daydream syndrome
みかん
プロローグ
幼い頃の記憶は、大人になるとたいがい消えてしまうらしい。
僕も例外ではなく、高校を卒業する頃には子供の頃のことなんて、雨に濡れた水彩画のように流れ落ちてしまっていた。
でも、そんななかである情景だけは今でもたまに目に浮かぶ。
乳白色のリノリウムの床と、まどから差し込む夕日。そして風に靡く黒い髪―
虚ろな目をした少女が、こちらを向く。
『きみはだれ』
僕は記憶の中で口を開く。
『わたしは―』
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