リアル・ステータス

フリータイム

プロローグ


 始まりの街と呼ばれるその場所、あれから一週間で随分と騒がしさが消えていったものだ。

 次々とここから出て行ってしまう者たちから取り残され、絶望の中でふと呟く。


「これから一体、どうすりゃいいんだよ」


 誰も興味を向けることのない商店街の路地裏で、男が空を仰ぎながら頭を抱えていた。



 突然の発言、申し訳ない。

 なにせ、こちらも緊急事態なもので、他への配慮というもよに欠けている状態なのだ。


 ひとまず、現状と自己の紹介をするべきだろう。


 俺の名前は、戦イクサ・真治。

 何かと強そうな名前をしているが、第一印象は低めに設定しておいてほしい。幻滅は嫌だから。

 家名さえ覚えてくれてればそれでいい。


 そんな俺こと、イクサが今居るこの世界は、プレイヤー千人からこう命名された。[リアル・ステータス]と。ここは、過去の経歴と実績が全てを決めるゲーム世界である。


 ゲーム世界と言っても、果たしてここが仮想世界なのかは分からない。プレイヤー千人は自らでこの世界に来た訳ではないから。気が付いたら来ていた。いや、喚ばれていたのだ。

 千人の人々は突如としてこの世界に閉じ込められ、プレイヤーとしてゲームクリアの後、帰還することを使命とした。


 魔物がひしめくこの世界で、プレイヤーにはスキルと呼ばれる武器が与えられる。


 それにより、誰しもの空想の内にあった魔法もほとんどのスキルで実現が可能となった。しかし、この世界の理を知った多くの者は、絶望したという。


 プレイヤーは、現実世界であった最も大きい、または、印象を左右するような経歴を一つ、ユニークスキルという武器にして、他の小さな実績や経歴をステータスの一つとするのがこの世界の理。


 経歴が大きく、特色があればある程、プレイヤーは万能の力を持つ。


 ユニークスキルの数に原則として限りはないが、大きな経歴はゲーム内で死んでしまった際に、蘇生のエネルギーとして消費されてしまうらしい。つまり、大きな経歴が無くなれば最後、蘇生不能となるということ。


 それでも、プレイヤーは魔物と戦い、危険を冒しながらも強くなることを願う。


 何故、人々はそこまでして死に急ぐようにゲームクリを望むのか。


 それは、この世界が残酷だからに他ならない。

 この世界は、誰か一人がクリアすれば、全員が帰還できるというものではなく、一番最初にクリアしたパーティに贈られる早期クリア報酬以外に、元の世界へと脱出する術がないからだ。


 現実で自堕落な人生を送っていた者たちに、もはや勝機はない。

 大きな実績も残せず、社会にのさばっていたのが悪かったのだと思い知らしめるように。



 そんな過酷とも言える世界でイクサが唯一手に入れたユニークスキル、その基となった経歴はまさかの......。



 [高校生]、その一点のみであった。

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