第190話 目的変更
時間はシャリエル達と出会ってから数分後、森で会話をしているところに巻き戻る。
「あいつ達をどうやってアダマストに帰す?」
『調査の名目で来てましたし団長も居なくなったのですから私達が何も言わずとも撤退するのでは無いですか?』
刀の中から語り掛けるリカ、刀の姿になって二ヶ月程、そろそろ慣れてきた頃だった。
「いや……俺はそうは思わないけどな」
「いいえリカ、あの娘は驚く程頑固です、恐らく何か成果を上げて帰らねばと焦っている筈、此処は成果を適当に作り上げて帰すのが1番かと」
シャリエルへの呆れを感じさせながらアルラは言う、なんだかんだ仲は悪かったが彼女の事を一番理解している様子だった。
「とは言え、成果って言われてもな」
成果と言えば宝?もしくは他国との貿易関係?どれにしろ今すぐとは行かない物ばかりだった。
『貿易はともかく、宝ならアルテナさんが知ってるんじゃ無いですか?』
その言葉にアルテナの存在を思い出す、そう言えばこの大陸に来てからずっと一緒に行動している、彼女なら何処か良い洞窟か何かを知って居そうだった。
「そうと決まれば黒騎士退治は一先ず置いておいて、アルテナに聞くか」
「はい、彼女なら恐らくオーフェンと共に小屋へ戻っていると思います」
目的を変更しアルテナに情報を得る為小屋へと戻る、あまりシャリエル達と顔を合わせると記憶が戻る危険があるがこの場合は仕方なかった。
何故かガヤガヤとした小屋の扉を開けるとアルテナがサレシュのモーニングスターを持ち上げようと頑張っている姿が視界に入った。
「すごっ、こんなの持って戦ってるのー?」
「はい、力だけはあるので」
アルテナの言葉に微笑みながらサレシュは答える、だがその答えに興味を示さず直ぐに別の方向へと視線を向けた。
「あ、これハルバードって武器だよねー、初めて見たなー」
「え、うん」
人に慣れてないのに加えて突然話しかけられた事によりキョどるアイリス、だがそれ以降話しが続く事もなくアルテナはシャリエルに視線を向けた。
「君は良いや」
「良いやってなによ!ここまで来たなら私にも興味示しなさいよ!!」
「別に興味惹かれる物ないし」
その言葉にシャリエルは笑みを浮かべながら魔紙を取り出した。
「この大陸では見ない物の筈よ」
取り出された魔紙を見てアルテナは首を傾げた。
「何その紙」
その言葉にシャリエルは無言で魔紙を破り捨てる、すると拳に炎が纏われた。
その瞬間アルテナの表情がほんの一瞬だけ険しくなる、だがそれに気が付いたのはアルラ1人、他のもの達は気がつく事も無かった。
「この紙に魔法を記憶させて破る、それだけでどんな魔法も発動できる優れものよ」
「へー、すごく便利だねー」
「なによそれ、もうちょっと興味示しなさいよ」
アルテナの反応に少しシャリエルも呆れて居た。
小さな小屋に8人、気がつけばかなりの人数になって居た。
「アルテナ少し良いですか?」
「なになにー?」
アルラの呼び出しに猫をかぶりながら応じる、側に隼人さんが居る時は本性を見せる訳には行かない様子だった。
「少し来てください」
そう言い隼人と共にアルテナを森の方まで誘導する、そして単刀直入に尋ねた。
「アルテナはこの大陸の人間、何か宝がある遺跡とか知らないですか?」
「いきなりだね、うーん……遺跡かぁ」
深く考える様に悩むアルテナ、心当たりがありすぎて悩んでいるのか、はたまたこの大陸に住んでいるとは言え、そう言った心当たりは全く無い故に考えているのか……前者である事を願うばかりだった。
しばらく考え込むと突然手を叩き顔を上げた。
「そう言えばとんでもない財宝がある場所を思い出した!」
「財宝?何処なんだ?」
「北に150km行った場所にある遺跡、相当昔の遺跡らしくてとんでもない財宝が眠ってるって聞いた事があるんだー」
遺跡……難易度は高そうだが丁度良かった。
「そうと決まればあいつらに説明して来るか」
そう言い隼人はその場を後にする、残されたアルテナは背中が見えなくなるのを確認すると大きくため息を吐いた。
「はぁ、猫かぶるのも辛いわ」
「それならさっさと貴女の目的を吐いてはどうですか?」
かなりの時間彼女も同行しているが一向に目的を明かさない……正直不気味だった。
「まだそれは言えないな、だがあんた達を少し信頼したからこそ言える事もある」
初めての言葉に少しアルラは興味を示した。
「何?」
「私が貴族の生まれって事……それが関係してる」
「貴族……今はそれだけ?」
その言葉にアルテナは頷いた。
その表情は暗い、かなりの訳ありという訳でなのだろう。
彼女からの初めての情報……何を私達に求めているのかは分からないが少しややこしそうだった。
「私はまだ信用しきって居ないですが他の皆さんは貴女の事を仲間と思ってます……ですがその優しい部分に付け込んで裏切るのだけはやめて下さいね」
「分かってる」
アルラの忠告にアルテナはその言葉だけを残す、訳ありの貴族……隼人さんの身に危険が無ければそれだけでよかった。
ただ、あの人はアルテナが助けを求めれば助ける筈……面倒臭い問題を彼女が抱えて居なければ良いが。
「はぁ……面倒臭い人が仲間になった物ですね」
アルラはため息を吐くと小屋へと戻っていった。
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