第5話 襲撃
ゆっくりと近づいていく。
木の影から覗くと、うっすらと光るものが20メートルぐらい先の地面に開いた穴から出てくるところだった。
『あれは、熊か? 光ってるな。』
その熊らしき生き物は、うっすらと光を纏う感じで発光していた。
辺りが暗いなか、その姿は良く目立つ。
『大きいな。三メートル近くあるんじゃないか。どうする、俺。このままゆっくり下がれば逃げられそうだが。それとも、光を撃ってみるか……。つっ。気づかれた!?』
熊は急に振り返り、こちらを睨むと一声、吠え声をあげる。
「殺す!!」
俺はその声に驚き、咄嗟に光を撃つことを念じてしまう。
急速に光が膨れ上がり、熊にめがけて殺到する。
目の前一面を真っ白に染め、目が眩む。
響き渡る轟音。木が倒れる音が、何本も何本も森のなかに響きわたる。
目の眩みがようやく収まり、虚脱感に耐えながら熊のいたところへとゆっくり近づいていく。
『うわ、足の先しか残ってない。こりゃ食べられるとこは残ってないか。その後ろの地面が抉れているな。この抉れ方を見ると、光は円錐状に広がって、その後は真っ直ぐ直進しているのか。どこまで続いているんだ。見通せないぞ。』
地面の抉れを観察していると、近くの熊の出てきた穴から別の光が漏れてきた。
穴から小熊とおぼしきものが飛び出して来ると、最初の熊の残っていた足先の所へ駆け寄る。
「ママ、ママ、ママ?」
「ママ、ママ……」
小熊はさっきまで生きていた親熊の肉片の前で蹲っている。
『あれはさっきの熊の子供か。大きさは今の俺の体の三分の一くらい。……ちょうどこちらに背を向けている。』
俺は虚脱感に耐えながら、そろりと忍び寄る。そして一気に小熊の首筋に牙を突き立てる。
「ぎゃあ! いたいいたいいたい。ママ、ママ、タスケテタスケテ! いたいいたい、ニクいニクいいたいいたい」
暴れる小熊を押さえ込む。
「いやだいやだ、い、や、」
すぐに小熊は息絶える。
俺はゆっくりと小熊の骸を咥えながら引き摺り、熊たちの巣穴へと潜り込んで行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます