」


「いいえ。トウドウさんは、せいいっぱいのことをしてくださってます。わたし、トウドウさんに頼んで、ほんとによかったと思ってるのよ」


 美少女にこんなことを言われたら、もう天にも昇る心地だ。


「いやぁ。僕なんて、まだまだですよ」


 照れてるうちに、森の入り口についた。

 タクミはユーベルとともに、ダイアナの車をおりた。

 車内では、ユーベルは、まったく、しゃべらないが、もちろん、いつも、ひっついている。


 タクミは車を見送りながら、思わず、つぶやいた。


「それにしても、あんなとこで見かけるとこで思わなかったなあ。ダイアナの絵だけじゃないんだ?」


「なんのこと?」と、たずねるユーベルは、いつもどおり不機嫌。ダイアナと話したあとは、決まってだ。


「いや、べつに……」


「ふうん? なんか、おれたちの滞在日、だんだん予定より長くなってない? これって、気のせい?」

「気のせいです。はい」


 ユーベルに、イーッと白い歯を見せられてしまった。

 虫歯ひとつないキレイな歯ならびを、自慢したかったわけじゃあるまい。


 タクミは肩をすくめながらも、ガンショップで見たオリビエのようすを思いだす。


 なんとなく人目をはばかるようにしていたのが気になる。また、よからぬことを考えてないだろうか?


 いちおう、ダイアナには、部屋のカギをつけかえるよう忠告してある。


 寝る前に飲んでいたのは水素水だった。習慣らしいが、それも、やめるように言っておいた。


 とはいえ、カギは、まだ、つけかえられていない。

 かえたほうがいい理由は話してないから、ダイアナは重要に思ってないのだろう。


「だから、タクミは甘いんだって」というユーベルのほうが、正しいのかもしれないが。


「まあまあ。あと十日のしんぼうだからさ。そしたら、ムーンサファリ。一日フリーパス。絶叫マシーン、乗りほうだい!」


「はいはい」


 ユーベルを寝室に追いやって、眠りについたのが、十一時ごろ。


 その夜、タクミは変な夢を見た。


 そこは、どこかの病院のようだった。

 タクミの視界は、水槽すいそうのなかから外を見るように、ぼやけて、ゆがんでいる。


 水槽のまわりを、白衣の人たちが、うろついている。


「最終チェックだ。心電図、血圧、脳波」

「異常なし」


「覚醒パターンは?」

「シュミレーションどおりです」


「電圧」

「規定値」


「よし。培養液をぬけ」

「培養液、排出します」


「パーフェクトガールのお目ざめだ」

「肺呼吸を始めました。心拍数、上昇。脳波、覚醒パターンへ移行」


「ケースをひらけ」


 水音の向こうで、複数の声がかさなる。


 激しい水音は、しだいに遠のいていく。

 それとともに、今まで知らなかった感覚が、奔流ほんりゅうのように押しよせてくる。


 音。光。匂い。

 水をぬかれたケースが、手足にふれる感覚。

 これまで、意識もしなかった感覚たち。


 ケースの周囲に、白衣の人たちが集まってくる。

 知ってる。この人たちは、今まで自分を生かしてくれていた人たちだ。


 人工子宮の培養液ばいようえきのなかで、なかば眠っていたけど、知っていた。


 そのなかの一人が、ひらかれたケースのなかへ、手をさしのべてくる。

「待ってたよ。私の花嫁」


 逆光になって、その人の顔は黒いシルエットになっている。

 彼女は、ゆっくりと、その人の手をとった……。


 そのとき、悲鳴がひびきわたった。

 タクミは、とびおきる。

 変な夢のせいで、自分の現状が把握はあくできない。


「あれ……? 夢か。じゃあ、あの悲鳴もかな?」


 いや、悲鳴は夢じゃなかったようだ。

 上のほうの階から、かすかに人の声が聞こえている。

 この豪邸で下の階まで聞こえるのは、大声をはりあげているってことだ。


 まくらもとの時計を見れば、二時すぎだ。

 こんな時間に、おかしい。


(なんかあったんだ!)


 タクミは、ドラ○もんがらのパジャマのまま、ろうかへとびだした。ユーベルももう一方のドアから顔をだしてきた。


「タクミ。変な夢みたよ。イヤな予感がする」

「あの夢、君のせいか!」


 ユーベルは睡眠中だけ、エンパシー能力が高まるタイプだ。知らず知らずのうちに、その力で他人の夢に寄生してしまうクセがある。


 おまけに、寄生した夢を、第三者にエンパシーで見せてしまう。以前の大事件のときも、そうだった。


「やっぱり、睡眠時のコントロールは、まだ不安定なんだな。これじゃ、監察期間を延長しなくちゃ」


「……ごめん」

 あんまり反省してるふうでもない。


 とにかく、エレベーターをめざして走る。


「ユーベル。さっき、悲鳴が聞こえたよね?」

「あんたが聞いたのは、たぶん、おれの悲鳴」


「え?」

「だって、首しめられたんだもん」

「は?」


 問いただしているヒマはない。

 エレベーターに、かけこんだ。

 エレベーターは一瞬で三階に到着する。


 三階につくと、はっきり怒鳴り声や、そうぞうしい音が聞こえた。さわぎのほうへ走っていく。


 ろうかのまんなかに、何人も集まっていた。三階の住人たち。

 ダイアナの部屋の前だ。


「ダイアナ! ダイアナ!」

 ダイアナを呼びながら、ドアをたたいているのは、アンソニーだ。


「アンソニーさん。どうしたんですか?」

 タクミがたずねると、青い顔をして、アンソニーが答えた。


「部屋のなかから、悲鳴が聞こえたんだ」


 ろうかには煌々こうこうと明かりがついている。

 みんなの青ざめた顔を見ながら、タクミは気づいた。


(ひのふの……あれ? 一人、たりないぞ)


 オリビエだ。画家の姿が見あたらない。


(まさか、あいつ……)


 昼間の妙な行動が思いだされる。

 モデルガンを何に使うつもりなのか……。


「カギがかかってるんですね?」

「ああ。いくら呼んでも返事がない。なかで何が起こってるんだ?」


「合鍵はないんですか?」

「執事が持ってるよ。屋敷のなかのカギは全部」


 今から執事を起こして、カギを持ってこさせるんじゃ、まにあわない。といって、ユーベルの能力は秘密だ。


 いかにも頑丈そうなオーク材の一枚板のドアを、タクミは手早く調べた。ドアの材質そのものは堅固だが、ちょうつがいやドアノブの接合部分は、さほどじゃない。


「ちょっと、離れててください。みなさん、さがって」


 いぶかしげな三階の住人を、急いで散らせる。

 タクミは気合一発、強烈なけりをドアノブにくらわせた。人間なら、ろっ骨の二、三本は折れてるけりだ。


 ドアノブは悲鳴のような音をたて、ノブごと、ドアの反対側に押しだされる。カギも折れた。


「わッ。あんた、スゴイじゃない!」

 デザイナー女史が歓声をあげる。


「柔道三段で、空手、合気道——ああ、もう、どうでもいいや!」


 言いかえしながら、ドアをあけはなつ。

 室内は予想していたより、はるかに深刻な事態になっていた。


 ドアの真正面に、人がたおれている。

 どう見ても、死んでいる。


 オリビエだ。

 あおむけの大の字で、天井を見あげている。が、その頭の下から、血がベッタリ流れている。

 みひらいた目にも、生気がない。


 タクミはエンパシストだから、もっと決定的なことを瞬時に感じた。

 オリビエの脳波が、すでに停止し、生命活動をしていないことを。


「ダイアナ!」

 とつぜん、アンソニーの叫び声。


 タクミの意識は、そっちに向かう。

 見ると、クィーンサイズのベッドに、ダイアナがよこたわっている。


 四本の支柱に支えられた天蓋てんがいつきのベッド。レースのとばりは支柱に結ばれている。だから、なかのようすも見える。


 だが、そこにいたのは、ダイアナだけではなかった。

 よこたわったダイアナの上に、誰かが、かがみこんでいる。ダイアナの首に両手をかけていた。


「誰だ——!」


 アンソニーの声とともに、室内の照明がついた。

 ベッドの上の人が、はっきりと見わけられるようになった。


 タクミは、がくぜんとした。


 見間違いではない。

 そこにいたのは、この世に二人とはいないような美青年、オルフェだ。


「お……オルフェ?」


 オルフェはタクミを見ると、美しいおもてをほころばせた。


 その笑顔だけ見れば、夜会にやってきた貴公子のようにチャーミングだ。

 だが、彼は、たったいま、ダイアナを手にかけようとしている。


 驚がくのあまり、アンソニーは腰をぬかした。

 口をパクパクさせて、オルフェを指さす。


 オルフェの目つきが危険をはらんだ。

 タクミはみんなをかばうように正面に立つ。いつでも応戦できるように、身がまえる。


 すると、オルフェは、おもしろがるような表情になった。ベッドをおりてくる。室内に緊張が走る。


 が、オルフェは攻撃のために、ベッドをおりたのではなかった。まっすぐ、フランスまどに向かい、テラスから身をおどらせた。


「また会うよ! タクミ」


 青く輝く地球をバックに、オルフェの姿は鳥のように飛翔する。その姿は、人ではないもののように神々しい。


 オルフェの姿は闇のなかへ消えた。


 追うべきか迷った。が、さすがに、オルフェのまねして、三階から、とびおりるわけにもいかない。

 庭には柱や彫像が多いので、着地点も見えないまま、やみくもに飛びおりるのは危険だ。


 あきらめて、タクミは首をふった。

 背後で、アンソニーの声がする。


「ダイアナ! 無事かッ?」


 みんなが、いっせいにベッドにかけよる。

 ダイアナは息をしていた。気を失ってるだけだ。

 とりあえず、見たところ、ケガはない。


「ダイアナ! ダイアナ?」

 アンソニーが呼び続けると、目をさました。


 アンソニーが、ほっと息をつく。

「ダイアナ。気分は? ぐあいが悪くはないか?」


 ダイアナは目をあけたものの、半覚醒はんかくせいのようだ。ぼんやり、アンソニーをながめている。


「ダイアナ? 大丈夫か?」


 再三、呼びかけられたダイアナは、急に悲鳴をあげた。

 オリビエの死体に気づいてしまったようだ。


「怖い……怖いわ。おねがいよ。殺さないで!」

 だいぶ、錯乱さくらんしている。


「かわいほうに。ダイアナ。もう怖くないからね。悪いヤツは行ってしまったよ」


 アンソニーの声も聞こえているのかどうか。

 その手をふりはらうと、かべぎわまで、あとずさる。


 タクミは二人のあいだに、わって入った。


「ショックなことが続いたせいでしょう。医者を呼んで鎮静剤ちんせいざいをもらったほうがいい。それと、警察も呼ばないと」


 アンソニーが、にらんでくる。

「警察? 冗談じゃない」

「だって、人が死んでるんですよ? どう見ても変死だし」


 アンソニーは鼻先で笑う。


「見ればわかるさ。だが、オリビエはこの部屋で死んでた。ダイアナの部屋のなかで。さっきの男が犯人だろうが、警察はダイアナも疑うかもしれない。


 そんなこと、私がゆるすわけないだろ? オリビエの遺族には、私が話をつける」


 月の経済界をぎゅうじってきた貫禄かんろくで、押しきられる。政界や警察関係者に、いくらでも顔がきくんだろう。


 そう言われれば、タクミには、どうすることもできない。


 待ちわびたのか、男装の美女(と言っても寝巻きはセクシーな黒のネグリジェ)コンスタンチェが口をはさんだ。


「ねえ、坊や。あの美青年と知りあいみたいね。やっぱり、彼がオリビエを殺したの?」と言いながら、指さきで、タクミのあごの下をなでてくる。


「し、し……知りません。道ばたで出会って、ちょっと話しただけですから。どういう人なのか、僕も、よく知らないんです」


「ほんとに? アンソニーがポリスは呼ばないと言ってるんだから、白状しちゃいなさいよ」


「ほんとに、ほんとですよ。それ以上、せまらないでください。僕、こまります」

「女の子みたいな顔して、カワイイじゃない?」


 おもしろがって、ミサイルみたいな胸を、タクミの体に押しつけてくる。ユーベルが怒って、ひきはなした。


「おれのタクミに、手、ださないで!」


 うわぁ。また、そんなこと言っちゃうぅー。


 タクミは悶絶しそうになる。

 それを無視して、マーティンが大声をだした。


「おい! オリビエのやつ、こんなもの持ってやがる」


 マーティンは一人で死体の検分を始めていた。


 くつしたのぬげかかったオリビエの死体。

 そのガウンをめくりあげ、パジャマのズボンにさした銃を示す。


 そばまで行って、タクミも銃をながめた。


 それは、サイコセラピストには、おなじみの催眠銃だ。

 制御ピアス同様、ESPの研究によって開発された道具だ。


 制御ピアスは超能力をあやつる生体電気を遮断しゃだんすることで、超能力を使えなくする。


 催眠銃はその逆だ。

 エンパシストがエンパシーを使うときの電波を人工的に発する。


 つまり、超能力を使えない人でも、エンパシストのように、強力な催眠暗示をかけることができるのだ。

 通常は、セラピストが治療の補助で使うのだが。


(あのモデルガンの店、裏で、こんなものまで売ってるのか。違法だぞ)


 これを使って、ダイアナを催眠状態にするつもりだったのだ。抵抗を封じておいて、そのあいだに——という魂胆だったんだろう。


 オリビエの企みは、催眠銃を見ただけで、誰もが察するところだった。


 アンソニーもマーティンも、コンスタンチェでさえ、その瞬間に、同じ目つきで、ダイアナをうかがった。

 美少女の処女性に疑問をいだいたのだ。


 みんなの視線の意味に気づいて、ふたたび、ダイアナは興奮こうふん状態になる。


「ちがうわ。わたし、何もなかった。わたしが目がさめたときには、もうオリビエは死んでたのよ。ほんとよ。ビックリして悲鳴をあげたけど。そしたら、急に気が遠くなって……」


 しどろもどろになってしまうのは、なぜだろう。


 すかさず、コンスタンチェがベッドに腰かけ、ダイアナの肩を抱きよせた。

「いいのよ。落ちついて。誰も、あなたを責めてないのよ。男って、野蛮ね」


 なぐさめるというより、その手つきが、なんとなく、いかがわしい。


 ダイアナは気づいてないのか、コンスタンチェの豊満な胸に顔をうずめて、泣きじゃくる。


 マーティンが赤毛を、バリバリ、かきまわした。


「それじゃ、こういうことか? どうやってだか知らないが、オリビエのやつが、この部屋に忍びこんできた。そのとき、ダイアナは眠っていた。オリビエは、こっそり近づいていった。

 でも、そこで、窓から、さっきの美青年が侵入してきて、オリビエを殺した。

 物音で、ダイアナが目をさました。悲鳴をあげたんで、美青年はダイアナも殺そうとした。そういうことだな?」


 たしかに、すじみちは通っている。

 だが、タクミは、オルフェが人殺しだとは、まだ信じられない。


「でも、おかしいじゃないですか。オルフェは、なんで屋敷に侵入したんですか?


 窃盗せっとう目的なら、金目のものを置いた無人の部屋が、ほかに、いくらでもありますよ。わざわざ、人が寝てる部屋に入ってくる意味がない」


 オルフェはエスパーだから、どの部屋に人がいるかは、脳波をさぐれば、わかったはずだ。


 マーティンは、するどい目つきで、タクミをにらんできた。

 どうも、この人は苦手だ。


「ダイアナを誘拐するつもりだったんじゃないのか? ダイアナのためなら、アンソニーは何億でも払うさ」

「まあ、それも考えられますけど……」


 マーティンの説なら、殺してからダイアナの死体を持っていくつもりだったということになる。さわがれると、やっかいだ。それも可能性として、なくはない。


 しかし……。


(あのオルフェが、殺人ねぇ……)


 どうしても、違和感がある。

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