青春は多分カッコ悪い

もも氏

第0話 フラれるのはカッコ悪い

これは高校1年生の夏休みが終わり、9月になったとは言え、残暑が厳しい時の事だ。



「好きです!俺と付き合ってください!」


佐野秀一さのしゅういちは高校1年生の時クラスの女子に告白をした。


「えっ!?ええええええええ、えっ!?」


告白した相手の若杉詩織わかすぎしおりはとても驚いていたようだった。


「いきなりでごめんだけど、そういうことだから」


驚く詩織になんて声を掛ければいいのか分からずそんな言葉を掛けた。


「私も佐野くんのこと好き!だけど……少し考えさせてください」


好きなのに考える時間が欲しいとはなんだろうとは思いつつも好きな相手から「好き」と言われて気分は最高潮だった。



 それから1ヶ月の間何気ないメールや学校での会話は続いており、特に何事もなく過ぎて行った。でも、相手からも好きと言われていたのでそこまで不安もなかったが、しばらく待てば詩織と付き合える日がすぐそこに来ていると思っていた。そして10月に入ったばかりの夜にスマホが鳴ったのに気付きスマホを手に取り確認すると詩織からのメールだった。



――色々考えたけど、私は佐野くんとはお付き合いできません!本当にごめんなさい…



という文章だった。その他にも5,6行何かが書かれていた気もするが良く覚えていない。最初の一文だけでもはや十分だったし、これ以上何も考えたくなかった。


しかし、考えないようにすればするほど考えてしまう。「何がダメだったのか」「なんで好きって言ってくれたのに今振られてしまったのか」などと気付けば自己嫌悪や彼女に対する不信感が溢れてくる。


 そして翌日、詩織とはいつも通り接しようと心に決め、複雑な心境を抱えつつ登校すると教室に入った瞬間クラスの女子達が騒がしい。

「彼氏できたの!?いいなー」

「どんな人?プリ見せて~」

などと聞こえてくる。その声のほうを向くと嬉しそうにスマホを取り出し、嬉しそうに友達に彼氏の画像を見せる詩織がいた――。



この時、自分の中で何かが崩れていく気がした。


そして、なんとも言えない心にぽっかりと穴のような喪失感だけが残った。


これが俺が青春を失った1つ目の理由だ。




多分この時、俺の青春は終わったのだ――。


そうして俺の物語は始まる。

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